世界の街角探訪 ~マーダ~
旅番組みたいになった(´・ω・`)
――水平の景色が下がっていく。
ギルド横の発着場から、ギルド本部の横を上昇、その屋根を越えると――「大都市」を俯瞰する高さにぐんぐん上昇していく。
七十万超という人口を擁する、この世界では巨大な都市だけあって、その都市圏は広大である。
中央部はペンドリン川が南北に流れ、その左右に拡大した都市は、交易都市として広がったこともあり、川岸を削って造った交易港を中心に広がっている。下流から見て右側、つまり東に「城」の聳える丘があり、そこを中心に高級住宅街が広がる。歪んだ同心円状に壁が作られ、階級ごとに居住地域も決められている。一般人が住めるのは、三層の外二層まで。王城周囲は貴族や王侯貴族と取引の多い豪商だけに限られている。それだけに、一軒あたりの家の大きさがそこだけ極端に大きくなる。
川の反対側に行くには、中央通りの巨大な橋があるのだが、この橋は一回五ゴネルほどの通行料がかかる。大した額ではないので皆払うが、川の両岸を繋げる橋はこの中央大橋と、上流の「上橋」、下流の「下橋」の三箇所だけ。その間には渡し舟もあったりするが、川を行く船は大体、上流下流の町への定期航路船だろう。
この規模の都市で橋が三箇所というのは些か少ない……橋自体はかなり巨大なものだが、もっとあっても良かろうもん?と思われるが、多分「戦時対応」という発想があるのだろう。橋を多くすれば、経済的には効率的であるが、他国に侵略されたときに防御がしにくい。そこで橋は三つに絞っているのだろう。でも平和な時代にはもっと増やしていかないとな。
ペンドリン川の西側は、商業地区が中心になって広がっているそうだ。最初に東側に城と城下町が生まれ、その後対岸にも人が住み着き始めたが、先に栄えた城下町周辺は「お偉いさん」や古参が占領しているので、新入りはその周辺へ。
なので、対岸は行政の建物らしきものはあるが、高級住宅街のようなものが見当たらない。川岸に大きな建物は多いが、基本オフィス目的のものだろう。そこを中心に路地が扇状に伸びているので、どこから町が出来たかが見てとれる。周囲に広がるにつれ、路地がぐねぐねと曲がり、複雑に入り組んで雑然としていく……あそこらへんはまだ新しいな。建物の色自体が全体に新しい。
……地球なら「航空写真」が手軽に撮影できるが、ここではそういった視点自体がまだない。「都市計画」という発想自体があるかどうかも怪しい。
まぁこういった世界の都市は、支配者を中心に作られるのが当たり前だ。領主様「やれ」領民「はい」と従うのが役目。町と畑がそれぞれ大雑把に集められて、都市部が商業とか居住区とか区切られていれば「効率的な先進都市」と思われるレベルなので、古くからある大都市になればなるほど雑然として、東京みたいな「どこまでが都市圏なのかわからない」ような街になる。
改めてここら一帯を再開発、なんてことも、地震だの広域火災だの洪水だので町が消滅しなければ事実上ないので、大都市の場合は「新たな中心地」を設置し、そちらに中心を移すだけである。
もちろん中世ヨーロッパのような、小国乱立&領土戦争みたいなのが頻発するようでは、おいそれと都市中心部移動など不可能であるが、この世界は今のところ、人間同士で全世界的に大規模な戦争などやってはいない。
少なくとも、ジシィ・マーダ周辺は総じて平和であり、ここもいずれより広い平地に城を移して新都心建設構想などが持ち上がるのではなかろうか……あと五十年ぐらいしたら。
だけどこれだけの都市だと、川を中心にしないと水問題がな……これだけ多数の人間を生かせる水がないと、みんな干上がってしまう。となると、迂闊に移転とかできないか。
……などと考えながら、首都上空を時計回りにぐるんと一周するだけで、あっという間に空中散歩の時間は終わってしまった。むう……見ようと思っていたところをあまりしっかり見た記憶がない。ヒャッハーしすぎだ。もう少し遠くを見ておこうかと思ったのに、都市部ばっかり見ていた……ちょっと失敗した。
とはいっても、遠景は大体「雲」で霞んでいるので、大して遠くまで見られないわけだが。
もしかしたら、南にユプニック高原が見えたかも……さすがに無理か。地図でざっと確認したが、概算で五百キロぐらいあったわ。普通に曇って見えん距離。
グルーガの奴、あれを歩いていくのか……まあ何年も人の世界の横に潜んでいられたんだ、そのくらいどうってことはないんだろう。
「……ど、どやった……?」
ナオが、ちょっと不安そうな顔で、降りてきた俺に問うてくる――ヘルメットを取った俺は、多分これまでの人生で最高の笑顔を作っていたと思う。
「――最ッ高ーでした!」
思わずサムズアップしてもうたよ。パイロットのお兄ちゃんも「お楽しみ頂けたようで幸いです」と笑顔。
客の中には、空から見下ろした瞬間、「おーろーしーてー!」と叫び出す方もたまーにいるとか……女性は総じてこういうのに喜んで、楽しんでいるそうだ。
「さ、さよか……うちはあんまり、高いとこはアカンからな……高い建物の上とか見とると、それだけでなんとのう、背中がぞわぞわするっちゅーか、ピリピリするっちゅーか……なあ?」
苦笑するナオに、ビュスナの鼻で笑うような一言。
「……馬鹿とナントカは高いとこに上がっていくもんだって言うしね」
おい、オブラートに包むならせめて「ナントカと煙」って言え。言葉の刃の部分が包まれてねーぞ。
「いいなぁ、ボクも見てみたかった……都市の構造が解れば、いろいろと捗ったのに」
シェラちん、独り言がなんとなく「ヤバい仕事の人」だよ? キミ、そういうのから足洗ったよね?
「足は洗ったけど、職業病ってやつだよ。そう簡単には治らないんだよね。
まあでも、冒険者的にも何がどこで役立つか解らないからさ」
言い分は解るが……大丈夫だよな?
さて、思いがけず空中散策まで堪能したけれど、俺たちの旅はこれからだ!
これからだよ? これで終わりじゃないからね? 坂とか登ったリしないから。
……と打ち切りエンドっぽいことを考えながら、首都からさらに西へ向かうぞニンニキニン。
だが俺の旅に打ち切りはない! 読者アンケート制もないしな!
というわけで、旅の途中、盗賊団に遭遇することもなく、国境の町・クラヴネルへ三日かけて到着ー。ここまでは中央街道まっしぐらなので、舗装道が続き、鼠車も順調に進む。途中の町は観光する時間もなく、夕方着いて、宿に泊まって、翌日昼までには出発。多少入用な物を買い足すぐらい。
それでも、毎日見知らぬ町にいるのは、すごく旅人っぽくてイイ!
クラヴネルは国境なので、ここで鼠車から馬車に乗り換え。
そしてここから先は、自由都市国家群。
明日は、自由都市国家へ入ります。




