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マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
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エピソード44最深部への歪な階段、闇の神殿

第44話:最深部への歪な階段、闇の神殿

救出した娘たちを安全な地上へと送り届けた一行は、司祭の残した地図を頼りに、地下貯水池の最も深い壁の向こう側へと進路を取りました。

そこには、王国の公式な歴史からは完全に抹消された、何千年も前の古い石積みの通路が眠っていました。

下へ、さらに下へ。

一歩進むごとに、まとわりつくような湿気は冷気を帯び、壁の苔すらも光を吸い込むような漆黒へと変わっていきます。徒歩で進む一行の足音が、静まり返った暗闇に不気味に響いていました。

1. 歴史の死角に眠る遺構

「……ここから先は、王国の基礎が築かれるよりも遥か昔の建造物だわ」

大学院の女性学者が、壁面の古い楔形文字を錬金灯で照らしながら、声を潜めました。

「書庫から消されていた手記の記述と一致する。かつてこの地で、若い女性の命を贄として異形の神を呼び降ろそうとした、邪教徒たちの『地下神殿』の入り口よ」

通路の突き当たりには、巨大な二枚開きの石扉が佇んでいました。その表面には、公国で屍人人形(アンデッド)の残骸から見つかったものと同じ、あの禍々しい邪神教団の聖印が大きく彫り込まれています。

「中枢の連中が気づかないわけだ。こんな街の真下に、こんな奈落が広がっていようとはな……」

職人組合の伝令員が、罠がないか、優れた身体操作の指先で慎重に探りを入れていきます。

「……罠はない。だが、扉の向こうから、肌を刺すような悪意が漏れ出ている」

火山島の戦士サムライが、静かに刀の鯉口を切り、闇の奥を睨み据えました。

2. 歪な守護者

伝令員が重い石扉を押し開けると、目の前に広がっていたのは、すり鉢状になった広大な円形劇場のような空間でした。中央には、紫色の怪しい炎が揺らめく祭壇が見えます。

しかし、一行が足を踏み入れた瞬間、暗闇の奥から重々しい金属音が響き、不気味な影が躍り出ました。

それは人間ではなく、首謀者の死霊術によって呼び覚まされたスケルトン・ゴーレムの屍人人形アンデッドでした。

かつてどこかの戦場で命を落とした屈強な兵士の死体に、古代の呪術が施され、その錆びついた重装甲はゴーレムの甲冑を着せられていた。その甲冑の隙間からは、緑色に発光する死霊術の術式が不気味に漏れ出しており、手にした巨大な両刃刀からは、触れるものすべてを腐らせるような死気が立ち上っていました。生前の痛みを感じない強靭な肉体が、侵入者を屠るためだけに軋みを上げて駆動します。

「精霊たちが、恐怖で凍りついています……! あの悍ましい身体、死霊の魔力で物理的な限界を超えて強化されているわ!」

砂漠半島の巫女カヒナが横笛を構え、警告の声を上げました。

3. 闇の障壁を穿つ

「来ます! 司祭様、防御の陣を!」

大学院の女性学者の指示と同時に、狂戦士の屍人人形が地響きを立てて突進してきました。手中にした大刀が、空気を引き裂く轟音と共に振り下ろされます。

一神教の司祭が聖印を掲げ、一行の前に純白の障壁[祝福]ブレスを展開しました。激しい金属音と共に大刀が弾かれますが、アンデッドの怪力は凄まじく、光の障壁にピキリと亀裂が走ります。

「……死してなお、これほどの膂力か。だが、死霊の楔さえ断てば崩れる! 居合、水平胴切り……一閃!」

火山島の戦士が障壁の隙間から弾丸のように踏み込みました。研ぎ澄まされた集中力から繰り出される神速の横一文字が、狂戦士の堅牢な装甲を切り裂き、その奥にある魔力の結節点を正確に断ち切ります。

「動きが鈍ったぜ! 操り人形の補修はお断りだ!」

職人組合の伝令員が壁を蹴り、巨体の頭上を舞いました。優れた身体操作で正確無比な動きで、狂戦士の首の裏、死霊術のルーンが集まる中枢へ魔力を阻害する為に刺刀ダガーを差し込んでいきます。

完全に姿勢を崩した屍人人形へ、砂漠半島の巫女の占星術[跳石]ストーン・ブラストが襲いかかり、激しい石礫が巨体を壁へと釘付けにしました。

「これで終わりよ。……[雷撃]ライトニング!」

女性学者が杖の先から放った雷撃が、屍人人形の胸の核を一直線に貫きました。緑色の術式が激しく明滅したのち、大音響と共に爆散し、頑強だった屍人人形は物言わぬ骨と鉄屑の残骸へと還っていきました。

4. 最深部からの足音

静まり返った円形神殿。崩れ去った屍人人形の残骸の向こう側、祭壇のさらに奥へと続く巨大な縦穴から、地響きのような、地を這うような重苦しい詠唱が響いていました。

それと同時に、縦穴の奥から「ガルル……」と、地を這うような獣の唸り声が響いてきます。暗闇の奥で不気味に発光する、一対の眼。首謀者が自らの護衛として最後に手塩にかけた、最強の屍人人形アンデッドの竜の骨の化石、賢者の石によって造られた——リザードマンの屍人人形が、そこに潜んでいました。

そしてそのさらに奥には、『死者の杯』を手にした首謀者が、最深部の祭壇で最後の儀式——「邪神の完全復活」へ向けて、最後の生贄に手をかけようとしている気配がありました。

「……ついに、この旅の終着点ね。奥に、とんでもない化け物が控えているわ」

女性学者は、額の汗を拭いながら、暗い縦穴の奥を見つめました。

「一人の男の妄執が、ここで待っている。……行こう、すべてを終わらせるために」

火山島の戦士の言葉に、一行は力強く頷き、ついに首謀者と、その最高傑作が待つ最深部の祭壇へと歩みを進めるのでした。


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