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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
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夜襲3 一瞬の選択


 ――という俺の目論見は、すぐに破綻した。


「こい、つッ――」


 ゴブリンリーダーの拳の前に発動した〈シールド〉が、〈雷神拳〉を、そしてビュスナの〈光弾〉も全て、ノーダメージで止めている。雷撃の放電が〈シールド〉の上を走り、威力が拮抗する。

 〈シールドバッシュ〉――という魔法ではなく、魔法の〈シールド〉を使って打撃効果を出すための「擬似魔法拳」。

 この技は、ゴブリンリーダーのような、魔法拳は知らないが魔法は使えるような亜人や怪物が使う技、と聞いている。本能的に、魔法拳に対抗するための技として、時折人型の敵対亜人が使うやつらしい。

 〈シールドバッシュ〉は、相手の攻撃を防ぐと同時に相手に対して「魔法障壁での攻撃」を仕掛けることになるため、魔法拳士も時折使う技ではあるが――ビュスナの〈シールド〉を破ったほどのナオの〈雷神拳〉を防ぐとなると、基本的な魔力自体の大きさがなくては出来ない芸当だ。

 てことは、こいつはリーダーで確定だ。ファイターは肉弾特化で、魔法を使わないからだ。


 ――その均衡が、破れた。

 ギャリインッ!と金属の弾かれるような音と共に、ナオが斜め上に吹き飛ばされた。


「このッ……!」


 ナオが空中で身体を丸め、着地に備えようとした瞬間。

 「何か」が、ナオを「上から」叩き落し――一気に、三メートルほどの高さから地面に叩きつけられる。


「ナオ!!」


 身体を丸めていたナオは地上でバウンドし、その後再び地面に落ちて倒れる。

 上を見ると――〈シールド〉がある!?


「ゴヒュゥ――」


 ゴブリンリーダーが一息吐いてゆるりと立ち上がり、右手を上げて――ヴンッ、と振り下ろした。

 上空の〈シールド〉が、ビュスナの上に叩きつけられる。そんな使い方ができるのか?


「く、あッ――」


 ビュスナは〈シールド〉に対して〈シールド〉で防御を試みるが、いかんせん魔力が不足している。

 ヤバイ――と、俺は地面から砂を握り、ゴブリンリーダーの顔へ投げつける。


「ブフォウッ!?」


 不意打ちだったようで、ゴブリンリーダーは目を押さえる。

 同時に〈シールド〉が消えて、ビュスナが崩れて膝をつく。

 ここで殺る!――俺はもう一度、ゴブリンリーダーに向かって走る。

 今度は目を擦っている腕、肘を狙って――斬!


「ウゴァァァ――――ッッ!」


 今度は狙い違わず、右肘の骨を砕く手応え。

 右腕が目から離れ、だらりと下がる。よし! これで棍棒も持てないはず!

 ――だがここからどうするか?

 俺の戦闘力は、この四人の中では最低クラス。攻撃魔法も、ナオやシェラみたいな機動力、パワー、技もない。

 こういったパワーモンスター相手には一番分が悪い――だが、それでも、ここで逃げる訳にもいかない。

 そう、ここでこそ俺の「奥の手」を使うとき。

 今さっき、こいつの〈シールド〉の使い方で、俺の〈絶対領域〉の使い方がもう一つ解った。

 〈絶対領域〉を発生させてから、「高速で移動させてぶつける」――目の前のこいつがやったあれ。

 〈シールド〉と違って、「見えない打撃技」としてピンポイントで攻撃できる!

 つまり――


「こうやればいいってことか!」


 拳の前に、〈絶対領域〉を発生させ――「せいりゃッ!」っと、数メートル先のゴブリンリーダーへ向けて、届かない正拳の空打ち。

 だが、〈絶対領域〉はグン!と伸びるようなイメージで、その形のままゴブリンリーダーの胸部へ命中。

 こう、「鉄棒で突くイメージ」だ。

 ――ゴブリンリーダーの身体が、押されたように後ろに一歩下がる。

 その鳩尾に、小さなアザ。領域の面積が小さい分、打撃が狭いエリアに集中して、貫通力のある打撃になる。

 そして、ゴブリンリーダーが前屈みになり、動きを止める。効いている証拠だ。

 いける!――俺は、続いて〈絶対領域〉を連打する。顔、腹、膝、足先、目、咽喉――いける! ゴブリンリーダーは手も足も出せず、打たれるがままによろめいているだけ!

 ――だが、俺は調子に乗っていた。

 もう一度腹に、と発射した〈絶対領域〉が――

 ガギイィン――〈シールド〉に阻まれた!?

 だがそれは一瞬だけで、〈絶対領域〉は〈シールド〉を貫き、破壊した。

 よし、魔法にも通じる! こっちの方が威力は上だ!

 俺は再度、顔面へ向けて〈絶対領域〉を打ち込もうとした、そのとき。


 ゴブリンリーダーが、左手で棍棒を水平に振り回してきた――それと同時に、〈シールド〉が上から叩きつけられようとしている。


 同時攻撃、だと――俺は一瞬、どっちを優先すべきか迷った。

 棍棒を防いでも、〈シールド〉が叩きつけられる。

 〈シールド〉を防げば、棍棒で叩きのめされる。

 どっちだ? どっちを止めるのが正解だ?


 正解は――後ろに跳んで、棍棒と〈シールド〉を避けつつ、本体へ攻撃。

 もしくは、後ろに避けつつ棍棒を避け、〈シールド〉を〈絶対領域〉で破壊。その後反撃。


 ……なのだが、そこまでの判断を下すまでに、避けられないところまで二つが迫っている。

 ――どっちだ!?

 ここで間違えば、「死」――


 ぞわり、と悪寒が走る。


 また――死ぬのか?


 生き残るには、どっちを潰す?


 どっちだ?


 どっちだ!


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