伝説のオーガと共闘? 5
……機密事項か。まあそれを聞けただけでよしとしよう。
で、そいつ起こして命令するわけ?
『うむ』
……俺、食われないよね?
『それは大丈夫だ。心配なら少し離れておるがよいぞ』
そうしますー。
……俺が離れると、グルーガはデル・オーガになんか魔法――治癒系だろうかショック系だろうか――をかけると、デル・オーガが徐に頭を起こし、周囲を確認するような様子を見せ、上体を起こした。
『ガrンjこあたえおジュじたjぽ』
……うん、離れてると何言ってっかわかんねー。
『カえくbおあえsんjjわう亜jkl……ごう青けwんかkが』
しばらくそういうやりとりが続いた後。何だろ、「盟約に従い、敗者は勝者の命に従うべし」とかそんなん?
……なんか知らんが、デル・オーガが跪いて、頭を下げた。
その頭に、グルーガが拳を乗せる。
……マウンティング儀式完了のようだ。
すると、グルーガが俺を指で招いた。
『終わったぞ。こ奴にも手出しはさせぬゆえ』
あ、ハイ。これで任務完了だな。
『うむ……ケン、お前には世話になったな』
……いや、まあ俺も滅多にない貴重な経験させてもらったよ。それには感謝しとこう。
……ちょっとそのデル・オーガさんの視線がコワいけど。
『気にするな。少々空腹なだけだろう』
それを一番気にしてるのは俺なんだけど……手出しはしないんだよな?
『させぬ。我らの『力の契約』は命より重い。
『力の契約』は我らハイ・オーガのみならず、デル・オーガにとっても唯一絶対の掟なのでな。それゆえに、こ奴もそれは破れぬよ』
……さいですか。お前がそう言うんなら、そうなんだろう。
『……さて。これで我は――』
その瞬間、俺は「強烈な閃光」を見た。
同時に、無意識に、その「閃光」を避けるように、俺は大きく右へ跳んだ。
「気」が、察知した危険を避けるように、俺の身体を勝手に動かした――そんな感じだった。
――一秒前に俺のいた場所に、「巨大な拳」が叩き込まれていた。
な――あっぶねえぇぇぇぇぇ!!
何かと思えば――デル・オーガの奴、俺を捕まえようとしやがった!
このヤロウ、「掟」を平気で無視して――そういうこともあろうかと思っていたら、マジでやりゃあがったぞ!
うーわっ、怖っ! 今の掴まれてたら、完全アウトだろ!!
巨大ロボの手の中でグシャッてやられちゃうやつ!
よく身体動いたな!
だが――デル・オーガの気配は「驚愕」に包まれている。
しかもこのデル・オーガ、失敗したとみるや――
ドンッ!
地面蹴って、森へ逃げようと跳んだ。
「逃がすかこのクソがっ!」
俺はデル・オーガの正面に〈絶対領域〉を生成――衝突。
グシャ、と頭から壁にぶつかって勢いで潰れたような感じになったデル・オーガは、一瞬空中で止まった後。
ドズゥウウン――地響き立てて、地面に落ちた。
『……あの愚か者が!』
グルーガが嘆いていた……あ、グルーガの方はマジだったんや。
とりあえず、あのアホにちょっと思い知らせておかんといかんのじゃないのか?
『……そうだな。掟を破り、しかも我が盟友をも傷つけようとしたのだ、これは万死に値する』
盟友……か。
『すまぬが、あ奴を回収してくる。ここで待っていてもらってよいか』
ああ。ちょっと厳重に拘束しといてくれると助かるが……
『腕をへし折っておく。あとは……角は全部、お前のものだ』
角? 顔に生えてるやつ?
『うむ。あ奴は掟を破った。あのような愚か者には、最大の恥を与えて、見せしめにする必要がある』
ふむ……角を全部へし折るってのもそういう罰なのか。
『顔の角は、我らの強さの象徴でもある。それを全て折られるということは、完全なる敗者であり、奴隷階層の証左でもある』
なるほど、解りやすい……のか?
『……先に奴を回収してくる』
お、おう。
こっちも今になって心臓バクバクしてきたから、ちょっと鎮める時間が……はあはあ。
グルーガが闇の中、岩山の下へと降りていく。
……周囲は完全に闇の中になっていた。こっちの世界の夜は、月がないからすごく暗い――と思っていたのだが。
よくよく空を見ると、僅かに「まだら」になっているのが解った。雲の濃淡があると、空の上の僅かな明かりの漏れ方が変わるのだろう。少しだけ明るさがあって、周囲の山の稜線や、森と空の境界ぐらいは区別がつくぐらいには明るかった。
それと――遠くに、町の明かりが見える。あれは多分マシナか……そのずっと先にも小さな明かりがぽつぽつ見えるのは、ククリグへ向かう街道沿いの村だろうか。
こうしてみると、意外と町は明かりが多く、こんな闇の中では一際それが目立つ。衛星写真とかあれば、町の位置もはっきり判るだろうが……まあないものをねだっても仕方がない。
しかし、こう暗い中に一人だけで待ってるってものなあ……気配のない「何か」がいきなり迫ってきたら、さっきみたいに避けようがないぞ。
だからって〈灯火〉を点けるのもどうか……何が寄ってくるかわからんし。
そう一人でどないしょーどないしょーと悩んでいると。
森の方から、ズズ、ズズ、と重いものが引きずってこられるような音と、グルーガの気配が近づいてきた。
『待たせたな』
……戻ってきたグルーガは、先ほど言ったとおり、両腕をへし折って、蔦で雁字搦めに拘束したデル・オーガを引きずっていた。また血の臭いが……折檻追加したんかな? よく死なねーな。
『この愚か者は、見せしめのためにも是が非でも国に連れ帰らねばならん。この場で処刑できぬのは申し訳なく思う』
……いやまあ、結果としては俺も生きてるわけだし。
こういうのでやられるようじゃ、冒険者やってらんないっすよ?
『……これを渡しておく』
と、なんかデカい革袋を渡された……オーガなら小物袋だろう。
〈灯火〉をつけて、中を確認……するまでもない。皮袋の外から触れた感触でだいたい解った。
デル・オーガの顔にあった角……八本。血生臭い。
一本が二十センチぐらいある大きいのだけで、折れるものだけだそうだが……。
『全ての角を渡すのは、我らとしては最上級の詫びである。謝意として受け取ってもらいたい』
……うん、判った。詫びとして受け取ろう。
てれれれってってってー♪
『アイテム:オーガの角×8を手に入れた!』




