エピソード33:使徒の影、密やかなる盟約
エピソード33:使徒の影、密やかなる盟約
1. 隠者の隠れ家
聖都の喧騒から離れた、古い洗礼堂の地下。そこには、教皇より全権を委任されながらも、公には姿を現さない使徒監察官が潜伏していた。
彼は政治的な派閥に属さず、ただひたすらに「法の清廉」のみを監視する、皇国の影の番人である。
「……の名は、私の『黒板』にも以前から記されていた。だが、奴は手続きの天才だ。証拠を残さない」
枯れ木のように痩せた老監察官は、差し出された黒い帳簿を眼鏡越しにじっと見つめる。ページをめくるたび、彼の鋭い眼光に冷徹な怒りが宿った。
2. 鑑定の嘘を暴く
大学院の女性学者が、自身の魔力感知の結果を使徒監察官に提示する。
「事務総長代行は、鑑定の際に『魔力の残滓』を意図的に上書きしています。聖遺物のふりをして運び込まれたのは、王国で猛威を振るっている魔薬の原液です……」
一神教の司祭が深く頷く。
「これだけの物証があれば、典礼院の独断として事務総長代行を拘束できるはずです。どうか、神の名の下に正しい裁きを」
3. 監察官の決断
「よかろう。だが、事務総長代行には聖堂騎士団の中に数名の協力者がいる。力尽くで踏み込めば、奴は証拠を隠滅し、逃走するだろう」
使徒監察官は、一行に教皇の刻印が入った「特別捜査令状」を手渡した。
「今夜、事務総長代行は王国へ向かう『最後の大型荷物』の封印を行うはずだ。そこには、これまでの取引を締め括る決定的な証拠が積み込まれる。諸君らには、その現場を押さえてもらいたい。私の監察官補佐としての権限を一時的に与える」
4. 作戦の共有
職人組合の伝令員が、不敵な笑みを浮かべる。
「正面から騎士団を動かさないってんなら、俺たちの出番だな。リーダー、巫女さん、準備はいいか?」
火山島の戦士は、静かに湾刀の鯉口を切る。
「承知した。これ以上の毒が海を渡るのを、ここで止める」
砂漠半島の巫女も、占星術の触媒を手に取る。
「精霊たちも、歪められた法が正されることを望んでいます」
一行の目的は明確になった。
深夜、典礼院の地下倉庫で行われる「最終出荷」。
そこが、[仲介者]の終着地となる。
【エピソード33:完】




