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5・道中ダイジェスト

遅れて申し訳ありません!

次話は3日以内に投稿予定です。

以降は週2話ペースで頑張りたいと思います(あくまで目標)

 ナメック星人が気を消費することで手足を生やせるように。

 人間もまた、魔術を以てすればニョキっと生やせるらしい。

 らしいというか、実際にメアレンは生やしておられた。

 生えてきた部分が他より色白で、いかにも真新しい感じの肌を見て、これほど効果的なスキンケアはないと戦慄した。どこに戦慄しとんねん俺。


 ともあれ、メアレンはすっかり全快したようだ。

 快気祝いには、神秘の球体を魔術師の弟子に迎えられる権利を贈ろうと思う。

 よ、喜んでくれるかなあ?

 ――その想いは、バレンタインデー前日にあくせくとチョコを手作りする乙女の気持ちに似ていた(多分)。



 ***



 まだ魔術を教わってない――話を切り出してすらいねぇ!――というのに、メアレンが国に帰ると言いだして困った。困りんした。飼い狗に手を噛まれるとはこのことである。

 だがまあ、問題はすぐに解決した。俺たちの向かっている国と、彼女の帰る国がたまたま同じであったため、引き留めることができたのだ。


 あとは魔術の指導者メンターとなってくれるよう交渉するだけだが。

 今から話してみるけれど、安心してほしい。

 次のモノローグに『交渉は失敗した』などという一文は存在しないだろう。



 ***



 交渉は失敗した。

 なんということだろう。「魔術は秘されたものであらねばならない」だとかなんとかほざいていたが、実に腹立たしいことだ。


 と、いうような対外的態度をとることを約束に、秘密裏に教えて貰えることになった。もう一度繰り返す。教えて貰えることになりました。てへコロ♬


 本当は絶対に教えちゃいけない、発覚すれば当代の守護者とかいう魔術師のトップが口封じにくる……と言っていたので、秘密を守ることは勿論、公の場で魔術を使わないことを誓う羽目になったが、まあいい。今から俺は魔術師のたまごだ。


 それにしても、危険を被ってまで教えてくれるだなんて気前がいいねぇ。

 メアレンの所属していた魔術結社【星見の塔】とやらは、悪用されないように広めちゃ駄目ってなってるらしいが、メアレン自身はそのスタンスに反対らしい。

 竜などの脅威があるのにそんな悠長なこと言ってる場合じゃない~だの言ってたけれど、なんにせよ教えてくれるなら有難いことだな。



 ***



 いきなりトラブル発生である。

 魔術を見せてくれるというので見せてもらおうとしたら、俺に魔術が効かないことが発覚した。

 初めは耐性ひゃっほいと呑気に喜んでいたのだが、話は思いもよらぬ方向へと向かい、魔術を受容するアストラル体との接続神経(何それ)が燃え朽ちており、魔術が使えないことが分かった。

 なんでも、既に当代の守護者と思しき人物に封伐され、魔術師として殺されてしまっているらしい。


 は?…………ハッ⁉

 その下手人には心当たりがあった。

 豆腐界隈にて10億ベリーの懸賞金がかけられている、恩を仇で返すウーマン。

 ――レストロオセである。

 そういえば奴も魔術師だったな。師メアレンに事の子細をお報せしなくては。


俺「こんな悪魔がいたんですよ~」

メアレン「な~~にィ~~⁉」

(実際の台詞とは異なる場合があります)


 メアレンによるとあのアマがふりかけたサツマイモは殺魔芋といい、守護者のみが持っている魔術師追放用のブツだそうで、一度食らったらどうしようもないのだとか。


 正直複雑である。魔術が使えないのは悲しい。悲しいが、魔術を受けつけないだなんてすげえ主人公っぽくてよぉ……。俺の二つ名が幻想殺しになる日は近い。


 それはともかく、なぜレストロオセは魔術師じゃない俺にそんなことをしたのだろう。

 奴が言ってたこと――チッス(挨拶)などの文化を俺が広めたこと――をメアレンに説明すると、別に悪いことじゃないとは言ってくれたが、そうとなるとますます襲われた理由に心当たりが無い。

 メアレンも分からないらしく、レストロオセと同門らしい彼女に分からないのなら俺に分かるはずもない。

 通り魔に刺されたようなものだと思うことにした。



 ***



 魔術が使えなくても、知識を得ることはできる。

 この機会に知っておこうと、魔術に関して教えてもらうことにした。


 教えて貰って思ったんだが、この世界の魔術は何と言うか、華が無い。

 便利ではあるのだが、幻想を操る類では無かった。

 元々持っている魔力の用途を拡張するだけなので、ただの人間ではメラゾーマどころかメラすら無理なのである。噂に聞く焔竜メルトバーズみたいにデフォで火を放てる生きものなら話は別だが。

 ファンタジー世界のくせに変なところでシビアっすわ。

 だがまあ、魔力さえ都合がつけば、自由度は高そう……かな?



 ***



 おったまげである(たまだけに)。

 なんと、メアレンに俺の真名が知られてしまっていた。

 原因は二つ。ひとつはクレイジーボールが偽名だと分かりやすすぎたこと、もうひとつが致命的で、アールちゃんが俺をマロゾロンドだと指摘した上に、俺の部屋の扉に『まろぞろんどのへや』と書いてあったからである。

 まぬけとはすなわち、俺のことを指すのだろうと、しみじみ、ね、思いました。


 マロゾロンドは正体不明は正体不明であることがアイデンティティであり、中身が周知されるのはとってもよろしくない。どれぐらいよろしくないのかといえば、…………例えが出てこなかった。死ね!


 とにかく、このことは内緒にしてくれないかとメアレンに頼み込んだら、普通に頷いてくれた。さらに新しい偽名までわざわざ考えてくれることに。

 というのも、魔術師は真名を握ることでその者の力を縛ることができるらしく、偽名を使うのならちゃんとした名を用意すべきとのこと。


 そんなわけで、球体でいる今だけ【ドルネスタンルフ】と改めることになった。

 みんなきいて~! 俺、外ではこの雅号ペンネームで通すから。【ドルネスタンルフ】、覚えてくれよな!

 え、意味? 『卵の中の卵(まんまる)』って意味らしいぜ。おとこの中のおとこみたいなカッケー名前だろ? ああ、気に入ってる!


 余談だが、ほとんどの人が偽名を使っていると、この時初めて知った。

 あのアールちゃんですら偽名とは……。

 姫さんのようなイイトコ出の人はそうでもないらしいが、それはそれで、なぜ偽名を使わないのだろうか。

 なんかルールがあるっぽいが、それを聞こうと思っても恐ろしいほどに話が噛み合わなかったというか、皆が難聴主人公のようになってしまって聞けなかった。異様な雰囲気で怖かったのでもう触れません。はい。



 ***



 次に向かう国、リヨンへの道中では、メアレン以外とも交流を深めた。

 姫さんとはH(ハムハム)の代わりに毎晩タマをナメナメしてもらったり、俺を焚火の薪代わりにしてくれたシュさんを火だるまにしてやったあと仲直りしたり、ティーゲンに駒と盤を作ってもらってイク兄さんとチェスをしたり。


 また、刺客襲来イベントが二回ほどあった。

 一回目はウドゥドゥに接近していた六人ほどの小集団で、これはウドゥドゥが邪視ファシネイトで全滅させたらしい。刺客が来ていたなんて露知らず、後からシュさんに教えてもらったため見ることは叶わなかった。見たかった……。


 二回目は水を確保するためにウドゥドゥから降り、川に寄った時のことだった。

 こちらの布陣は無口のピスタレッロ、エセドワーフのティーゲン、馬鹿三兄弟の長男ワンさん、そして散歩気分でついていった俺。

 対して相手はたった一人、見るからにアサシンの風体である。


 こっちの男どもは足場の悪い水場におり、手は桶を掴んでいたということもあって隙だらけであった。護衛を減らす好機と見たのだろう、両手の鉤爪を怪しく光らせる刺客! しかし、すみっこで転がってた俺にはてんで気づいちゃいなかった。

 マヌケすぎワロタ。コロコロ~~ ドガッ

 転がり攻撃で敵を撥ね、倒れたところを過重力生起(フォース・グラビトン)を発動しながらゴリゴリと轢いてやったら即お陀仏。という顛末だ。


 なお、これらの刺客にはメアレンが戦ったという邪視者アトラクターの幼女は含まれていない。

 現れた際には同じ邪視者のグレーターセカンドをぶつける手筈となっているが、邪視者同士の戦闘を見たことがないため地味に楽しみである。早くこねぇかな。



















 結局来ないまま、俺たちは目的地――都市国家ポリスリヨンに到着したのであった。

・ドルネスタンルフ

De lune stin l'oeuf 猫フランス語。完全なる月を意味する。

世界根ロディニオに月は無いが、メアレンは星見の塔で猫の国の知識を修めているため月を知っている。

豆腐球体の類を見ない丸さっぷりにこれを名付けた。

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