表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
PR
50/50

エピソード46:夜明けの足跡、それぞれの旅路

第46話:夜明けの足跡、それぞれの旅路

王都の地下深く、数千年の妄執が砕け散った神殿の跡地。

すっかりただの瓦礫に戻った石柱の数々を残し、一行は救出した娘たちと、崩れ落ちた男の身体を伴って、暗い縦穴の階段を登り始めました。

一歩一歩、自分たちの足で暗闇を踏みしめて進むごとに、まとわりついていた湿った冷気が薄れ、地上の乾いた、しかし確かな生命の匂いが近づいてきます。

1. 朝霧の王都

地下貯水池の隠し扉を抜け、旧市街の古びた井戸から地上へと這い出た時、王都の空は深い藍色から、鮮やかな朝焼けの琥珀色へと移り変わろうとしていました。

「……終わったのね。本当に」

大学院の女性学者が、薄暗い広場を照らし始めた朝日の光を眩しそうに見上げました。

中枢にすら気づかれず、日常のすぐ裏側で蠢いていた「邪神教団の復活」という脅威。それが今、誰に知られることもなく、静かに、完全に霧散したのです。

一神教の司祭と砂漠半島の巫女に支えられ、怯えから解放された娘たちが、涙を流しながらそれぞれの家へと帰っていく後ろ姿を、一行は静かに見送りました。これで、彼女たちの日常もまた、元通りに紡がれていくはずです。

「冒険者のあの男も、騎士団の医療所に匿名で引き渡した。死霊術の影響でしばらくは目覚めないだろうが、命に別条はないそうだぜ」

職人組合の伝令員が、ふう、と大きく息を吐き出しながら言いました。

「……何よりです。哀れな操り人形のまま死なせるには、あまりに寝覚めが悪いですから」

火山島の戦士が、一度も刃を汚すことのなかった刀を腰に落ち着け、満足げに頷きました。

2. 足跡の先に

中央広場へと戻ってきた一行は、まだ人通りの少ない大通りの真ん中で、自然と足を止めました。

誰からともなく、互いの顔を見合わせます。長い、本当に長い旅でした。世界の様々な地を巡り、それぞれの出自を超えて、数々の因縁と向き合ってきた旅。

「さて……。王国に潜む影も払った。私は一度、大学院に戻って今回の調査の報告書をまとめるわ。もちろん、あの地下神殿のことは秘匿したままでね。知性の責任として、あの場所は二度と誰も立ち入れないよう、物理的に封鎖する手配を進める」

大学院の女性学者が、いつもの理知的な笑みを浮かべて言いました。

「俺はギルドの連絡所に顔を出して、今回の件で溜まった裏仕事の片付けだな。また面白い噂が入ったら、真っ先に連絡するよ」

職人組合の伝令員がニカッと笑い、軽く手を振ります。

「私は、結社の清めの儀式を手伝いに行きます。濁ってしまった精霊たちの声を、もう一度清らかな水で満たしてあげなければ」

砂漠半島の巫女が横笛を愛おしそうに撫でました。

「大聖堂に報告に行きます」

一神教の司祭は大聖堂に静かに歩き出します。

最後に残された火山島の戦士は、朝日に輝く白亜の城壁を見つめ、それから自分の足元へと視線を落としました。

「自分は、遍歴騎士の会に報告して来ます。冒険者としての旅はまだ、終わったわけではないですから……。自分たちの『足跡』は、これからも続いていきますよね」

3. 新たな一歩

誰が英雄として称えるわけでもない。歴史の教科書に名が残るわけでもない。

しかし、彼らがその足で歩み、地道に繋いできた絆と真実は、確かにこの王国の平穏を守り抜きました。

「また、冒険者の酒場で会いましょう」

火山島の戦士の言葉を合図に、一行はそれぞれの一歩を踏み出しました。

朝の光が王都を隅々まで照らし出し、活気ある一日の始まりを告げる鐘の音が響き渡ります。その賑やかな喧騒の中に、世界を救った旅人たちの足音は、静かに、しかし力強く溶け込んでいくのでした。

(王国完結編・了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ