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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
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少女ファイト

スポーツではなく、ガチの。


「始め!」


 とコールして、俺が下がると。


 ビュスナが一瞬で、〈光弾〉三発を発動する。

 速っ! え、こんなん速かったっけ?


 が、ナオはそれ以上に速く、ビュスナとの距離を一気に詰め――待機中の〈光弾〉を全て「拳」で破壊した。


「!」


 ありえねぇ――魔法を拳でぶっ壊すとか! なにこのこつよーい!

 次にナオは左の回し蹴りで、ビュスナの胴に一撃くれる――はずが、これは〈シールド〉に阻まれる。


「お」


 ナオは意外そうな顔で、すぐさま一歩下がる。ビュスナもそれに合わせて、間合いを広げる。


「……あんた、意外にやるじゃない」


 いきなり魔法を叩き潰されたビュスナは、動揺を見せまいと強がった口を叩くが、どう見てもお前の方が不利だろ。


「そういうあんたもな。そんな速よ魔法発動できる初心者なんておらんで?」


 そう言って笑うナオに対し、ビュスナも一応武術的な構えをとってはいるが、付け焼刃なのは見え見えだ。


「高速発動はうちの親父直伝なんでね。スピードで肉弾系に負けないようにってね。

 で? あんたこそ、素手で魔法叩き落すとか、そんな初心者聞いたことないわよ?」

「これは魔法拳士やったら普通にやれるで? とはいっても、そこまで高速にやられると、ちいっとばかし厄介やなぁ」


 ナオは言葉通りに厄介だ、とは思っていないだろう――笑みがそれを表している。


「せやったら、遊ばずにいこか」


 あ、これはナオさん、なんか奥の手隠してますね?


「《雷神拳》」


 ナオの右腕に、発光する紋様が浮かび上がる――魔法拳士特有の、身体に刻み込む魔法拳制御式か。


 武道家、と一口に言っても、レベルがいろいろある。

 一般に「一人前」とされる武道家は、「魔法拳士」であることが多い。

 武道家は一般に素手で戦うが、世間で遭遇する怪物の中には、触れるとヤバい毒持ちとか、触れたくないゾンビのような腐ったやつとか、素手ではキツい相手もいる。

 そういう奴を相手にするためには、「魔法拳」という遠隔攻撃武術が必須となる。基本、攻撃・防御・回復の三つだけだが、これで対処できる怪物の幅がグンと増える。

 魔法拳を使えるレベルの武道家を、特に「魔法拳士」と呼ぶのだ。


 そして、ビュスナが使用した〈光弾〉には、基本バリエーションとして、炎弾、氷弾、雷弾、礫弾、風弾の五種が含まれる。これは魔法拳士でも使える。

 だが、〈光弾〉を扱えるということは――ナオは最低限とはいえ、「魔導士」でもあるということ。


 つまりナオの奴は、ある程度熟練した「魔法拳士」でもある――初心者にしては、スキルが高すぎる。

 ビュスナの親父様に聞いたことがあるが、雷撃系の光弾である〈雷弾〉は別の使い方があって、自分の身体にまとわせると身体能力が一時的に上がるらしい――電気で神経系を活性化させて、反応速度を上げるとかいうやつだ。

 だがそれをやると神経系にも筋肉にも負担がかかるので、当然低レベルな冒険者がやるような技ではない、とも聞いている。あんまやりすぎると、脳にも電気的ダメージがいって「ほんまもんのアホになる」危険性もあるとかなんとか……怖っ。電撃ドランカー?

 でもこれって、「反応の高速化」+「電撃ダメージ」っていう多重効果があるので、これを得意とする有名な魔法拳士もいるとか……そいつアホちゃうよな?

 ナオの身体に、放電がまといつく――これで反応速度を向上させて、一気にビュスナを叩き潰すつもりだな。

 さてツン娘はどうするんや――と思ったら。


「――それでやられると思った?」


 先ほどと同じく〈光弾〉で迎え撃つ、という選択にはなったものの――その数が桁違いだった。

 空中に浮かぶ〈光弾〉の数は、ざっと三十発あまり――それを、全てナオにロックオン、しかも半球状に立体展開している。


「これだけの数、全部叩き落せるかしらねえ?」


 うえッ、なんじゃこりゃー! 一瞬でこの数発動とか、ありえへーん!

 「ほえー、すっごーい」と、隣でシェラも驚きの表情。

 そらそうだ、初心者の多重発動なんて、せいぜい最初やったみたいに三発もできれば上等。親父様、ハンパねえ鍛え方してるな!

 この数と範囲じゃ、〈雷神拳〉で反応速度上げても全部は落せないだろ……えげつねえ! ○ィオ様か!


「――叩き落したったらええねんな!」


 ナオが地面を蹴ってビュスナへ一気に迫る。

 そこへ、〈光弾〉が一気に集中投射。

 ナオの拳が、一気に迫る〈光弾〉を連打で次々破壊していくが――この数では間に合わない。

 爆風が、ナオを中心に吹き荒れる。

 おそらく最低でも七・八発はくらっただろう、爆発光の中からナオの姿が現れる――が、そのまま倒れるかと思ったら。


「――ンッッ!」


 ビュスナへ向かって突進し、拳を打ち込んでいた。

 ビュスナも〈シールド〉で防御していたが、それを易々打ち砕き、拳はビュスナの腹にズドンとめりこんだ。


「……ッッ!」


 さすがに、拳士の拳+電撃ダメージをまともに受けて、ビュスナが吹っ飛び、後ろに一回転して倒れ伏す。

 ナオは、一撃食らわせたその場でビュスナを見下ろしていた――と思ったら、自分も勢いで転がり、倒れていた。


「うーん……これはドロー、だねぇ」


 シェラが倒れた二人を見て判定を下したので、俺もそれに同意。最終的に二人とも、顔地面につけて倒れてるしなー。

 誰かさんは先に一回転してたけど、それ言うと後でうるさいから言いませんー。

 これ以上やらせたらガチ殺し合いだわ。

 てか今のも十分「()る気満々」だったろお前ら!



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