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マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
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エピソード45:死者の杯、狂信の終焉


第45話:死者の杯、狂信の終焉

縦穴の階段を登りきった一行の前に、ついに最深部の祭壇が姿を現しました。

そこは、かつて歴史の闇に葬られた古代神殿の心臓部。紫色の怪しい炎が周囲を照らす中、祭壇の中央には、生贄として囚われた娘と、その前に立つ黒いローブの男が立っていました。

男の手には、歪な紋章が刻まれた『死者の杯』が握られています。

しかし、その男の瞳には一切の生気がなく、完全に虚ろでした。かつて「冒険者の酒場」でその杯を拾ってしまった哀れな男の意識は、すでに内側から完全に食い破られ、古代の死霊術師の妄執に肉体を明け渡していたのです。

1. 宿られた死霊の囁き

男の口が開き、そこから漏れ出たのは、何重にも音が重なった地を変ずるような他者の声でした。

「……器がどれほど変わろうとも、我が悲願は変わらぬ。失われた我が『邪神教団』の栄光を、今一度この王国の地に打ち立てるのだ。この純潔なる生贄の血をもって、大いなる儀式は完遂される」

冒険者の男を操る古代の死霊術師にとって、この肉体はただの道具に過ぎません。その目的はただ一つ、かつて途絶えた教団を現代に復活させ、再び暗黒の信仰の頂点に君臨すること。数千年の時を超えてなお蠢く、純粋な妄執そのものでした。

操り人形となった男が、冷酷な手つきで杯を高く掲げます。

「我が教団の行く手を阻む旅人よ、貴様らの命もまた、礎となるがいい……。やれ、我が最高傑作よ」

2. 最高傑作の咆哮

男の呪詛に応じるように、祭壇の影から凄まじい風圧と共に巨躯が躍り出ました。

それこそが、首謀者が死霊術の粋を集めて作り上げた護衛であり、最強のアンデッド——リザードマンの屍人人形でした。

竜の骨の化石、賢者の石に、高度な死霊術が施されたものです。その強固な躯体には、血のような赤色で呪詛の術式が隙間なく刻み込まれており、手にした巨大な大刀が鈍い光を放っています。凄まじい身体能力を誇る化け物は、地を震わせる咆哮を上げ、一行へ向けて突進してきました。

「……死者を弄び、己の欲を満たすか。これ以上は、一歩も通さん!」

火山島の戦士サムライが、集中力を極限まで高めて地を蹴りました。

3. 総力戦、狂信の牙城を崩せ

リザードマンが振り下ろした大刀を職人組合の伝令員が、巧みな身体操作の身軽さで、大刀の刃を紙一重でかわし、リザードマンの大刀が、爆音と共に石畳を粉砕します。

「巫女さん、足元を止めて!」

大学院の女性学者の鋭い声に応じ、砂漠半島の巫女カヒナが横笛を吹き鳴らします。占星術[風飛散物]シュート・ミサイル。床の瓦礫が風の力で浮き上がり、激しい勢いでリザードマンに襲い掛かり、その強靭な突進を強引に止めました。

「動きが止まったぜ!」

一神教の司祭が聖印を掲げた降霊術[浄霊]エクソシズムが、魔力を遮断する特殊な術式が狂い、リザードマンの動きに決定的な隙が生じました。

「これで終わりよ。……[身体強化]フィジカル・エンハンスト !」女性学者が杖を突き出すと、火山島の戦士の身体能力が強化された。

「符術[魔力付与]」火山島の戦士は湾刀カタナに魔力をまとわせた。

錬金術と符術での肉体と武器の強化を終えるとリザードマンが再び動き出した。火山島の戦士とリザードマンが向かい合うとリザードマンは火山島の戦士に大刀が振り下ろし、その衝撃波を伴った、斬撃を火山島の戦士は抜刀で辛うじて受け流しまし、

「……断霊。秘伝の居合、流風石火!」

火山島の戦士の放った神速の一閃が、青白い魔力を帯びてリザードマンの胸元を深く切り裂きました。肉体を繋ぎ止めていた死霊の糸が、音を立てて断絶します。

最高傑作と呼ばれた屍人人形は、緑色の光の粒子となって完全に崩壊し、物言わぬ骨の山へと還っていきました。

4. 妄執の瓦解

「我が、最高傑作が……。あり得ぬ、ただの人間どもが、我が術式を凌駕するとは……」

護衛を失った首謀者は、驚愕に顔を歪ませました。しかし、乗っ取られた肉体はすでに限界を迎えており、男は『死者の杯』を構えることすらできず、その場でがくりと膝をつきました。

「お前が宿る肉体は、冒険者の男のものだ。返してもらうぞ。そして、お前が築こうとした教団も、ここで終わりだ」

火山島の戦士が突きつけた刀の切っ先が、男の喉元でピタリと止まりました。

伝令員が素早い動きで男の手から『死者の杯』を叩き落とします。床に転がった歪な器へ、大学院の女性学者が容赦なく杖を叩きつけました。

——パリン、と軽い音を立てて、杯は木っ端微塵に砕け散りました。

「……ああ、我が教団の、光が……」

杯が壊れた瞬間、男の身体から禍々しい死霊の霧が悲鳴のような音を立てて抜け出し、そのまま虚空へと霧散していきました。

後に残されたのは、意識を失って倒れ込んだ、衰弱した男の身体だけでした。数千年の時を超えて教団を復活させようとした古代の死霊術師の妄執は、ここに完全に潰えたのです。

砂漠半島の巫女と一神教の司祭が、檻から震える娘を救い出し、優しく抱きとめました。

「もう大丈夫ですよ。お家に帰りましょう」

神殿の奥から響いていた不気味な残響は消え去り、地下にはただ、静かな静寂だけが戻っていました。

日常の死角に潜んでいた、身勝手な狂信の物語。

一行はその足で、救出した娘を連れ、再び明るい王都の光が待つ地上へと歩み始めるのでした。


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