いろいろ対策
さて、ミッション初日は大過なく経過。
気配探知担当リリエラさん曰く、「不審な視線は多少あったけど、それだけかな」……それはあなた(の胸)に対する個人的な視線なのでは?
それ以外には、いろいろ仕入れしたり、露店で調味料とか探してみましたー。
ええ、コショウはありましたけど、クッソ高ぇんだよ! 掌にちょっと乗る程度で五万ゴネルとか! 一粒五千円ぐらいか! 等量の金だか銀だかと同じぐらいって言われるの解るわ……値切ろうとしたけど「ニイさん、こいつだけはダメだよ」って言われたし。しかもなんか厳重に金庫みたいな箱にしまい込んでる。
……買えないことはないけど、コショウにこの金額はなあ……手持ちもないし。
なので代わりに赤唐辛子と緑唐辛子買ったよ。多分二・三百グラムぐらいあって各二百ゴネルだった。それと、肉の臭み消しによく使われる香草もいくつか。これが三百ゴネル分、束でごそっと。コショウに比べたらメチャ安いわー。組み合わせてカレー作りてぇ……けどこれだとタイカレー風な感じがする。あれは俺の中ではちょっと違う。英国伝来のジャパニーズカレーが欲しいんや。なんだっけ、クミン、ターメリック、コリアンダーが三大要素だっけ。それになんか他のをいろいろ足して、炒め小麦粉と脂で練って、カレールーにして。これは将来の課題だな……。
じゃあせめてスープの素みたいなもの……はあった。骨付き肉とか野菜とか塩と香草で煮込んで、業務用スープ作ってる店があった。ただ乾燥してない濃縮スープみたいなのだったので、味見させてもらって、お試しで陶器瓶一瓶だけ買ってみた。あとで食おう。ちなみに容器込みで千ゴネル。容器持ち込みなら六百。これで五倍ぐらいに希釈すれば二十人分ぐらいになるそうだ。
まあそれはいい。俺の本分は料理人ではないのだ。料理人ではないのだ。大事なことなので二回。でもとりあえずパーティ経費にしとこう。
本日の任務は、盗賊団対策なり。
気配探知は俺の領分じゃないけど、いざ連中が襲ってきたときに、どうやって「バレずに必殺技を使うか」。この「バレずに」というのが難しい。気配探知ができれば、先手でこっそりブチのめすことができる。
攻撃力の加減は、〈DBグローブ〉という技を開発したことで可能になった。対人攻撃はこれでよかろう。
だが魔法も使わず、近接武器も使わず、触れもせずに相手を叩きのめしたんであっては、どうあっても目立つ……射程距離も現状、そんなに長いわけでもない。
むしろ俺の場合、気配感知して遠距離で接近される前に始末しちゃうのが一番なんだが……あ。
「気功術?」
俺はダメモトで思い切って、リリエラさんに「気功術を教えてほしい」と頼んでみることにした。
だけどこの世界では普通、「自分だけの特技」になりうる技術や特技を他人にはそうそう教えたりしない。
だからまあ、断られたら別の切り口から頼んでみるつもりだった。イザとなった金払ってでも。
「いいよー」
「ですよねー、簡単に教えてもら……えるんですか? え?」
リリエラさん軽っ。そんな簡単に教えちゃっていいの? 俺の方が心配なんだけど。
「そのかわりぃー」
リリエラさんがいきなり俺を抱き抱えてきた! うわむっふー!
「教えてる間はー、いつでもケン君で遊んでいいならー、だよー」
……「遊ぶ」ってなんや! え、まさか○ロ奴○とか? それはちょっと……いいかもしんない。オナシャス!
「冗談はそのくらいにしておけ」
マシュさんがリリエラさんにヘッドチョップして止めた……しかしよく考えたら、それって約一名にものっそい睨まれそうでコワイデス……。
「ケン君にも彼女がいるんだ、邪魔するのはよせ」
「……カノジョって誰のことです?」
俺がそう答えると、マシュさんは不思議そうな顔をする。
「……そうだったかな? 私の見たところ、君に対する――いや、それはいい」
と、マシュさんはそこで言葉を切り、微妙な笑みを浮かべた
「ちょっとなんですかそれ気になります最後まで言ってください」
「いや、こういうのは自分で気付いてもらわないとね……見ている側としても」
見てる側ってなんすか……マシュさん、もしかして面白がってない? 何ニヨニヨしてんすか。ここラブコメするとこじゃないんですけど?
「えーでも教えるのあたしだしぃー少しぐらいいいじゃーん」
リリエラさんがまた俺におぱーいアタックしてくるんですけど! 頭に乗せてるんですけど! もうずっとこのままでもいいんですけど! 「乗せてんのよ」って言われたいやつや!
「だからそういうのではなくてな……おまえの個人スキルなのだから、教えるならせめて相応の見返りぐらいは求めるべきじゃないかと言ってるんだ」
と、マシュさんも少々呆れ気味に言う。
まあそうですよねー。何か見返りがあった方が、俺も堂々と教われるし。
「うーん、だったらー……」
リリエラさんが右、左、右、と左右に揺れながら考える。おぱーいが後頭部に右から左から押し付けられるんですけど! いいぞもっとやれ!
「あ、じゃあー」
と、リリエラさんが俺の肩にのしっとやわらかダブルメロン(特大)を乗せてくる。むむう、この重さでは肩が凝るのも無理はないか……。
「ケン君のユニークスキル、教えてくれない?」
……はい?
「うむ、それはいいな。君の実力を知ることができれば、我々も仕事がしやすい」
マシュさんも乗っかってきた……物理的にではなく、発案的な意味で。
「……うーん、そうですねえ……」
どうしようか……教えてもいいっちゃいいんだけど。教えたところで防げるわけでも妨害されるわけでもないし、まあ味方だしな。
「わかりました。教えます。でも」
俺はリリエラさんから離れて、先に言っておく。
「……俺のこれは、誰かに教えて習得できる、というものではありません。
これは生まれつき与えられたもので、しかもごく限られた力でしかありません。
なので教えても、使えるようになるわけではないんです」
「いいよーそれでも」
リリエラさんはニコッと笑う。
「ケン君の気を読んだ時点で、他人に使えそうなモノじゃないことは判ってたからねー」
あ、そうですか……そういうのも判るんですねー。
「ラスに君のことを聞いてから、どういうものかは興味はあったからね」
マシュさんもそう言うが……そんなん半分バレとるやないですか。
「……わかりました。でもちょっと音が目立つんで、できれば音が遮断できるか、聞こえない場所がいいんですけど」
「それなら私が遮音壁を作ろうか。《シールド》の応用でできるからね」
マシュさんがそう応える――ほう? 〈シールド〉さん有能ですな!
「《シールド》ってなんか色々使い方あるんですね」
「そうだね。《シールド》一つで攻撃・防御両方使えるし、遮音壁を作ることもできれば、何かを斬るのにも使えるし、形状を変化させれば水汲みにも、下に向ければ自分用の小船としてだって使える。ある意味、これを一つ極めれば旅の間の日常や戦いにも大抵困らなくなると言ってもいい。面白い魔法だよ」
……あれ、なんかそれって……〈絶対領域〉のそっくりさん?
いやまあ、〈絶対領域〉さんはそんな有能じゃないですけどね。




