伝説のオーガと共闘? 4
俺は〈光弾〉を発動。目標は、洞窟内に潜むデル・オーガ。気配がデカいから外しようはない。見えなくても気配でロックオンできると解ってるから、気功術様様だ。
だが、そこで俺は気配をさらに細かく探る――手、身体、頭――よし!
〈光弾〉が、洞窟の闇へ吸い込まれていき――パン!と小さな音を立てて、目標に命中。
『……ゥゴアアアアアァァァァァァ――――ッッッ!!!!』
うっわ、オーラが「怒り」一色になりよった!
『おい、何をした、あ奴、ものすごく怒っておるぞ』
あ、ハイ――ちょっと精密に、「目」を狙ったんで。
『目?――この暗がりで、どうやって狙ったのだ』
ちょいと気配を細かく探り、顔の中ほどで小さく動いているところへ〈光弾〉ぶつけたんで。多分命中したと思う。
『器用な……ヒトの魔導士はそういうことができるのか』
あーいや、今のは俺の思いつきで。出来るのもいるかも知らんけど……てなこと言ってないで、来るぞ!
大地を震わせる地響きが、洞窟奥からせまってくる――よし、ここでもう一発! 〈絶対領域〉発動!
って、入り口に置いとくだけで。
『ガアアァァァァァゴフゥッ!!』
はっはっは、見事に奴からヒットしおったわ! 苦しんでる苦しんでる。
『お、おい、今度は何をした?』
あ、いやちょっと入り口に固定魔法トラップをね。それに見事に衝突したってわけ。自分からボディブローよ。
『……ヒトが狡猾なのか、それともお前がそうなのか……』
今のは俺だけだな。てか先手取れ!
『う、うむ!』
俺が一歩離れると、グルーガが一気にデル・オーガに向かって、地面を蹴って跳ぶ。
わっくそ、もう一歩離れてれば土塗れにならずに済んだかもぺっぺっぺ!
グルーガがデル・オーガの顔面に拳をヒット。相手の顔、ド正面に全体重を乗せた一撃――いける!と思ったら。
デル・オーガはぐらついたものの、その場で逆にグルーガに殴り返した。なんつータフネスだ……。
……なんだろう、双方全力で一発殴っては殴り返す、っていうのを始めやがったぞ。
「俺とお前、どっちが強いか試そうぜ!」みたいな、そんな殴り合いっていうか、タフネス勝負してやがる。
しかも一発一発の打撃音が、こっちにまで響いてくる……すげー、あれ一発の衝撃力何トン?とかいうレベルじゃね?
もう音っていうより「震動」みたいなの。ほら、巨大な建築重機が、ビルの基礎に鉄杭打ち込んでるみたいな、あんな感じのが、断続的に、ゴォン、ガァン、てね……生物の出す音じゃねー。
普通に殴り合ってるように見えるのに、なんであんな音するのん……。
「地上最強の親子喧嘩」をリアルに見てるような……しかもこれ、両方「オーガ」だ。マジモンの。
……ナンなの、オーガってこういう様式美みたいなので戦うわけ?
人間でもこういう「脳筋の極み」みたいな戦い方する奴はいるけどさあ……グルーガみたいな立場でそれやる必要ってあんの? あいつ、人間で言ったら軍の高官みたいなもんだべ? それが下っ端の脳筋脱走兵と殴り合うの図……きっと人間には解らない、オーガならではの「常識」があるんだろうな……うん、きっとそうだ。
「殴り合わずして相互理解なし」みたいな……イヤな連中だな!
――だが、グルーガが先ほど言っていたように、徐々に形勢はグルーガに不利になっていく。
先行ダメージは与えたものの、その程度ではデル・オーガの戦力を削ぐには程遠かったようだ。
真正面から殴り合ったら、(オーガの中では)体力的に劣るグルーガが圧倒的に不利だ。
ズン……何十発かの殴り合いの末、グルーガがついに、デル・オーガの一発で片膝を落す。
……どうやら、反撃が一定時間できないと、「さらに俺のターン!」になるらしく――立ち上がれないグルーガに対し、デル・オーガがもう一度拳を振り上げる。
あ、これヤバくね?――と思ったその瞬間。
グルーガが、突然デル・オーガにアッパーを放った。
それも、全身のバネをきかせて、全力でアゴに向かって突き上げる一撃――あ、しかもあれ、「雷神拳」アッパーストレートだ。電撃纏ってやがるわ。
汚い、さすがハイ・オーガ汚い……とオーガの世界に匿名掲示板があったら書かれそうな一撃。
その一撃で、デル・オーガもさすがに頭を大きく仰け反らせて、ゆっくりと宙に舞い――地響きと共に地面に伏した。
不意打ちに近い全力の一撃を食らったせいか、デル・オーガはそれ以上立ち上がって反撃はしてこなかった。
テンカウントを脳内で数えたが、デル・オーガは起き上がる気配がない――というより、気配が戦えるレベルじゃない。
――勝者、グルーガ!
とりあえず脳内で勝利コールしておく。ゴングも鳴らしとくぞ! カンカンカンカン!
だが、さすがにグルーガもダメージが大きかったようで、ドズン、とその場に座り込んだ。
俺はゆっくりとグルーガの背後に回り、「大丈夫か?」と声をかける。
『……うむ。少々キツい戦いではあったが……まあ、結末は予想通りではあったがな』
お、おう……まあ見事な戦いだった、な。勝ちは勝ちだ。
『うむ。我らは敵を正面から力で打ち破らねば、勝者とは認められぬ――正式な戦なら、あのような不意打ちは許されぬのだが、このような場だ、致し方あるまい』
……やっぱり正面から殴り合って勝つ、みたいな様式美はあるんだな。
『……これからの時代、それだけで国を成り立たせるのは難しいのだがな。ヒトの世界にも、法というものがあろう。それを統治の基本にせねば、我らオーガも獣と変わらぬままだ。それでは我らの時代にならぬでな』
……うん、まあ、頑張れ。
『……それはそうと、少し《治療》をかけてもらえぬか』
おう、いいけど……これってオーガにも効果あるのか?
『基本、《治療》は回復力の活性化で傷を治すものだと聞いている。ならばヒトの魔法でも効果はあろう』
……とりあえずやってみるわ。慣れてねーから、何回かかけるぞ。
『うむ』
……十回ほども〈治療〉をかけると。
『もうよいぞ。すまぬな』
と、グルーガは立ち上がる……血の臭いがすげー。これでも生きてんだもんな。
で? こいつはどうすんの。
と、倒れているデル・オーガのことを訊いてみる。
『正面からの戦いで勝ったのだ、こ奴は我の命令に一つ従わねばならぬ』
……それで「帰れ」と?
『うむ。我が帰還できるところまで連れてゆく』
帰還できるところ、ね……これから西へまた隠れながら帰るのか。
『いや、我らの国へ一気に帰還できる場所があるのだ。ここへ来るときにも利用した』
……へ?
『……詳しくは話せぬが、この大陸には、いくつかそういうポイントがある。それを回収のために、一時的に我らが使えるようになっておるのだ。
でなければ、我らの国からここまではさすがに陸路では来られぬ』
……オーガの国への直通帰還ポイント、ねえ……どうやって帰るかも言えない?
『それに関しては詳細は我らも知らされておらぬが……何か、あの雲を通過して一気に帰還するモノがあると聞いている』
雲? あの雷雲をか?
『我から言えるのはそこまでだ』




