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アークゥエスミィ・ニュースターズ・フェスティバル 3


「じゃ、ちょっと外行きましょか」


 「キレちまったよ」みたいなセリフと共に、実演場を指差す。別にキレてはいませんが。

 「ただいま実演中」という札をスペースに立て、一応シェラを残して、ナオと共に実演コーナーへ。


 実演コーナーは、色々な設備がある。

 実演のための要望を先に出しておけば、可能な限り主催者側が対応してくれるのだ。

 俺らの場合、高い場所の柱か壁があればいいので、建物の梁や壁で十分。

 イベントホールの隣にもう一つ、同じようなホールがあって、そこと外の広場が実演用に解放されている。

 天井に接着できる方が実演しやすいし、今回は実演ホールで。


 ホールには他に四組ほどが、壁際で実演している。こちらで実演状況を眺めているギャラリーも何人かいるのは、スタッフかギルド関係者だろうか?

 俺らも空いてるところへ適当に陣取ると、ホール担当スタッフが来たので、スペースナンバーを告げて、ホールを壊すような魔法ではないことを説明して、使用許可をもらう。



「じゃ、ちょっとやってみましょか。

 《スパイダー・ストリングス》」


 〈スパイダー・ストリングス〉を起動させると、手首の周囲に「フックの発射装置」が魔力で構築される。


「このフックは魔力製なので、ひっかけるのもくっつけるのも思いのままです。では、ちょっとくっつけてみます」


 俺は5mぐらい上の梁に、フックを発射。

 フックは梁に命中すると、「ぺしゃっ」と粘液状に広がる。


「これでくっつきました。では上がってみます」


 ロープの伸縮は、指の動きで操作する。

 人差し指または中指で巻き上げ、薬指または小指で伸ばす。それぞれ握ると動作、握る角度で巻き上げ速度が変わる。

 人差し指を曲げると、魔力のロープが巻き上げられ、右手が上に引っ張られ、身体がゆっくり持ち上がる。


「おおー……」


 客や、見ていたギャラリーが思わず唸る。

 俺は梁まで上がり、ちょっと上でぶらんぶらんと揺れて強度を見せて、それからロープを伸ばして戻ってくる。


「次はあの壁にくっつけてみます」


 高さ的には、二階に相当する壁に、フックを発射。

 壁の下に行って、巻き上げながらとん、とんと壁を斜めに歩くように上がっていく。


「こんな風に、強度も十分あります」


 俺は、二階の高さの壁に斜めに立って手を振る。

 ちょっと踏ん張るのがツライ……ので、数秒で再び降りてくる。

 フックで単純に引っ張るだけでも腕にも負担かかるな……これはアレだ、腕から肩あたりまで支持範囲広げるとか、足裏もに同じような「粘着シールド機能」つけないとツラいかな……うん、改良改良。次バージョンでやるとしよう。


「具体的な使い方はそれぞれに任せますけど……例えば、慣れればこんな感じのことも可能です」


 と、俺はもう一つ〈スパイダー・ストリングス〉を起動、両手に装備。

 壁際に立って、まず右で真上に粘着。すいーっと二階ぐらいの高さへ上昇。

 続いて、左で斜め上の天井の梁へ接着。

 それから右を解除すると――


 ぶらーん、と振り子の動きで、フロアの反対側へ振られる。

 同時に右側を天井に発射、最高点で止まった瞬間に左を解除、右手側の支点での振り子に切り替え――反対側の壁を走って移動しつつ、左をさらに天井へ発射し――。

 ……といった具合に、両手の〈スパイダー・ストリングス〉を交互に使うことで、空中を振り回されるように移動してみせ、最後は天井の一点でぐるーんと回ってみせ、回転速度が落ちてきたところで解除、地上にすたっと降り立つ。

 この動きを会得するには多少の練習が必要だ。連続発射して、振り子運動を連続させるタイミングは、ナオが面白がってすぐに実演してくれたので、教えてもらった。

 シェラも「これならできそう……」とか言っていたが、BCを持っていないので実演はできなかった。自分のアイディアを自分で使えないのは悔しいそうなので、マシュさんが復活したらBCを修得させてもらえないか交渉するそうだ。


 ……で、降りてきた俺に、妙な視線が集中している……ような気がする。

 実演依頼した客も、他の実演見ていた客も、スタッフも、こっちに視線向けてるような……。


「今の何? 何! おもしろーい!」


 突然、後ろから両肩を掴まれて揺さぶられる……ちょ、ちょ、頭が、首が!


「何何何今の魔法! 君が作ったの? そうだよね? どういう魔法?」


 揺さぶるのを止めてくれたので振り返ると……エルフ?


「ねーねーねーどういうの? どういうのー?」


 あいややいやいやいやい、だから揺らしなさ、ん、な、あ……


「いい加減にせんか!」


 すぱーん、と揺らしエルフの頭をハリセンみたいなので引っぱたくもう一人。

 見れば二人とも「スタッフ」腕章をつけている。


「いったーい! なにすんのー!」


 ……関西芸人みたいなリアクションといい、ハリセンといい、この町はなんかお笑い精神で溢れとんの?

 俺もなんかノらにゃあかんのですかね?

 てかこの人ら、確実に「笑いを取る」スキル持ってるっしょ……もしかして:転生者?


「失礼しました、お邪魔しまして……」


 ……と、頭をさげたハリセンスタッフも、エルフ。

 ……あー、そういやマシュさんが「このイベントはエルフ側も協力してやってるからね」って言ってたな。


「ところでそちらさんは、団体名が『スタジオ・マシュミーヤ』となってますが……もしかして、マシュミーヤ導師のお弟子さんですか?」


 「スタジオ・マシュミーヤ」というサークル名は、マシュさんのところで居候しながら開発してるので、その名前にしたのだ。マシュさんは「できれば他の名前で……」と抵抗したが、構わずそれで申し込んだ。名前考えるのめんどいねん。

 そういや、マシュさんも魔導塾開いてるぐらいだから、有名人なのかな?

 だったら名前知ってるエルフがいてもおかしくはないだろう。

 このハリセンスタッフさんも、マシュさんの塾生だったとか?


「ええ、まあ……マシュミーヤ氏の弟子というか、魔法の共同研究をしてまして」

「魔法の共同研究!?」


 え、なんか驚いてる……マズった?


「塾を閉じたまま再開しないから、しばらく冒険者稼業から帰らないと思ってたんですが……ということは、戻ってきていると!?」


 近い近い近い。鼻息荒い。


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