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アークゥエスミィ・ニュースターズ・フェスティバル 1


 さて、というわけでやってきました魔法同人イベント!

 まさかまさかの超展開でございます!


「まさかまさかはこっちだよ……」


 マシュさんオツカレですね?

 そんなことでは今日のイベント乗り切れませんよ?


「ケン君はなんでそんなにテンション高いのかな……?」

「そらまーほら、徹夜ばっかでアホになっとるからちゃいますのん?」


 ナオさん、アホになりきれる人間は強いんですぜ!

 今日の俺は無敵っぽいー!


 ……あれから一ヶ月半。

 俺達はなんと、なんとかかんとか、「スパイダー・グローブ」を形にして出品することに成功していた。

 まあその代わり、この一ヶ月の睡眠時間がえらいことに……まあどれくらいかは言うまい。

 デスマやったことある人は解るよね? まともに寝たのは、勝手に寝オチしたときだけだったなぁー。


「……私はちょっと寝かせてもらうよ。さすがに疲れたし……」


 マシュさんは目の下にクマー!が酷いことになってるしへろへろなので、さすがに見送りだけで、「行けたら行く」と言ってベッドへ直行してた……うん、これは行かないな!

 はいオツカレチャーン! イベントのことはこちらに任せてくれ給へ!

 あーなんか徹夜明けって世界がぐるぐる俺を中心に回ってる気がするよなー!

 太陽が眩しくて吸血鬼の気分が解るよ! こっち太陽みえないけどな! 明るいだけでイラつくわはっはっは!


「アカン、アカンでこれ……徹夜続きで完全アホんなっとるわ。こんなん世の中に放ってええもんちゃうで」

「そんなケンのために、いいもの持ってきたよ」


 と、陶器の小ビンに入った、ナゾの飲み薬をシェラが差し出す。


「ボクらが長期任務の時に使うやつ。目が覚めるよ」

「お、サンキュー! 気が利くねぇー!」


 グビグビグビッと、ファイトいっぱーつ!

 うーん、ちょいとピリッとしてて目が覚めるわ!


「……なあシェラ、任務で使うて……それ、アカンやつちゃうのん?」

「んー、十倍ぐらいに薄めてるから大丈夫だと思うよ。元々のだと、頭スッキリして三日ぐらい寝なくても平気になるんだけど」

「めっさヤバいやつやん……」

「だから薄めて、せいぜい薬屋でも売ってる一番強いやつ程度にしてあるんだよ」

「……ホンマ大丈夫かいな。成分的に」

「今日の夕方まで持てばいいから」

「その後どないなんの……」

「二・三日寝たら戻るよ、多分」

「多分て……」

「長期連用しなきゃ大丈夫。ボク自身が試してるから、薄めたの一回ぐらいなら気にするほどじゃないよ」

「…………(絶対なんか反動くるやつやん……)」


 おーい、シェラちん、ナオはん、会場入りまっせー!


 開催会場は、マシュさんの研究所がある町の隣町、シルネッガー王国の町・シェイブリンで開催される。

 研究所からは馬車で三〇分ほど、町の郊外にあるイベント会場だ。歩いても二時間ぐらいだから、歩いて行けないこともないが、徹夜明けで歩いていくのはちとツラい。

 シェイブリン行きの乗り合い馬車に乗って、会場近くで降りる。同じように降りる奴らもいる。それとは別に、三々五々、集まってくる参加者たち――疲労の色で、出店組か一般参加かが一発で解る。

 会場入り口には、「同人魔法即売会ニュースターズ・フェスティバル13」という立て看板。

 もう13回目なのかこれ。知らないうちにこんな文化が……!


「よーしいっくよー! 今日も稼ぐぞー!」

「ヒャッハー! イベントだぁー!」

「俺、この売り上げで家賃払うんだ……絶対にね、ヒッヒッヒ」

「目指せ壁団! 我が団体の興亡はこの一日にあり!」

「うぉ――――ッ!! 目指せ売り上げ五十本――!!」

「おま、今日間に合わせるっつったじゃねーかどーすんだよー!」

「バッカおめー、人間は寝なきゃ死ぬんだよ知らなかったのか?」

「いそげーもう会場開いてるぞー早くしろー」

「まだ間に合うからそんな急がなくていいってー……てか寝かせてー」

「おい、寝るならスペース行って設営してからにしろ」

「あいつまだ来てねーのかー! 誰か呼んで来いー!」

「ちょ、肝心の設計書奴が持ってるだろ!」

「バッケヤロウ、寝言は寝てから言え! この価格で元が取れんのかよ!」

「そんな高値で売れるかドアホ! イベント価格とギルド価格一緒にすんなや!」


「……なんかちょっとした修羅場だね……キ○ガイと守銭奴の集団みたいだよ」

「こいつ見とったら解るわ。他の連中も同じようなもんやろ」


 シェラとナオがなんか失礼なこと言ってるような気がするが、そんなことより設営だ!


 イベント会場は、同人なら中小イベント(最大300前後ぐらい)がやれるぐらいの大きさ。サイズとしては、50m×20mぐらい? 結構大きい木造建築。天井はアーチ型、学校の体育館ぐらいのサイズを思い浮かべればいい。ステージもある。床は板張り、テーブル一つに椅子二つが付属。三つ目以降は有料貸し出し。そこらへんは日本のイベントと同じか。

 百サークル前後がテーブルを並べるが、その一つ一つがそこそこ広い。2・5メートル×80センチぐらいのテーブル一つを1サークルに割り当てる。大規模同人イベントの単純に倍ぐらい広い。


 参加申し込みは、このイベントホールで直接受け付けしていた。事務所に行って、「ニュースターズ・フェスティバルの申し込みしたい」って言えば、参加申し込みができる。その場で参加費500ゴネル払って、サークルチケットをもらう。最悪、当日に必要書類と参加費を払えば、飛び入り参加までできるらしい。

 サークルチケットは、ゴネルコインみたいな丸い割符の片割れ。それを三つもらえる。

 本当なら俺、マシュさん、シェラで参加予定だったが、ナオが半死人なマシュさんの代理だ。

 イベントパンフレットはない。会場案内図は入り口外と中に何箇所か設置してあるので、それでお目当てのサークルを探してくれ、ということ。行列に並ぶ連中はまず外でサークル配置図を見て、目当ての目星をつけてから並ぶ。

 まあ一回一日だけのイベントに使い捨てパンフ印刷できるほど、こっちの紙は安く潤沢でもないしなー。しょーがねーわ。


 で、俺らのスペースは、いくつかあるテーブル島の中ほど。

 うん、新興零細サークルの定位置!

 設営っつーても、準備会で受付して、三人で座るには広い場所に、会場備え付けの木製の折りたたみ椅子が三つ。

 一応テーブルクロス代わりの布敷いて、その上に説明書の冊子(紙質は悪いがガリ版よりマシな印刷ができる、これは魔法と一緒に配布するので量産)を積み、立てる木板POPを置く。

 魔法頒布は基本、自前の発動体を持ってきて、そこにコピーする。持ってくるの忘れたアホたんちんのために、受付横には安い記憶用発動体も売ってる。USBメモリみたいな感覚だな。無駄に孫コピーをさせないために、マシュさんがコピーワンスコード仕込んでくれている。デバイス移動はOKだが、増殖は許さないやつだ。レベル魔法なら必須だそうだ。

 ……漫画同人誌イベントなら、ここでインパクトあるエ○いカラー表紙とかA2ポスターとかを見せるように置くところだが、こちらはまだモノクロ印刷がなんとかできるようになった程度。紙質と印刷レベルは、新聞を思い浮かべてくれればいい。


 経験長い「魔法開発団体フォーム・グルー・ディヴァープス」(サークルとは一般的に言わんらしい)では、こういった場所で使えるディスプレイ向き魔法を別途考案して展示している強豪もいたりする……ある意味職業魔導士よりも特化型ですごくね? つかそのディスプレイ魔法欲しい。あとで買えたら買おう。何に使うかはともかく、コレクター心が疼くんで。

 初期から参加してる団体は、複数の魔法を売ってたりするから、これくらいのスペースでも展示品ががっつり詰まってる。「壁団体」なんかそういうイベント創生期からの古豪の定位置だ。

 売れてる団体は、一回で数百本、二十万・三十万ゴネル(約220~330万円相当)と売り上げるというから、こっちの世界でも壁サークル強し、である。


 ……初めてこちらで「魔法即売会」をやった奴らがどういうこだわりを持ってたか知らないが、販売する魔法の説明書を印刷するための印刷所をこちらに「そのためだけに」建てたらしい。印刷機は、地球から古くなった新聞用の輪転機を買い取ったそうだ。あれものっそいデカくね? こっち運んで動かせるようにするだけでいくらかかると思ってんだ。しかもメンテ方法まで覚えてきたとか……もうバカかと。アホかと。

 うん、壮絶なアホ(褒め言葉)だ。オタクはそうでなくちゃーいけねえやな!


 で、今ではその「新聞レベル」の印刷技術がこっちにも広がり、大都市圏ではペーパーバックレベルの本まで出版できるようになった。製本機まで導入したんか……ついでに紙(地球なら質は良くない再生紙レベル)の生産技術まで移転したそうな。まあそこまでやらなきゃ製本までいかないよなー。転生したけど本がない!なんて嘆くどころか、印刷機導入で大量印刷まですでに可能とは!

 まあ主に王宮関係やら魔導士ギルドの出版物を印刷するのに使われることが多いようだが……識字率の高い地域では、文学作品がいろいろと読まれるようになっているらしい。お貴族様とかも自費出版ブームで、魔法のみならず「詩歌文学は貴族の嗜み」になっているようだし。

 さすがに漫画はまだ厳しいか……と思っていたが、カラーの一枚絵では「相当毒されたアニメ絵みたいな肖像画」がどこぞの王宮では流行っているらしい。

 それが印刷で再現できるようになったら……おおこわいこわい。

 さすがにカラー一枚絵はクオリティ的にこっちだけでは無理っぽいが、いずれ成し遂げられることだろう!

 地球人の街があるなら、そこでなら耐水A0カラーポスターとか印刷できるっしょ?

 ま、あとはコスト問題だな! クッソ高そうだし!


 スペースの設営はすぐに終わり。

 だって持ってくるモノが少ないし。カバンにコピー元用の発動体と、説明書と敷布入れてきただけ。

 ……うむ、シェラちんの「疲れと眠気が取れるおクスリ」のおかげで頭がはっきりしてきたどー!

 とりあえず、お隣さんにも挨拶。

 説明書を交換する。魔法実物はともかく、説明書ぐらいは渡してもいいらしい。


 ちなみに、完成した魔法は〈スパイダー・ストリングス〉とした。シェラも「名前は好きにつけてくれていいよ」というので、ちょっと変更。

 シェラちんの希望とこっちの願望、一応全て突っ込んだ。途中で余計なこと思いついてオプションつけたからすごく手間取ったな! マシュさんがその分死んだけど、仲間に入った時点で気にしたら負けだ。

 完成度? できるとこまでやったさ! 下手な無制限バグが出ないようには(マシュさんが)したから、それで十分さ!

 お値段は……相場が100~1000ゴネル(約千円~1万円)と幅広い。

 こいつのお値段は?

 うーん……同人魔法即売会だから、500ゴネルで! ワンコイン魔法。 犬? 入ってないよ。

 そこらへんが相場っぽいしー。薄い本基準かな?

 まあ向かいやお隣さんも、大体そこいらが標準価格付けのようだし。これでよし! わからんときは業界標準準拠!

 途中見たところでは、強気に1000ゴネルつけてたとこもあったな。どんな魔法か気になるわー。

 とりあえず見て回りたい。それとも最初のスタートダッシュは大手に行くだろうから、無視して先に他回るかな?


 ちなみに隣のは、一般魔法の応用モノだった。両方そういうものだったので、挨拶ついでに説明書だけ交換した。とりあえず説明書はあとでゆっくり読もう。

 同人系魔法は、一般魔法や職能魔法系がやはり多い。レベル魔法はどうしてもパワーは出せても制御が難しいという難点がある。エラーチェックとかフェイルセーフ機能の実装が不十分だと、暴走・暴発の危険性がある。

 そのため、レベル魔法の設計説明書には、どういうフェイルセーフを実装しているかを明確に提示しなければならない。

 そこらへんの難易度で、アマチュア向け(一般・職能魔法)とプロ向け(レベル魔法)の差が出るのだと。

 〈スパイダー・ストリングス〉も、今回はレベル魔法として出品している。

 フェイルセーフのノウハウはマシュさんが知っていたので、今回は頼らせてもらった。一般・職能系はそこいらの制御がパッケージになってる制御ルーチンがあるそうで、それを組み込んでおけばいいらしいが、レベル魔法はそれぞれの魔法ごとに条件設定をやらなきゃならないのでかなりメンドクサイ。それをほぼマシュさんにブン投げたのだ。一応教えてもらったけどな。

 そのせいで非常にお疲れだったのだが……まあこれに関わったのが運の尽きデスYO!

 やってくれた仕事分は分け前もありますんで、それで勘弁!


関わった時点でお前はすでに敗北している(´・ω・`)

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