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美容系アイドルは、甘い吐息で私を溺愛する♡ 推しの秘密は蜜の味〈dulcisシリーズ×アラタ編〉  作者: はなたろう
Episode2 推しの過去

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19/20

#7 控え室で…

ステージ中央でスポットライトに当たるアラタ。



ネイビーのシックなスーツ、薄く引いたアイラインが、いつも以上に色気を誘う。

一瞬で会場中の視線を釘付けにしていた。



「僕のコスメブランド、Limerence〈リメレンス〉には、心理学の用語で『理性を失うほどの激しい恋』や『狂おしいほどの執着』という意味があります」



アラタの低く心地よい声が、会場のスピーカーを通して響き渡る。



「この美容液は、まさにその名の通り、女性たちを『一度触れたら手放せなくなる肌』にしたい……そんな願いが込められています」



アラタの手の中で、深海を閉じ込めたみたいな静かな青が、スポットライトを受けて幻想的に煌めいていた。

彼のメンバーカラーでもある、海のようなターコイズブルーのボトルだ。



「アラタさんご本人が出演する、CMをどこよりも先に公開します。前方のスクリーンにご注目ください」



司会者の声に促されて、会場の誰もがスクリーンに目を向けた。



ふと、視界の隅に黒いロングドレスが目に入る。

さっきの、果恋さんだ。



果恋さんはまっすぐに、アラタを見つめていた。


スクリーンではなく、アラタ本人に向けられたその視線。



ついさっき、克哉に向けていた仕事上の熱意とは違う目をしていた。

切ないような、悲し気な……少なくとも、ビジネスとして見ている目ではなかった。



胸の奥がザワザワと音を立てて波立った。



「ではここで、Désir Clinic〈デジールクリニック〉の院長、美野克哉先生にもご登壇いただきましょう」



私のすぐ隣にスポットライトが落ちてくる。



「行って来る」



克哉は小さく私にほほ笑むと、拍手に招かれるようにステージへと上がって行った。



「女性の肌は、隠すものではなく見せるものです。美しい素肌を、世界中に見せつけたくなる……そんな願いも込めています」



慣れた様子でマイクに向かう克哉。


人気アイドルであるアラタの隣に並んでも、少しも見劣りしない克哉の完璧なビジュアル。

会場のシャッター音がより一層激しく鳴り響いた。



――なんだか、ふたりが遠いな。



会場の熱気と、眩しすぎるふたりの姿に軽く酔った私は、そっとその場を離れた。



警備員に関係者パスを見せて、克哉に用意された控室へ戻る。



お披露目会はあとどれくらい続くんだろうか。

克哉に言って、先に帰らせてもらおうかな。



そんなことを考えながら、誰もいないはずの控室のドアノブに手をかけた。


そのとき――。



「愛香」


「えっ……!?」



背後から伸びてきた腕に、そのまま部屋の中へと強引に引き込まれる。

カチャリと内鍵が下りる音が暗がりに響いた。



「アラタ……?」


「会場から出ていく愛香、ちゃんと見えてたよ」


「主役がなんで、こんなとこにいていいの?」


「今の主役は克哉だよ」



アラタはそう言って不敵に笑うと、淡いブルーのドレスごと、私の身体を壊しそうなほど強く抱きしめた。

首筋に埋められた彼の顔から、熱い吐息が溢れる。



「今日の愛香、すごい綺麗だ」


「ほ、ほんと?」


「誰にも見せたくないくらい――」



アラタは私の顎を持ち上げ、深い口づけを落としてきた。



絡み合う舌の熱。私とアラタのリップグロスが、互いの体温でじっとりと混ざり合っていく。



「このドレス、克哉が見立てた?」



低い声。どこか険のある言い方だった。



「どうしてわかるの?」


「変態医師の選びそうなドレスだよ。前から見たら清楚で可憐なのに、こんな大胆に素肌を晒して……いやらしいな。誘ってるの?俺のこと」


「ちょ、ちょっと……!」



アラタが後ろから包み込むように私を抱きしめ、露わになった背中に熱いキスを落とした。

その吸い付くような刺激に、私の身体が小さく震える。



「で、でも、色は私が決めたんだよ」


「俺のメンバーカラーだろ?」


「うん」



アラタが嬉しそうに目を細める。

彼を想って選んだターコイズブルー。



「今日の会場で、愛香が断トツで美人だよ」


「もう、克哉もアラタも同じこと言ってる」


「俺たち、悔しいけど趣味嗜好が似てるんだ」



さっきまで感じていた住む世界の違いなんて、アラタのこの泥臭い嫉妬のせいで一瞬で吹き飛んでしまう。

アラタはもう一度私を強く引き寄せ、耳元で切実に囁いた。



「他の男が寄ってこないか心配だよ」


「そんな心配いらないよ、モテないもん」



小学校から大学まで、ずっと私立で女子しかいない環境だった。

今の職場であるクリニックも、女性ばかりに囲まれている。



「男の視線からは、ずっと克哉が盾になってたからな」


「え?」


「気づいてない?」


「う、うん」



「このあとも克哉のそばから離れないように。番犬にはピッタリだからな」



悪戯っぽく笑うアラタ。



「ひとりでフラフラしてると、悪い男に食べられちゃうよ」


「……や、どこ触ってんのよ」



ロングドレスのスリットに、アラタの指が入り込む。



「じゃあさ、約束して」


「約束?」


「今夜……このドレスを脱がせるのは俺だってこと」



熱を帯びた瞳で見つめられ、私は言葉を失ったまま、ただ熱くなる身体で頷くことしかできなかった。




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