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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第八章 オーガ帝国・オルガネラ編
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観光旅行の終わり


 ……そんな待ち伏せ野郎対策は、とりあえず棚上げして。


 これから、ゆったり途中停車の旅でもしながら、パン・セリンへ向かうことにした。

 コーチはそのまま同行、シェルニーもパン・セリンで護衛官登録もしたことだし、しばらくは同行することになった。

 コーチにはそんな行動で大丈夫か?と聞いてみたが……


「……俺には人間界の常識を学ぶ必要性がある。もうしばらく人間界を見て回り、同胞のために情報収集をせねばならん」


 と、目だけ斜め上を見ながらのたもうた。

 まあ、本人がそう言うんだからそうなんだろう。本人の中では。

 ブレンダさんもどうせ、外交特使としてしばらくはウーゴ・ブオールから離れられんだろうし。

 結婚前の自由独身をしばし謳歌するといいよ!


「じゃあ今後、どのルートで行こうかねえ」


 と、ミーチャ様の屋敷にある、ウーゴ・ブオールの主要街道図を眺めながら、帰りのルート検討。


「来るときは、大会の森からすぐ、北の山沿いに西へ進んだから……もっと南、海岸沿いに行く?」

「となると、王都方面から東へ行くか、それとも王都ルートを途中で外れて南東方向へいくか……」

「つまり、来た時とは別ルートで帰ろーいうことやな?」

「となると、やっぱり南の方かにゃー」


 シェルニーが、ここから王都への南下ルートを指で辿り、途中で南東に曲がり、沿岸方向へ進める。


「んで、こっから大体海沿いに進めば、あの森のあたりへ出るにゃし」


 沿岸まで出たら、東へ進むと海岸線が北へぐるりと曲がり、途中で少し北北西に進路をとると、山間を抜けてウーゴニアスリータ会場の森の南あたりへ出る。

 そこまで行けば、にゃん子の故郷モーントニー経由で、国境まではすぐだ。


「じゃ、そんな感じかな」

「せやな。南の方やったら、これ以上オーガと絡むこともなさそやしな」

「それはもういいにゃし……」


 俺ももうオーガ案件はお腹一杯だから……

 ほんと、ちゃんと観光しようぜ!


「十分観光してると思うけどね?」

「観光以外が濃密すぎたのよ……」

「なんで観光に来たら戦争始まんねん……」

「それはあたしらもおかしいと思ってるにゃし……」


 だよな?

 ……もうそういうのじゃなくて。

 ほんとにマジで、物見遊山だけでいいんだけどな?


「行先に強い奴がいてくれればなお良いがな」


 コーチは人として軸がブレねえなあ……まあ鬼なんだけども。




 そして、さらに一週間後。

 ミーチャリアル様がお帰りあそばした。


「いやあ、大変だったねぇ……だけど、これで一通りの仕事がやっと終わったよ」


 俺たちしかいない応接室で、ミーチャリアル様はだらんと弛緩して椅子にもたれかかり、疲れたが、やりきった清々しさに満ちた笑みを見せた。


「……国交は、これから少数がしばらく行ったり来たりするぐらいだけど、いろいろな情報交換が進むから、まずは文化・技術交流だね。それを何回か繰り返したら、本格的に人材交流を拡大していくことになるだろう。

 次は人類との直接交渉を始めるから、パン・セリンへ使者を送ることになるんだけど――」


 そこで、控えていた家令が、封蝋を施された封筒入り文書を、テーブルにいくつか置いた。

 ミーチャ様はそこで姿勢を正し。


「君たちには、これをパン・セリン、アークゥエスミィ、ライ・マーストへ、外交文書として持って行ってもらいたい。

 これは護衛官――冒険者としての君たちへの、正式な指名依頼だ」


 外交文書、か……封蝋に「獣」の字があるから、王家からの親書かなんか?

 A4ぐらいの封筒で、多分今回の外交に関する動きの詳細が書かれていると思われる。これを専用の、頑丈な「外交文書鞄」に入れて、こちらに差し出した。

 まあ当然だが、メインの外交使節のほかに、複数ルートでこれは送られることになっているそうだ。全て内容は同じで、整合性が取れて、最終的に本物の外交文書だと確認される、ということだそうだ。

 この世界はまだまだ遠距離通信環境が不安定だからのー。

 とりあえずこの三国へ文書が送られるのは、ウーゴ・ブオールが正式な国交を結んでいるのが今現在この三国だけなので、ということらしい。

 その他の国は、まあ必要があればこの三国から伝わったり、魔導士ギルドや冒険者ギルド経由で伝わったりすることになる模様。


 ……俺らが遭った「管理者」とかいう連中の件はどうだろう?

 文書より、直接話した方がいいような気がするが、魔導士ギルドあたりから話漏れそうな気がしないでもない。特にライ・マーストは。


 まあそれでも、実際にその現場にいた俺たちにしか話せないこと、解らないこともある。

 ウーゴ・ブオールだって、何もかもこの文書で知らせるわけでもあるまい。


 ……さて、この依頼、受けるや、受けざるや?


「――どうする?」


 ビュスナが、一応全員の反応を見る。

 ナオは「ええんちゃう?」という顔。シェラも同じだ。

 コーチとシェルニーは「任せる(にゃし)」という返答。

 俺は――断る理由もないし、頷いておく。


「――では、この依頼、受けさせて頂きます」


 ビュスナの返答に、ミーチャリアル様は満足げな笑みを浮かべた。


「よろしく頼むよ」




 てなことがあったもんだから、帰りのルートもそうそう大回りしてられなくなった。

 ヴァーンドレッカからの主要街道は、俺らが来た西街道のほかに、東街道というのがある。

 東街道周りなら西街道に比べて、一日多くかかるかどうか程度なので、そちらのルートで戻ることにした。一応ミーチャ様にも了承は得たので、決定だ。


 あと、俺たちにはウーゴ・ブオールからの「国家功労褒章」とかいうのが贈られることとなった。

 オルガネラとの外交チャンネルを開くにあたり、多大なる功績があったということで、勲章と報奨金、「一代名誉騎士爵」の爵位が、メンバー全員に与えられることとなった。

 これで、俺たちはウーゴ・ブオール内では「お貴族様」である。シェルニーなんか、「お貴族様ってどうしたらいいんにゃ……」とか悩んでいたが、まあ「国内での貴族優先権」が使えたり、貴族年金がもらえたりするだけで、特に何をどうしろとかいう義務はないそうだ。

 報奨金も、一人二百万ゴネル。貴族年金が、年10万ゴネル。冒険者ギルドの口座に入金されるので、自由に使える。

 ……もうこれで、永久休暇でもいいかなーとか思ったりする金額だ。まだ人生の休暇には早いが。

 ジシィ・マーダへ戻ったら、実家にもいくらか入れていこう。


 授与は、ミーチャリアル様が代理で行うこととなった――外交チャンネルの件で、王都の政治関係者は今、皆瀕死らしい。

 誇張ではなく、外交的にやることが多すぎて、追加の文官採用を進めてはいるが、とにかくマンパワーが不足していて、末端まで皆、寝てる場合ではないようだ。

 ミーチャ様は、とりあえず国内の手続き関係が終わるまではヒマになったので、それならば――と、褒章授与の代理を申し出たそうだ。

 何にせよ、俺たちもまた王都まで行って戻ってー、という手間が省けるし、外交文書も持って行かねばならない。


 ――翌々日、俺たちはパン・セリンへ向けて出発することにした。

 あんまりお貴族様風な生活に浸ってると、一冒険者に戻った時に辛いしな。てか多分、今夜からもう辛いんじゃないかと恐れている。

 ……ま、なんとかならぁな!


 幸いにというか、旅路は「まさに観光旅行」であった。

 草食動物系の馬やら鹿やら羊なんかの獣人村へ立ち寄ったり、「猿村」ではウーゴニアスリータで「木登り」を見ていた奴らに見つかり、シェラがリベンジマッチ挑まれたり、「兎村」では、祥子さん(モルピス)の家族縁戚や知り合いとかいないかと思って探したら、祥子さん(モルピス)自身が結構な有名な武術家だったらしくて驚いたり。


 ……まあそんなこんなの、二週間ほどの旅路の後、やっとシェルニーの村、モーントニーへと到着した。


「……なんや、えっらい人増えてへんか?」

「魔導士っぽいのが多いな……ってかあれ、魔導士ギルドの支部じゃね?」

「ほんとだ……」


 数か月前、ここを出た時にはなかった、魔導士ギルド・モーントニー支部がある。海辺の村には出張所あったのに、なんでこっちにはなかったんだ?と来た当初は思ったものだが。

 まあ支部と言っても、二階建ての、ちょっと大きめの一軒家なのだが……しかし、見ていると、ちょいちょい人の出入りがある。しかも「人間」の魔導士っぽい。


「ほらー、シェルが宝島で宝箱見つけたじゃない?

 あれから少しして、ここに魔導士ギルド作ろうって話が出てねえ。

 ここから海岸への道も整備されて、あの宝島へ行く船着き場も拡張工事したって話よ?」


 ……シェルニーのおっ母さんの話によると、そういうことだそうだ。

 それでギルドと村長宅には、ライ・マーストやアークゥエスミィからの魔導士ギルド調査員が滞在中で、宝箱――「魔箱」の採取と調査・分類をずっとやっているそうだ。

 実質、魔導研究所のようなものらしい。ついでに島にも出張所が作られたそうだ――とはいっても、研究者が泊まるためだけの、山の中の猟師小屋のようなもので、常駐職員もいない掘っ立て小屋だ。


「ほらあの家、あれ宝箱の倉庫にしてるんだって」


 魔導士ギルドの隣に建っている石造りの家は、完全に魔箱専用倉庫にしているそうだ。

 ……とはいっても、魔箱をあんな雑な家に押し込めておいて、盗難とか大丈夫なんだろうか?


「ああ、それは大丈夫。

 ここに保管してあるのは、魔箱としては価値の低いものばかりで、中身が魔法――つまり、開けたら何が出てくるか解らないタイプが押し込まれている。他には最初から空いてた箱とかな。

 中身が魔法でも、漏れ出る魔力を測定して、使えそうなのはライ・マーストの本部へ即送っているしな。

 万が一持っていかれても、このテのマジックアイテムは、鑑定書がついてないと値がつかない。魔力を帯びているだけのマジックアイテムなんて珍しくもなんともないし、まして中身が魔法の箱はほぼスカだ。古物鑑定ができる相手なら、それくらいのことは知っているだろうしね」


 と、ギルド支部に話を聞きに行ったら、受付職員(人間)がそう教えてくれた。

 ……なるほどねえ。

 盗まれても、鑑定書がないと大した値もつかず、下手に開けても価値が棄損されたり自分に被害が及びかねないトラップボックスなだけで、魔箱自体は珍しいが価値はそれほどではない。

 だが、昔の魔道具という意味では、研究対象的な価値に満ち溢れているそうな。「魔法学術品」という扱いらしい。


 なのでここに出来たギルド支部は、旅の冒険者とか魔導士とかを相手にするわけでもなく、研究拠点として急ぎ設置されたようなものらしい。

 海岸の漁村の出張所だけでは業務が行き届かず、かといってあの漁村の出張所を拡大する場所もなく、それでもうちょっと内陸だが、街道も近いし人も多いモーントニーへ新たに拠点設置となったそうだ。

 そのお蔭か、モーントニーは魔箱発見以降、景気がいいそうだ。

 そりゃまあ、魔箱関連で外からやってくる冒険者みたいな連中も増えてるし、例の宝島以外はまだ未調査なので、そっちで何か見つからないか?と探し回ってる連中が結構いるんだそうだ。

 だけど、発見した時の状況が知れるにつれ、「欲のない研究馬鹿魔導士を一人連れてこい」というのが条件になって、周辺の魔導士ギルドで「魔箱探しに同行してくれる研究者求む!」という依頼が出回っているそうだが……研究馬鹿はすでに例の宝島に入り浸っているというオチだけが見えた。


 まあ俺たちは先に十分稼がせてもらったし、あとは好きにやってくれや。


 二日ほどモーントニーに滞在し、シェルニーが家族や村人に「お貴族様になったにゃし!」とかいろいろ自慢話をしている間、俺はもう一度海辺まで、例の宝島を見に行った。

 今、あの島は魔導士ギルドの管理下になって、漁師も上陸できなくなっている。

 漁師としては、あの島一つが入れなくなってもさほど困りはしないのだが、一攫千金でやってきた冒険者にとっては、なんとかしてあの島で魔箱を!と、船をどこかで調達したり無断拝借してでも渡りたい場所である。

 そのせいか、ここらの漁村では、船の窃盗事件が相次いでいるとかなんとか……物騒な話だ。それで捕まった冒険者も一人や二人ではないそうで。

 さすがに魔導士ギルドが夜間警備を出したことで、船の窃盗自体はほぼなくなったそうだが……「なんとかあの島に渡ることはできないか!?」と迫る冒険者が後を絶たないんだそうだ。

 まあ儲かる話となりゃあ、こういう面倒事もついて回るよね……ご愁傷さん。

 俺らはとっとと勝ち逃げさせてもらったからな!


 とまあ、優越感に浸りながら、モーントニーを出発。もちろん預けた魔箱も回収。

 馬車の定期便が、三日に一度から毎日通るようになったので、パン・セリンへ行くのも楽になった。


 とりあえずは、国境の町シュランベルへ。

 あの「怒られた町」かぁー……


「いやあれはあんたが悪いやろ」

「そういえば魔力は伸びたの? 増えてなかったらまた訓練再開しないと」


 増えたから! あの頃からしたら倍以上になったし!

 オーガとの戦争になりかけて以降、どんだけ実戦やったと思ってんだ!

 川渡るために訓練もしただろ!?


 だいたい、このステルスアーマーだって全く魔力使わないわけじゃないんだぞ。

 ステルス動作させると、魔箱の機能再現するのと同時に、魔力のアクティブノイズキャンセルが動作、ステルスアーマーから漏れ出る魔力を、小鳥一羽ぐらいに抑える。

 だが魔導士ギルドは、アーマーのみならず、着用者もステルス状態にして、さらに漏洩魔力を「小虫一匹」程度にまでされに絞った。

 その最後の詰めをやったのが、ベンノ氏のチームだそうだ。

 恐ろしい腕してんなあ……だが気功術のやり方でやれば、もっと楽なんじゃないかとちょっと思った次第。


 魔力を虫レベルにまで落として、風景と同一化してしまうという発想はいいが、実はステルス状態を維持してるとそれなりに魔力を消費する。俺の場合、魔法以外に戦う手段があるので気にしていなかったが、これで魔法をバンバン撃ちまくるビュスナみたいなタイプだと、すぐステルスが解除されるんじゃなかろうか、という危惧がある。実際、ビュスナもステルス性能についての説明の時点で、そのあたりは考えていたそうだ。

 要は、電気自動車に乗りながら車内でエアコンやらテレビやらガンガン使ってたら、すぐバッテリーの電気枯渇するやん?って話だ。

 そこいらへんの使い方や構造の改善案は、マシュさんとこへ行って検討してから、ギルドってかベンノ氏に提案、という形にしようと思ってる。

 俺が直で提案すると「またお前か!」ってさらに目ェつけられるし。今更かもしれんけど。


 そんなこんなで、多分今ならボートで坂下るぐらいなら魔力持つと思われる。

 まあそれ以前に、ボートに車輪つけて接地抵抗を減らすようにしたから、一人で方向転換も込みで下まで転がしていけるはず。

 これで登る方もできれば、魔導自動車として一応構造は完成するのだが……「動力」として確立するためには、俺の魔力では全く足りない。多分、キックボードのモーター付きのやつぐらいで平地を走るならできそうな気がするが、他人の前で堂々とやる気にはなれんな……まあ追々だ追々。


「おいてくよー」


 おおっと考え事してたら置いていかれる。


 まあ町の中程度なら、気功術で探せるんだけどな。




 ――そして、俺たちは出会う。




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