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マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
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エピソード3:王国の影と深緑の誓い(前編)

西方五国の中心にして、法と騎士の国。物語はいよいよ、緑豊かな「王国」へと足を踏み入れます。

エピソード3:王国の影と深緑の誓い(前編)

1. 分水嶺の風

砂漠の半島と西方五国を隔てる巨大な山脈。その険しい尾根を越え、分水嶺に立った二人は足を止めた。

前方に広がるのは、見渡す限りの深緑。湿り気を帯びた風が、草木と土の匂いを運んでくる。振り返れば、遠く霞む黄金の砂漠。そのさらに奥、海を隔てた先には、うっすらと故郷・火山島の影が見えるような気がした。

「……遠くへ来たものだ」

「ええ。でも、あそこにいた時よりも、世界はずっと広く感じるわ」

二人の会話には、いつしか敬語が消えていた。幾多の死線を共に越えた絆が、形式張った言葉を不要にしていた。砂漠半島の巫女の所属する「結社」(星詠み、占星術師やその支援者達の連盟、連絡協議会。会員に上下関係は無く、必要において祠などで会合が持たれる)からもたらされた情報は、「奪われた刀は王国の首都へ持ち込まれた可能性が高い」というものであり、二人の目的地は王国の首都となった。

2. 城塞都市の喧騒

王国の首都は、火山島のどの集落よりも、砂漠のどの都よりも巨大だった。

高くそびえる城壁。石畳の街路。古代魔導文明時代の遺産を再利用した上水道の噴水。行き交う人々の多さとその活気に、二人は圧倒された。

「さすがはマグナカルタ(大憲章)の国ね。これだけ人がいても、秩序が保たれている」

が碧玉の瞳を輝かせる。

一方、は腰の湾刀に手を置いていた。都市部での武器携行は許可制だ。彼はすでに港で「帯刀許可証」を得ていたが、周囲の視線は依然として鋭い。

3. 鉄拳の洗礼

昼食を取るべく立ち寄った酒場で、早くもトラブルが舞い込んだ。

「おい、見かけねえ恰好だな。その隣の女……いい肌の色をしてるじゃねえか」

絡んできたのは、筋骨隆々の王国人の職人だった。酒の勢いか、砂漠半島の巫女に無遠慮な手を伸ばそうとする。

火山島の戦士は静かに立ち上がり、腰の二本を椅子に置いた。

「刀は使わん。――下がくれ、巫女殿」

相手が殴りかかってくるタイミングに合わせて、火山島の戦士は身体を踏み込み、同時に放たれた鋭い肘打ちが、職人の鳩尾を的確に捉える。悶絶し、崩れ落ちる巨漢。

体術:頂肘ちょうちゅう

火山島の戦士は追撃せず、流れるような動作で元の席に戻った。

「……食事が冷める。続きをしよう」

何事もなかったかのように食事を再開する二人組に、周囲の客は言葉を失った。

4. 二つの組織

その後、二人はそれぞれの拠点を目指した。

砂漠半島の巫女は、各地の占星術師たちが連絡を取り合う[結社]が本日会合を行う祠へ。一方、火山島の戦士は[遍歴の騎士協会](主君を持たない自由騎士たちや武者修行中の騎士見習いの互助会)の館を訪れた。

そこで火山島の戦士は、異邦の戦士ながらもその実力と風格を認められ、正式に「自由騎士」としての身分を保証されることとなった。

「刀の噂は、まだ霧の中か……」

宿に戻り、数日間を情報収集に費やす二人。しかし、平穏は長くは続かなかった。

5. 決闘と勧誘

「数日前の職人の件、覚えているか? その男の縁者が、あんたに決闘を挑みたいそうだ」

宿の前に現れたのは、派手な装束に身を包んだ王国貴族を名乗る男たちだった。腰には優美な直刀レイピアを帯びている。

決闘[フェーデ]。大憲章、マグナカルタの時代においても、私闘による問題解決は条件付き(騎士と認められた者、つまり帯刀許可証を所持している者同士の間で)で認められていた。

「返り討ちの仇討ちか。不毛だが……受けて立とう」

広場に集まった見物人の前で、男は直刀を突き出し、優雅な構えを取った。だが、火山島の戦士の目にはその構えの「脆さ」が透けて見えていた。

男が踏み込むより一瞬早く。

居合:真向切り

抜刀と同時に振り下ろされた一閃。切っ先は男の額に当たり、止まった。

男は血塗れの額を手で押さえ、悶絶している。

「…… 次は容赦せん。二度と私たちの前に現れるな」

手加減するつもりで、寸止めしたかったのだが、まだまだ技量が足りなかった。生きているのを確認出来て、内心安堵していた。その後、慌てた様子で男の仲間の貴族たちが、顔を真っ青にして、男を担いで逃げ去る。火山島の戦士が静かに刀を納めると、背後から拍手が聞こえた。

「お見事。さすがは遍歴の騎士協会が認めた腕前だ」

そこに立っていたのは、長身瘦躯の美男子だった。職人組合ギルドの徽章をつけたその男は、親しげな笑みを浮かべて二人に近づいてくる。

「俺は職人組合の伝令員[ギルドのスカウト]。あんたたちのような腕の立つ人間を探していたんだ。……ある『厄介な案件』を解決するために、力を貸してくれないか?」

職人組合の伝令員と名乗る男の提案。それが、王国を蝕む巨大な闇――魔薬密売組織との戦いの始まりだった。

エピソード3:前編 了。中編に続く。


以下

設定資料


都市

ハイエンシェント、ミレニアムの遺跡を再利用してつくられている。基本的に城塞都市となっており、街路は石畳で作られている。都市のインフラは古代遺跡を再利用している。代表的な例として、古代遺跡の上水道と下水道、温泉施設をそのまま使っている。また都市の間に街道が整備されており、マグナカルタで通行税の徴税は禁止されている。

街。都市よりも規模が小さく、村よりも大きい。

村。小規模な集落

都市の施設

城。君主が住む宮殿があり、水を張った堀で囲われ、内側を城壁で囲んでいる。軍事要塞で行政府。

城館街。城を囲む様に有力貴族が住む屋敷がある。全体が内壁に囲われていて、門によって外との移動をしている。

城下町。屋敷街を囲む型で内壁の外側に職人街、商店街、宿場街、学聖街[カルチェラタン](大学院や大聖堂を中心とした街)があり、外壁で囲われている。

公共施設(いずれも古代遺跡の再利用)。街路、上水道、下水道が張り巡らされており、公衆浴場、円形闘技場(多目的に使用される。例として劇場としても使われる事もある)がある。

その他、学院と聖堂と祠(大学院と大聖堂以外の中小規模の学院と聖堂と祠は街の中に点在している)、商工会議所、冒険者の酒場、遍歴の騎士(主君を持たない自由騎士、武者修行の為の旅している騎士見習い)の館がある。

外壁のそとに貧民窟([スラム]街)があり、非合法品を取り扱う闇市が存在する。

都市の組織

騎士団、兵士団、傭兵団(国家の軍隊。私設はマグナカルタで禁止されている)。

教団。一神教、二神教、三神教の宗教団体。西方五国では、各国と一神教の教団と協約が結ばれ、都市に一神教の大聖堂、街や村には聖堂が必ずある。一神教の教団から国家に派遣されている司祭は侍祭と呼ばれている。

賢者の学院[アカデミア]。学者の団体。学校、学会。学術の研究を行っており(その一環として錬金術の研究も行はれている)、一神教の教団と同様に各国と協約が結ばれている。施設は大学院と学院。組織長は学長。寄付金を支払えば代筆や代読をしてもらえる。(識字率は低いが需要は多い文化レベルとなっている)国家に派遣されている錬金術師は宮廷錬金術師と呼ばれている。

職人組合[ギルド]。元は職人の互助会。商人に対抗するために組織された。施設は商工会議所。組織長は会頭[ギルドマスター]

商会。大商人が作った大規模商店。

結社。星詠み(占星術師やその支援者達)の連盟(連絡協議会)。会員に上下関係は無く、必要において祠などで会合が持たれる。

遍歴の騎士協会。遍歴の騎士(武者修行の騎士見習い、主君を持たない自由騎士)の為の互助会。組織として、軍事行動はしない。

アイテム

聖遺物、神器

聖遺物(神器[レリック])はほぼ消失し、残っているのはごく一部。本島周辺には存在が確認されたものなく、大陸で存在が確認されているのが、神刀、聖剣、聖杯、神鏡。所有者によって保管場所は秘匿されている。

魔導器、秘宝

魔導器は秘宝[アーテファクト]として、古代魔法文明帝国の遺跡から発掘される。希少で貴重で高価だが購入が可能なものもある。購入な可能の物は、魔法の品物[マジックアイテム]と呼ばれ、賢者の石、魔剣、妖刀、魔法の絨毯[フライングカーペット]や魔法の箒[マジックブルーム]などがある。

一般的な薬とは別に[魔薬]と呼ばれる毒物や中毒性の高い薬物が存在する。マグナカルタで製造、販売、所持、使用が禁止されている。

乗り物

陸は馬や馬車。海はガレー船や帆船。空は魔法の絨毯や魔法の箒(共に希少)。


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