表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第三章 伝説のオーガとバトル?
70/249

また会う日まで


 それで、これからどうするね? すぐ国へ帰るのか?


『そうだな……今夜中に、町の近辺からは離れようと思う』


 そうか……もう少し、お前とは話をしておきたかったがな。


『うむ、我もだが……我らはヒトの世界とは相容れぬからな。少なくとも、今は』


 ……今は、か。

 そうだな、ハイ・オーガが国の主流になれば、時代も変わるだろうが……それまではまだ時間がかかろうな。


『……一つ、頼みがある』


 何ぞ? 多少のことなら応じるぞ。


『……我も、ヒトと接触できたこと、情報交換ができたことを、国へ報告せねばならん。そのための証拠品が必要なのだ。そのような品を何か、譲ってはもらえぬか』


 なるほど、証拠品か……するってぇと……何がいいか……。

 俺は今持ってる装備をいろいろと見てみるが、あまり小さすぎるモノではなくしかねんし……となると、コレか。

 俺は、腰につけたセラミックの剣を、鞘ごと差し出す。


『これを、か?』


 これならよかろう。汚れてもいないし、頑丈だからな。

 俺の親父からだから――「家に代々伝わる剣」って言っていいのか?

 そういうことにしておこう。


『……かたじけない。丁重に扱おう』


 あ、ちょっと待て。

 俺は〈灯火〉の下、剣を取り出し――〈グラインド・ソード〉の先端で、「名」を刻む――「KEN」と。

 魔強化セラミックだけど、〈絶対領域〉さんにかかれば楽勝でんな。


『……有難く受け取らせてもらおう』


 すると、グルーガは――額横から角を一本、バキンと折って、俺に差し出した。

 デル・オーガの角とはまた違う、三十センチを超える立派な角。


『我らは、真の友誼の証として、角を交換する。お前の剣と交換だ』


 ……有難く受け取ろう。

 ハイ・オーガの角、か……こんなもの、滅多に手に入るものじゃないしな。


『――一つ、教えておこう』


 ?


『我らは、ここから南西の方向へ向かう』


 南西?


『その方向に、海の横、ヒトが入れぬ高山地帯がある』


 海の脇、人がはいらない高山……もしかして、ユプニック高原のことか?


『ヒトがどう呼ぶかは知らぬが、その地に我らの国への移送経路がある。

 だが、ヒトがそれを利用することは出来ぬ。彼の地に出入りできるのは、我らハイ・オーガでも限られた者であるのでな』


 ……それは言っちゃいけないんじゃなかったか?


『よい。お前にはそれを知らせておきたい』


 そりゃまたどうして?


『……いずれ、お前が、もしくはお前の係累が、我らの国を訪れることがあれば、必要となろう。その角は、その時の鍵として使うことができよう』


 ……この角が……ねえ。


『もっとも、何の準備もなく我が国に来ても、そこで食われるだけだろうがな』


 ……おい。


『だから、事前の接触と交渉が必要なのだ。そのための鍵だと思うがよい。

 それがあれば、我が招いたことの証左となろう。

 それを示せば、ハイ・オーガが交渉を受ける理由となる』


 ……将来の鍵、か。


『それがいつのことになるかは判らぬが――未来の可能性を作るのも、我の使命であるからな。

 それともう一つ――我らも将来は、ヒトと交わることができるやもしれん』


 ヒトと交わる?


『ヒトとの交流ができるようになる、という意味だ。その可能性がでてきたということだ。

 まあこれにはしばし時間もかかろうがな。お前が生きている間に、実現できれば良いのだがな』


 なんつーか……気の長い話だな。五十年計画か? 百年?

 だが、オーガともいずれ友好的になれるなら――そうだな、生きている間に、もう一度会えるといいな。


『そうだな。また相見える日を、楽しみにしておこう』


 ……グルーガの、僅かな光に浮かんだその顔が――少し、「笑った」ように、俺には見えた。


『……では、そろそろ行くとしよう。夜の間に、出来る限りヒトの町から離れたい』


 グルーガは、縛り上げたデル・オーガを右肩に担ぎ上げる。


『ケン・ファラザードよ、お前の名は忘れぬ。もしまた、会うことがあれば――その日まで、壮健であれよ』


 ……ああ、お前もな、グルーガ。


『また会おう』


 グルーガの体から、俺の手が離れる。


 ズン、とグルーガが一歩踏み出す。

 その歩みの震動が、一歩一歩、後ろ姿と共に、徐々に小さくなっていく。

 ――その震動が感じられなくなり、闇の中に消えていく姿の気配が感じられなくなるまで、俺はグルーガを見送った。


 ほんの短い時間の遭遇であったが……でも、俺の持っている皮袋には、デル・オーガの角、そして……「グルーガの角」が確かに残されていた。

 オーガとの接触、そして対話、それは紛れもなく事実である。


 しかも、人とオーガとの未来みたいなもの、まで託されてしまった。


 だが……それをどうするかは、俺の手には余る。


 そういう大きい話は、冒険者ギルド……でも持て余すな。国……でも、一国でどうこうできる話じゃない。

 こういうのって、人類全体の話だしな。


 グルーガはあくまで「未来への種」みたいなもんだと言ってたし……そういうのは、一介の冒険者じゃなくて、もっとお偉いさんが考えることだ。

 俺は、冒険者として生きてくことを考えりゃいいさ。


 ……とりあえず俺も帰ろう。

 今夜はもう疲れたよ、パトラッシュ……。




 ……おーい!

 俺はどうやって帰りゃいいんだYO! 放置プレイか!

 あの「グルーガ・ジャンプ」ですっ飛んできたあの距離……どんだけ移動したんだおい!

 ……歩いて帰るのかー。

 ここから……あの町まで……まじかー。


 ないわー。




 ……マシナの町に帰り着いたのは、翌日の夕方だった。

 途中、獣に襲われたり、崖下に落ち込んだりもしたけれど、私は元気です。


 ……元気じゃねーよ! もう疲労困憊だよ!

 ほとんど寝ずに森の中、丸一日歩いて帰ったんだよ!

 崖から落ちて痛かったし!


 グルーガ! 今度会ったらこの件、じっくり問い詰めるからな!



てれれれってってってー♪


『アイテム:ハイ・オーガの角を手に入れた!』


『※ミッション:はぐれオーガ掃討&ハイ・オーガとのファースト・コンタクトを完了しました』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ