表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
21/38

エピソード17:鉄の断罪、灰の静寂(後編)

エピソード17:鉄の断罪、灰の静寂(後編)

~黒鷲の館、執念の終焉~

1. 深淵への潜入、異形の警備

帝都の北端、崩れかけた「黒鷲の館」の地下深ク。職人組合の伝令員ギルドのスカウトの読み通り、彼らはかつての没落貴族が廃棄物の廃棄に使っていた、忘れ去られた地下水路からの侵入に成功した。

排気口から這い出た一行を待っていたのは、フラスコの中で煮える不気味な液体の熱気と、それを凌駕する「死の臭い」だった。

「……何、この気配。ただの屍人人形アンデッドじゃない」

砂漠半島の巫女カヒナが、[妖精のグラムサイト]を細め、青ざめた顔で廃液の溜まった床を指差した。

彼女の指差す先、瓦礫の中からミシミシと不快な音を立てて這い上がってきたのは、防腐剤と薬品にまみれ、色褪せた包帯を全身に纏った――屍人人形アンデッドのマミーたちだった。虚ろな眼窩に毒々しい[心霊アストラル]の光を宿して、侵入者を排除せんとして立ちはだかる。

2. 鉄と死の防波堤

「主よ、迷える魂に哀れみを。[降霊術:閃光フラッシュ]!」

一神教の司祭プリーストが聖印を掲げ、清烈な光を放つ。光の波動を浴びたマミーたちの包帯が焼け、動きが鈍る。

その隙に、大学院の女性学者ウィッチが呪文を編み上げた。

「[錬金術:雷光ライトニング]! その包帯ごと、浄化してあげる!」

彼女が放った光の奔流がマミーたちの包帯が焼け焦げ、黒ずみへと変えていく。

だが、奥の作業場から、さらなる絶望が這い出してきた。

それは、館の瓦礫、そして魔薬の原料の植物を練り込んで造られた、巨大なゴーレムだった。その巨躯は、人間の背丈を軽く超え、一歩踏み出すごとに地下室が揺れる。

「あれが、奴の執念の形か。……リーダー、正面を頼む!」

職人組合の伝令員が叫び、自分はゴーレムの足元へ向かって短刀を投擲した。

砂漠半島の巫女は占星術[土留](アースホールド)を使った。地面から植物の蔦が出現し、ゴーレムの脚に絡みついた。

3. 鉄の刃、執念を断つ

火山島の戦士サムライは、静かに、しかし力強く腰の[湾刀カタナ]を抜き放った。

「――義、成らざれば死す」

彼は真正面からゴーレムへと突っ込み、その丸太のような轟腕を、神速の斜め切りで受け流す。陶器と鉄がぶつかり合う火花が、地下室を照らした。

火山島の戦士はそのまま、ゴーレムの懐へと潜り込む。

「[秘伝・居合:流風石火るふせっか]」

踏み込みとともに、相手の攻撃を受け流した反動を利用して、刀身を水平に保ったまま、ゴーレムの魔力が集中する胴体――「核」があると思われる場所に、渾身の斬撃を叩き込んだ。

刃はゴーレムの強固な外殻を貫通し、内部の魔力回路を正確に破壊した。

「……無常」

戦士が静かに呟くと、ゴーレムの巨躯はガラガラと崩れ落ち、ただの瓦礫と鉄屑に戻った。

4. 執念の終焉、法の裁き

マミーとゴーレムが排除された奥の作業台。そこには、逃げ場を失った没落貴族の末裔が、最後のフラスコを抱きしめて震えていた。

「バ、バカな……! 我が一族が、このような平民の如き輩に……!」

「あなたの誇りは、すでに死んでいます」

一神教の司祭が、男の前へと歩み出た。

「過去を取り戻すために、今を生きる人々を犠牲にする。その行いは、誇りではなく、ただの妄執です。主の御前で、その罪を償うべきだ」

戦士が静かに納刀し、男の手首に魔力を封じる[縄カセ]をかけた。男は抵抗する気力も失い、崩れ落ちた。

一行は、没落貴族の男と、地下室に残された魔薬の原液、そして没落貴族の生き残りが記していた「取引記録」をすべて確保した。

明け方。

一行からの通報を受けた帝国騎士団の一団が、旧貴族居住区へと到着した。男は、かつて自分が誇った帝国の「法」の手によって、冷徹に連行されていった。

「……終わりましたね、司祭様」

学者が、朝日を浴びる「黒鷲の館」を見上げて呟いた。

帝都の深い影に潜んでいた毒の根は、一族の執念とともに完全に断たれた。一行は、帝国の冷たい、しかし確かな秩序が、再び街を包み込んでいくのを静かに見守るのだった。

(帝国編:了)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ