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マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
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エピソード34:審判の夜、崩れゆく聖域の仮面


エピソード34:審判の夜、崩れゆく聖域の仮面

1. 地下倉庫の断罪

聖都の地下深く、典礼院の巨大な第13備蓄倉庫。そこは、表向きは「修復を待つ聖遺物」の保管場所だが、今夜は王国へと向かう魔薬の最終出荷拠点となっていた。

暗がりの中、無数の木箱が並び、そこから漏れ出る魔力の残滓が淀んだ空気を形成している。

「……計算通りですね。事務総長代行、これだけの物証があれば、あなたの『法』もこれ以上は守ってくれない」

大学院の女性学者ウィッチ錬金術[魔導感知]センスオーラを閉じ、冷ややかに告げる。

「抜かせ。これらはすべて教会の、ひいては神の栄光を取り戻すための活動資金だ。世俗の小娘に何がわかる!」

積み荷の陰から、事務総長代行が姿を現した。その目は信仰の光ではなく、追い詰められた獣の光を宿している。

2. 銀の腐敗:汚職騎士との対決

「司祭殿、道をお譲り願おう。我ら聖堂騎士団が選別した正義を、貴様らのような流れ者に汚させるわけにはいかない」

事務総長代行の傍らに、白銀の甲冑を纏った三人の騎士が立ち塞がる。汚職に手を染め、事務総長代行の私兵と化した騎士団の精鋭だ。

「……騎士の誓いよりも、金貨の重さを選んだのですね」

火山島の戦士サムライが静かに前へ出る。

「抜く価値もないと判断したが、その歪んだ正義、我が湾刀カタナで正させてもらおう」

砂漠半島の巫女カヒナ占星術[薄暮]ダスクを使った。汚職に手を染めた聖堂騎士たちの視界は阻害された。視界に不調を意に返さず、騎士たちが一斉に突撃する。一神教の狂信を纏った一撃は重く鋭いが、火山島の戦士は最小限の動きでそれを捌いた。

一神教の司祭の降霊術[衝撃波]エーテル・フィスト。連続した轟音が辺りに響いた。連続に発せられた衝撃波は騎士たちの手首と膝を正確に打つ。骨の砕ける鈍い音と共に、汚職騎士たちは一矢報いることもできず、冷たい床に転がされた。

3. 禁忌の守護者:特別仕様のオーク

「ええい、役立たず共が! ……ならば、これを使うしかない!」

事務総長代行が懐から不浄な黒い聖印を取り出し、高く掲げる。

直後、天井の装飾として鎮座していた巨大な木像が、咆哮と共に動き出した。

屍人人形アンデットの[オーク」・特別仕様:殉教者の長杖」

それは高位の死霊術によって強化された戦闘技能持つ、事務総長代行の最後の手駒だ。その手には、「聖遺物」かつての高名な聖堂騎士の心霊が埋め込まれた長杖が握られており、[エーテル]と[アストラル]が混ざり合った歪なオーラを放っている。

「……空気が重い。精霊たちが悲鳴を上げています」

砂漠半島の巫女が手を強く握り、祈りを捧げる。

占星術[土留]アース・ホールド。オークの動きの阻害を試みる。

大学院の女性学者は叫ぶ。

「[蜘蛛の糸]スパイダー・ウェイブ。……その不浄な動き、縛らせてもらうわ!」

砂漠半島の巫女が呼び出した植物の蔦と大学院の女性学者の放った魔力の糸がオークの四肢を拘束するが、オークはそれを力任せに引きちぎろうとする。

「伝令さん! 首の継ぎ目、三番目の脊椎! そこが術式の核よ!」

大学院の女性学者が再度叫ぶ。

「了解だ、お嬢様!」

オークが拘束を抜け出すが、職人組合の伝令員ギルドのスカウトが壁を蹴り、空中を舞い、囮となる。オークは長杖を振り回すが、火山島の戦士は紙一重で回避しながら抜刀し、湾刀カタナを受け流しと同時に相手の打撃の反動を利用して剥き出しになった核へと斬撃を振るった。

「特殊戦闘技能:秘伝の居合・流風石火」断末魔のような叫び。ガーゴイルの動きが鈍った瞬間、一神教の司祭が長杖を天に突き上げた。

「神は沈黙しているのではない。……あなたの悪行に、ただ一言『否』と告げているのだ!」

降霊術[解呪]リムーブ・カース

純白の光が倉庫を埋め尽くし、オークの巨躯を内側から崩壊させていく。不浄な術式は灰となり、木像はただの灰へと戻った。

4. 夜明けの断罪

崩れ落ちたオークの横で、事務総長代行は腰を抜かし、ただ震えていた。

その背後に、教皇直属の使徒監察官と、本物の正義を掲げる聖堂騎士団の本隊が足音を響かせて現れる。

「事務総長代行。典礼院の私物化、魔薬組織との結託、および禁忌術式の行使……。判決は火刑か、一生を暗い獄中で過ごすかだ。連れて行け」

使徒監察官の冷徹な宣告。事務総長代行は引きずられるように連行され、長きにわたる[仲介者]の不正はここに終焉を迎えた。

5. 旅の続き

翌朝、聖都に朝の鐘が鳴り響く。

空気は昨日までとは異なり、どこか清々しさを取り戻していた。

「……これで、王国、帝国、侯国、そして皇国。毒の鎖を断ち切られましたね」

一神教の司祭が、大聖堂を見上げて呟く。

「ええ。でも、この一連の計画の[考案者]はまだ判明していないわ。まだ私たちの仕事は終わらわ……」

大学院の女性学者が憂いを帯びた表情で呟く。

「……まずは、温かい食事と、まともな宿ですね」

火山島の戦士が刀の調子を確かめ、微笑む。

職人組合の伝令員が軽く肩をすくめる。

砂漠半島の巫女は清らかな風を感じながら、静かに歩き出した。

毒の鎖を追う冒険者たちの旅は、また新たな地平へと続いていく。

【皇国編:完】



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