世界の街角探訪 ~都市国家群~
世界のあれやこれやがこうなっている、という設定話がメインですので、そういうのがめんどい方はスルーしても構いません(´・ω・`)
自由都市国家群とは、その名の通り、都市国家を構成している小国が乱立している地域。
実際は任意で合併とか、紛争後の戦勝併合とかで、二つ三つ都市抱えてるところもあるそうだけど、基本都市一つが多数。
現在、この地域の都市国家は七十四カ国ある。その全てに街道がつながり行き来できるようになっている。
自由都市国家は、それぞれの国が何かしらの特産品とか特徴的な制度を持ち、それを相互に融通しあっていながら、それぞれが互いの独立を支持し、認め合っている。何らかの理由で大きな国を嫌う人々、そこに住めなくなった人々が、より自分に合った都市国家を探してここにやってくるが、どこかに一つぐらい自分の理想に近い国があるのでは、と思わせる雰囲気が、ここにはあるのだという。
そのためこの都市国家群は別名、「旅人たちの国」とも言われる。自分の住処を求めて、多くの旅人がここを訪れるからだというが――喋るバイクがあったらそいつに乗って回りたい感じだ。銃も要る……要らんか。魔法があるし。〈絶対領域〉もあるし。
……とはいっても、今の俺達の目的地は、この都市国家群の向こう側。都市国家にはちょっと変わった国もあったりするが、別に自分の命を賭けさせる事態になるような頭のおかしい国はさすがにない、とマシュさんは言っていた……が、「ギャンブル国家」が一つあって、そこに行ったらかなりの確率で全財産を吐き出すことになる、らしい。もちろん、一発逆転で大金持ちになる者もたまにはいるようだが……貧乏人が一万に対して金持ち十、大金持ち一ぐらいの比率らしい。うん、そんなもんだよね、ギャンブルなんて。
まあ冒険者だって、自分の命チップにしたギャンブラーだけどさ。
もう一つコワいのは、そのギャンブル国家と提携している「金融国家」と、「牢獄国家」てのがあるとか。
「金融国家」は言うまでもなく、「金貸しの国」である。絶対ボッタくられると確信する。
「牢獄国家」は、周辺国から犯罪者を預かり、収監して懲役刑を代行している、「有期犯罪奴隷」と「看守」で成り立っている国だそうだ……おおこわいこわい。都市国家だと土地が限られるから、何でも自前で用意するには限度があるんで、こういう都市も需要があるんだろう。近くにムウスでは珍しい石灰鉱山があるらしいし……。
多分、こういう都市国家群だと、それぞれの都市が単一の重要な行政や商業機能を一手に引き受けても成り立つんだろう。つまり、都市国家群自体を一つの国家のように考えれば、機能を分担しても成り立つと考えられる。
もちろん完全に全てを委託・依存するのは危険だろうけど、行政は全て自力で賄おうとすると、経費面でいろいろと無駄もあるから、アウトソーシングできるものならしてしまった方が、行政機能的にはスリムになるしな。
いやもうおまえらいっそのこと、全部の国統合して一つの国になったらどやねん……と思わなくもない。
だからそれはどこのUSAだと。
最初の都市国家は、北東側国家との出入り口になっている国・サンタムーン。
ここは交易都市で、都市の大半が交易の市と商店、倉庫、そして宿で構成されている。
サンタムーンでは、ここから東の国に持っていく品や、反対に都市国家や西に持っていく品が一度集積される。それらを効率よく、移送先ごとに西へ東へと捌き、運送する。「東の玄関口」といわれる国である。宅配便の大規模集配所みたいなもんだな。国のマークが「荷車を引っ張るネズミ」だし。
もちろん「西側の玄関口」となる国もある――ここから南西へ馬車で五日ほど行くと、西のヤン・ドール・ザン聖帝国との国境に、ハーティスサンランドという都市国家がある。そこも西方の荷物集積所、といった交易都市だという。こっちのシンボルは「荷物を担いで走る人間」……東はネズミ、西は飛脚か?
俺たちはここでハーティスサンランド行きの「馬車」をチャーターすることにしている――都市と都市の間は街道こそあるが、完全な無法地帯。怪物もいるし、盗賊もやり放題。都市周辺の治安はともかく、夜に街道途中で野宿する者は少数派だ。
そのため、都市と都市の移動は、馬車で一日以内で行ける範囲で行うのが普通である。
もちろん、そんな都市ばかりではないのだが、そういった離れた都市国家との間には「城砦宿泊所」が設置されて、都市国家の軍人や雇われ冒険者が出張駐留している。そこで旅人の安全を確保しているのだ。
とはいっても、都市国家群の旅は金がかかる――宿泊費や乗り物代、護衛の費用もそうだが、「税金」である。
国は、入るのに「入国税」がかかる。それは地球でもある制度だ。もちろん国によって値段は違う。観光客が多数訪れる国では安く、外国人の受け入れを基本的にしていなような国ではバカ高い、とか。
都市国家群の入国税は大体百~千ゴネル程度と幅があるが、いくつも経由するとバカにならない。大体五日で東西の横断はできるが、その間に一泊一つ経由すると、一人当たりの入国税の総額は三千ゴネル弱ぐらい、日本円で二万五千円前後かかる。通るだけで。
こちらの世界では庶民が一ヶ月家族で暮らせる額で、結構な高額出費だ。一般市民の年収が発展途上国レベルのこの世界では、そうそう外国旅行などできるものではないわけだ。隣の国で物見遊山できるだけでもお大尽だからな。
商人なんかは、できればこういうところは通りたくないので、金があれば高速便を使ったり、金がなければ野宿して都市を経由しない、という方法をとったりするが……怪物や野盗がうろつく夜の荒野で野宿するのは非常に危ない。世間では、危険+命と金を天秤にかけてでも一儲けを狙うのが「本物の商人」というものらしいのだが……冒険者でも雇ったらいいと思うのだが、まともなのを雇えるなら高速便使ったり都市に普通に入る方が安いらしい。まぁ雇った冒険者の分も入国税を払わねばならないので、都市国家商人は大体「武装商人」として、自分の身は自分で守るのが当たり前なのだ。
商人と同じく、稼ぎのいい冒険者ならそれくらいの出費もあまり苦にはならないが、世の中金持ち冒険者より貧乏冒険者の方が圧倒的多数だ。一発逆転を狙えるとはいっても、それもやはり元手は少しは必要だろう。世知辛い。経済的冒険はあまりしとうない。経済的大成功のリッチマンはともかく、夢破れてアンデッド的リッチマンはちょっとな……双方なろうと思ってなれるもんでもないのは共通だが。
とはいえ、今の俺達には関係ない話! 中身詰まったゴネル貨幣袋で相手の頬ひっぱたいて殴り倒してやる(注:すごく硬い&痛い)ぐらいの余裕はある!
で、金を持っている商人ですら、ここはあまり通りたがらないことから、商人のネットワークはこの地域で東西に大きく分断されているという。
「東商業ギルド連合会」ネットワークの終端がジシィ・マーダにあるので、商業的な情報が入りやすく、クラヴネルは別名「情報都市」とも呼ばれている。商人が持ってくる情報は、商売のネタだけでなく、それに付随する周辺情報も多いので、軍事的・政治的にも重要度が高いのだ。
東商業ギルドもクラヴネルには大きな支部を置き、都市国家群を超えてくる情報に神経を尖らせている。もちろん、冒険者ギルドや魔導士ギルドもだ。
当然、俺ら冒険者だってそういう情報がある方が何かと有利になるので、パーティに一人は情報収集を担当するメンバーがいた方がいい。ウチではシェラが担当している。俺もたまにやる。とはいっても、俺は基本、ギルドの情報コーナーで幾許かの情報料を支払って聞かせてもらった情報から、その「裏」を類推して持ち帰る。シェラはスカウト独自の裏社会ネットワークがあるので、そっちから。それらを総合して、二人で情報の重要性や真偽を吟味していく。
まぁ俺は社会人になってから、「情報とは裏を読むもの」って知ったからな。新聞やテレビやネット「だけ」を信用するな、多方面から情報は集めて正しい(と思われる)情報を拾い出せ……と先輩からも教えられたし。
だから、俺自身の情報とシェラの情報をつき合わせて、必要かつできるだけ真実に近い(と思われる)ところを拾い出すようにしている。
あとの二人?
あれ脳筋やねん。
俺らの各都市出入りの手続きは比較的簡単だ。
商人の場合、商品を持ち込む際にいろいろ商品のチェックがあったりと面倒だが、俺らは旅行者。しかも冒険者ギルド、魔導士ギルドのメンバーなので、ギルドアイテムで身分確認ができれば、税金を払うだけで入国できる。どちらかに加入していればいい。
こういった多国籍ギルドがあると、いろいろな国を行ったり来たりが楽になる。冒険者にせよ魔導士にせよ、いろいろな場所で仕事を請け負うので、こういうシステムは必要だろう。
しかもギルド預託金があれば、税はそこから引き落としができるので、その分の現金を持たなくてもいい。キャッシュレス時代もうきてるよ!
ちなみに商業ギルドにも預託金制度があって、こういった面倒な支払いや高額取引の場合は大体キャッシュレス決済だそうだ……BtoB決済はすでに地球並みか! 変なところがオーバーテクノロジーやな。
都市国家間は、基本的に平和的関係とはいっても、時折国家間の紛争が起きたりする。
距離の近い国家の間では、あちこち国境問題を抱えているし、隣接していると互いにライバル視していたりもするので、そういう「意地や見栄の張り合い」で紛争になったりすることもある。ただ通過するだけの旅人には迷惑な話だ。経路の危険度が増すと危機対策費用がかかる、という名目で入国税が上げやすいため、わざわざ「危機を演出」して入国税を高止まりさせる、なんて性質の悪い国もあるので、そこを通らないようにしつつ最短ルートを考案するにも、情報が必要になる。
他にも、あそこにゴブリンの群れが出た、どこそこの盗賊が成敗された、とかいう情報は、流通経路の選択に関わり、輸送されるモノの価格にも反映される。冒険者がそういった情報を持っていけば、それにも相応の値段がつくので、都市国家の間を放浪しながら怪物や盗賊を成敗し、情報を集める専門の冒険者もいるぐらいだ。
まぁ俺達の目的地は都市国家の向こうだから、安全で安い経路があればそれでいい――とはいっても、そんなルートは大体決まっている。
今は紛争も、怪物のスタンピード・レギオン情報もないし、盗賊頻発警報もなし。ただ通過するだけ。突発的な事態の心配だけすればいい。
都市国家群の領域では、「馬車」が使われることが多い。
突発的事態が起きたとき、馬は「逃げる」が、大鼠は「その場で死んだふり」をして動かなくなるからだ。馬は訓練すれば「軍馬」として、戦場でも逃げないメンタル強い馬に変身できるが、オオダンレツネズミはそうはいかない。ネズミは基本、メンタル激弱なのだそうだ。調教訓練にすら耐えられないほどの豆腐っぷり。力はあるし、言うことは聞くんだけどなー。
「突発的事態」とは、盗賊や怪物が出た場合、もしくはその他天災とかで「緊急避難」が求められるケースである。
そういう場合には、とりあえずその現場を離れてくれる馬の方が、この地域の乗用・牽引動物としては相応しいのだ。
……あと、もう一つには、速度を出す場合がある馬車には近年、「サスペンション」が装備されたものが多く、乗り心地や車両強度が劇的に改善されているからである。
サスペンション、というと「鋼鉄製スプリング」を思い浮かべるかもしれないが、トラックなどの大型車両では、転生前の現代地球でも「板バネ」式のサスペンション(リーフスプリングという)が使われている。大型車両ではメンテナンスや故障時の交換にこちらの方がいいんだそうだ。
リーフスプリングサスペンションというのは、弧を描くよう反った板の下に車軸を据え付けることで、反った板が衝撃を吸収する形式のサスペンションのこと。こういう形式なら、木材でも製造可能である。
リーフスプリング式は、金属スプリングが造れないこちら側ではこれしか選択肢がなかった、というのもある。
同じく、車軸にはセラミックの「ローラーベアリング」(ボールベアリングみたいな高精度金属球はないが、強化セラミックの短い円柱ならギリ大丈夫)が取り付けられ、回転摩擦耐久性も高くなっているため、サスペンションと合わせれば少々乱暴に走っても簡単に車軸が折れたりはしなくなった。車軸自体も素材が強化され、車輪自体も一部であるが、「硬質ゴム」のような謎素材を取り付けられるようになり、衝撃耐久性も向上した。
さすがに車輪ごとの独立懸架方式まではいかなかったが――耐久性は、従来の「サスなし」から十倍以上になったといわれる。上手く使えば、簡単なメンテだけで十年は使い続けられるとか。スーパーカブか。
なので、この世界の馬車は、いいものなら地球で使われる典礼用馬車と遜色ない乗り心地が発揮できる。もちろんサスペンション性能などで乗り心地は変わってくるが、サスペンションなしの時代に比べれば全て乗り心地は高級品になった、と昔を知る世代の老人は言うほどである。
馬車なんかは「吊り下げ式」っていう、車体から乗客座席部分を切り離して車体フレームに吊り下げることで衝撃を吸収する方式がまずできたそうだが、こっちのサスペンションがあるなら別にそっちはいらんのじゃ……ああでもサスと併用するとより一層快適かな。
あとは車輪を全てエアチューブ入りゴムタイヤのような弾性素材にできれば、車輪自体が衝撃を吸収できるようになるため、より一層地球の車に近づくのだが――そこまで完璧にできるほど、こちらは素材が豊富なわけではないし、合成可能なわけでもない。代替謎素材もあるのかどうか?
……まあそんな感じで快適になった馬車の旅で、俺達はアークゥエスミィ連合王国を目指す。
もうちょっとだけ続くんじゃ……(´・ω・`)




