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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
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夜襲2 指揮種


 シェラの言葉に、ビュスナはすっかりいつもの調子を取り戻したようで、〈光弾〉を三発、待機状態にして〈灯火〉代わりにする。


「あと、リーダーがいるならゴブリンメイジの可能性も忘れるなってさ。対魔法戦になるかもしれないから注意しろって」

「望むところよ。返り討ちに」


 ――と、ビュスナが〈光弾〉を一発、闇の中へ撃ち込んだ。


「してやんよ!」

「ピギュアアアアアア!」

 〈光弾〉が命中した瞬間、暗闇にビュスナの七割ぐらいの背丈の、灰色の影が浮かび上がったが――それは〈光弾〉命中と同時に叫んで、地面を転げまわっている。


「おっと、一発じゃ足りないか――」


 シェラが、這って逃げようとする影に跳ぶような二歩で追いつき――ショートソードを突き立てた。

 ピギッ、と小さな叫びを上げて、その影は動かなくなった。

 ……こいつの動き、躊躇も何もないな。相当現場慣れしてるって動きだ。

 「あの話」も強ちデタラメじゃないのか――って今はそれどころじゃねえか。


「ここまで入り込んでるってことは、相当多いね。他はやられてないかな」

「ここでやられるようなヌケサクは、どうせいつかやられるわよ」


 と、ビュスナは二発目の〈光弾〉を撃つ。少し離れた位置で、同じような影が「ギャッ!」と叫んで倒れる。

 ロクに見えてもないのに気配だけで撃っとるんか……伊達に自信家しとらんなこいつ。


「そろそろここいらも戦場ってことだね」


 シェラが改めて、ショートソードを逆手に構える。


「ケン! 明かり!」


 ビュスナの声で、俺は数少ない使える一般魔法の〈灯火〉を発動させ、鼠車の幌の上あたりにいくつか設置する――これで周囲の状況がわかるようになる。

 薄明るくなった周囲には、数体の灰色の小人――ゴブリンが、俺たちを包囲するように集まってきている。


 ゴブリン。茶色、灰色、黒褐色の、「小鬼」などとも言われる亜人。強欲で、繁殖力も高く、五年ほどで成体になる。身長は成体で120センチ前後、知性も多少は備え、人類に敵対する種族。要は「カラスやサルより知恵のある害獣」といったところだ。主に夜行性なのは、赤外線視力があるからだ。

 どうやら群れが拡大して、こちらに奇襲を逆に仕掛けてくるだけの知能を持ったリーダーが生まれている。推定数からすれば、複数のリーダーが生まれている可能性がある。下手をすればリーダーのさらに上、ゴブリンロードクラスがいる。

 明朝からの調査でそれが判明していれば、規模にも拠るが、部隊を再編成してからの掃討戦になるはずだったのだが――先に襲撃されてしまったのでは、こちらも応戦せざるをえない。

 〈灯火〉をもう一つ隣の鼠車へ投射し、視界を広げる。

 焚き火のあたりでも、誰かが戦っているような影が動いて、乱闘しているような音も響いている。闇の中でも時折「魔法発動の光」が見える。


「よっしゃほんなら、ブッ飛ばしたったらええねんな!」


 ガキン、とガード付きの篭手を装備したナオが、両拳をぶつける。

 ビュスナが、〈光弾〉を一気に二十発発動。周囲が明るくなる。

 シェラがその光を避けるように、ふっと闇の中へと動いた。


「いーっくでぇおっらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!」


 ナオが怒鳴りながら、一気にゴブリンに迫る。

 同時にビュスナが〈光弾〉を周囲のゴブリンへ一斉投射。ナオより一足速く、ゴブリンを撃つ。

 ゴブリンの絶叫が響いたところへ、ナオの拳が到着する――鈍い音と共に、動きの止まったゴブリンが的確に重い一撃を食らい、宙を舞い、地面を転がる。

 シェラの刃が闇の中で光る度、「グギャ」とか「ピギュッ」とか声が上がる――ゴブリンの断末魔の叫びだろう。やっぱり手練のようだ。

 ――って感心して見てるだけじゃしょうがない。俺も出来ることやらんと。

 ナオが打ち倒したゴブリンが生きているようなら止めを刺し、ついでに鼠車付近に次々〈灯火〉を点けて視界を確保。途中、無傷のゴブリンが現れ、そいつと一戦交え、なんとか倒す。もうグロいとかアブナイとかなんとか、そんな考えは頭の中からすっぽり抜け落ちていた。

 ……無我夢中でゴブリンを複数倒したところで、シェラが背中を合わせてきた。


「そっちはどう?」

「ナオがやったの以外で三匹倒した。ケガはなんとかしないで済んでる。そっちはなんか、バッサバッサとなで斬りしてたな」

「まあねー。サイレント・キルってのはスカウトの得意技だし、暗闇でも行動する訓練もしてるからね。ゴブリンごときならこっちが有利さ。ただ連中、複数で連携とってきてるから要注意だよ」


 ……「どこで訓練した」とは言わないが、やはり相当な腕だとわかる。

 と、そこでビュスナの〈光弾〉が、近くで連射された。また発見したらしい。


「そろそろあいつも魔力がキツかろう。合流して戦った方がいいな」

「だね。やっぱりリーダーが出てるせいか、やけに強い気がするし、ロードも可能性あるね」

「マジか……だったら余計に単独行動は危ねーな」


 俺とシェラがビュスナの方へ走って行くと――


「ぐっはッッ――」


 ナオが飛んできて、地面で一回転した。着地失敗?

 いや――「何かに吹っ飛ばされた」という感じだ。

 ナオ本人は、一回転した後すぐに起き上がったが、それでもダメージが大きすぎたか、膝をつく。


「ナオ!」

「……気ィつけや! あいつ、多分……リーダーやで!」


 咳き込みそうになるのを抑えつつ、ナオが声を出す。

 その視線の先には――薄明りの中に立つビュスナ、何体かの倒れたゴブリン、そして。

 人間の身長ほどもある、巨大な棍棒を引きずっている、ビュスナよりも頭二つ分以上も大きい、異形の巨大ゴブリン。

 デカい――通常のゴブリンの倍ぐらいの背丈。二メートルを超えている。身長だけでなく、全体のサイズそのものがデカい。短足で腕の長い、小太りな人間のような体型だが、腕の太さはビュスナの腰ほどもありそうだ。相撲取りをさらに太く、筋肉を増したような、大きく頑強そうな肉体。吐く息までもが、「巨大な獣」のそれに似ているように思える。

 リーダーになった個体は、知性獲得と同時にゴブリン兵を指揮するに相応しいサイズへと肉体までもが急成長する、と聞いていたが――これは成長どころか「進化した別種族」に見える。ポ○モン進化形? いや、マジモンだわこいつ。


「――ゴアアアアァァァァァアアアアアッッッッ!!!!」


 ゴブリンリーダーが、雄叫びと共に棍棒を水平に振り回す。その先には――ビュスナの〈シールド〉。

 硬い木が打ち合わされた鈍い音が響いたが、ビュスナの〈シールド〉は維持され、棍棒が斜め上に弾かれる。


「ンにゃろぉッッッ!!」


 バランスを崩したゴブリンリーダーへ向けて、ビュスナが数発の〈光弾〉を一気に発動、発射。

 その全てが、ゴブリンリーダーの顔面に向けて命中。

 シェラが直後、動きの止まったゴブリンリーダーの足と腕を踏み台にして駆け上り、死角の真上から頭に剣を突き立てようと飛ぶ――が。

 ギンッッ――剣先が、「魔法障壁」で止められている。さっきの〈光弾〉もこれで止められたのか?


「なっ――」


 驚いたシェラを、〈シールド〉の下から、ゴブリンリーダーが見て――「笑った」。

 シェラが〈シールド〉を蹴って離れようとした瞬間。

 ゴブリンリーダーが棍棒を真上に振り上げ、シェラを打った。

 空中で打たれた身体が、暗がりの地面へと飛んでいき、地面で受身も取れずに転がる。

 俺は咄嗟に、ゴブリンの右膝を狙って斬りつける。

 肉が裂ける手応え――だが、膝の上を少し切っただけで、大した傷ではない。

 「硬い」――それが印象だった。雑魚ゴブリン兵のような、柔な肉体ではない。

 天然の、分厚い革鎧を斬ったような、そんな感覚。

 が、効いていなかったわけではない。

 その一撃で、ゴブリンリーダーが右へ崩れるように倒れる。筋を切ったわけではないが、その場に倒す程度には効いたらしい。


「こんのぉッ!」


 ビュスナが〈光弾〉を発動させる――が、もう魔力が限界なのか、四発しか発生しない。

 それでも、〈光弾〉はゴブリンリーダーへ向けて撃ち込まれる。


「任せいやッッ!!」


 ビュスナの上を飛び越えるように、ナオが〈雷神拳〉を纏い、倒れたゴブリンリーダーへ一撃加えようとする。


「ていりゃああぁぁぁぁぁ――――ッッッ!!」


 ――振り下ろすナオの拳に合わせるように、ゴブリンリーダーが倒れたまま拳をぶつけてくる。

 だが、そのまま打ち合えば、〈雷神拳〉の効果で電撃スタンダメージがかかり、ほんの一秒二秒ほどでも動きが止まるはず。そこで奴の目を狙えば――なんとか倒せる!


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