5・アストラルの導き
そろそろと言われ、はや半日。ようやく目的地に到着したようだ。
視界いっぱいに広がる壁が見える。あれは言うなれば"国境"だ。あの壁の内側には都市がまるまる収まっているはずで、それが都市国家リヨンの全容だろう。
前世で領域国家に慣れ親しんだ身からすると、国と言うには小規模に思える。
逆に、ゲームに慣れ親しんだ身からすれば、デカッ! 国デカッ!って感じ。
ハリケーンウインドも同じく壁で囲まれていたが、こちらは国と称するだけあって規模が全く異なる。この威容、高く広いこの壁を、重機の無いこの時代によく作れたなと感心するばかりだ。
「ゆくぞ」
神輿のように玉座ごと騎士に担がせるという、一周まわってハイセンスなムーブを敢行する姫さんをともない、俺たちは徒歩で門へと向かう。
普通は馬車ごと門をくぐるのだろうが、ウドゥドゥはデカすぎて通れないから少し離れたところでお留守番だ。
門の近くまで来ると、そこには混沌とした光景が広がっていた。
数多の馬車、商人や旅人、冒険者らしき者たちが門に押し寄せてギャーギャーと喚いている。それはまだいいとして、リヨンから逃げるように全力で遠ざかっていくおかしな一団も目に入った。
何だありゃあ、とコロコロ転がりながら疑問を呈すと、
「ウドゥドゥが近づいてくるのを見て、襲われると思ったのだろう。このようなことは頻繁にある」
とシュさんが苦い顔で教えてくれた。
なるほど、納得だな。巨大怪獣が近づいてきてボケーっと突っ立ってる方がおかしいもんな。
しかしこの混雑、これじゃあ中に入るのに時間かかりそうだぜ。
どうにかならないもんかね?
そんな俺の思いにリンクしたかのように、玉座に座る姫さんは呟いた。
「邪魔だな……ドレイク」
「はっ」
姫さんの言わんとすることを察したイク兄さんは、群衆に向けて吠えた。
「道をあけよっ! 道をあけよっ! 見ての通り、高貴なる御方が通られる。邪魔立てすれば、分かっているな!」
結果、モーゼが海を割ったかのように人垣が割れ、道がひらけた。
なにこれ、気持ちいい……。
「殿下」
「うむ」
かくて俺たちは進む。待ち時間は驚異のゼロであった。
ヒューッ! さすが我がマスター! 見事な権力行使、恐れ入るぜ!
***
「こ、これはハイダルマリクの姫君…………おや?」
門番Aは畏れおおいといったふうに深く頭を下げた後、視線を横に向かわせて不思議そうに眉を上げた。
「そちらにおられるのはメアレン殿?」
「ショーン」
ふっと柔和な笑みを浮かべるメアレン。どうやら門番とは知り合いらしい。
ま、ここはメアレンのホームなので何の不思議もないな。
「リヨン陛下のもとへ?」
「いえ、例の魔剣のもとへ案内するの。でも、そうね。私は後で顔を出すと思う」
「分かりました。兵長に伝えておきます」
終わった? じゃ行こうぜ。コロコロ~~。
門を通過する最中、複数いる門番たちの視線が見るからに俺に集中しており、めちゃめちゃ怪訝そうな顔をしていた。けれど、コロコロ転がっていたのが姫さんのすぐ傍だったためか何も言われなかった。
姫さんといればストレスフリーだな。
これが、権力か……ククク…………。
***
「おお……城が見えるやんけ」
門の先には中世っぽい景観が広がっていた。
往来の激しい大通り、並ぶ店々、奥の広場に獅子の銅像。
更に視線を遠くにやると城が見える。城ですよ城!
男ってやつぁそれが建物にしろ何にしろ、デカイってだけでロマンを感じちまうからな。お城なんてもう、最高にキャッスルだぜ!
そして男ってやつぁ、デカイ物が粉砕されるのにもロマンを感じちまう。
急に隕石が降ってきて、あの城を跡形もなく吹き飛ばしたらさぞ迫力があるだろうな。降ってこねぇかな。【降ってこいや】!
まあそんなこと起きるわけないし、起きなくてもいい。
ただそこにあるってだけでもロマンだよお……。
「ドルネスタンルフ、勝手に城の方に転がらない」
「いてっ」
「エクスカリバーがあるのは納豆林の群生区画。こっち」
ロマンに惹かれ、城にコロコロと吸い寄せられていたらメアレンに蹴られた。
ちっ、師匠ヅラしやがって。調子こいてんな。
俺は権力を持つ姫さんのマブダチなんだぞ。俺が姫さんに泣きついたらどうなるか分かってやってんだろうな? ああ゛ん゛?
へっ、罵倒は心の中だけですましといてやっよ。次は無ぇっぞ!
「む?」
突如、不思議がるような声。姫さんだ。空を見上げている。
俺もつられて見上げると、白く輝く点が見えた。なんだあれ?
なんか、点が徐々に大きくなってるような?
あ、消えた。消えた……何が?
はて、空を仰いでどうしたんだい俺よ。プレステは降ってこないぞ!
おっと、ボケっとしてたら遅れちまうぜ。ささ、納豆林に向かいましょ!
……納豆林て何やねん。もう少し真っ当なファンタジー世界が良かったな……。
***
「やあ、新顔だね。君も挑戦しにきたんだろ? 僕はね、この国に居を構えて二十年はここに通い続けてるのさ。毎日鍛えて、毎日抜けるか確かめにいく。本当だよ? なんなら直接剣に聞けばいい、ギュスターヴは毎日来ているかってね。あいつは喋る剣だからね、よほど喧嘩腰でなけりゃ答えてくれるだろうさ。おおっと、僕はもう帰らせてもらうよ。抜く素質があるのは僕しかいないって、あの剣がうるさいからね、今日も鍛えなきゃだ! ハハ!」
俺たちの後ろにいた見知らぬ冒険者風の男が、ヤバイ奴に絡まれててワロタ。
良かったあ、俺たちじゃなくて。一度俺たちに絡もうとしてたけど、姫さんの高貴なるオーラがそれを寄せ付けなかった。権力パワーサイッキョ!
ヤバイ奴が去った後、絡まれてた男が露骨に唾をプェアッ!と吐いててウケる。
納豆の生る納豆林の並木道を進むと、ひときわ大きい納豆林が生えた丘陵と、そこに続く長蛇の列が見えた。
また周りにはたくさんの屋台が並んでおり、何を出しているのかと思えば納豆のようである。どこどこ産の何年物と、まるでワインのように販売されていて馬鹿みたいに思うが、実際 実った土地と発酵年数で味と粘りに違いがあるのだそうだ。
ここに来ている者たちはエクスカリバーを抜きに来ているわけで別に納豆のためにきているわけじゃないだろうに、それでも屋台があるということはそれなりに売れているのかもしれない。
って納豆はどうでもいいわ! 剣はどんなだ?
待機列のせいで見えない……。
これ、もしかしなくても待たなきゃならんのか?
どこの人気アトラクションだよ。テーマパークかよここは。
あ、そうだ俺、優先入場権持ってるじゃん。
――権力という名のな!!!
「ライオネス!」
「うむ。ドレイク!」
「はっ。道をあけよ道をあけよーー!!」
かくてモーゼロードが拓かれてゆく。
フハハハハ、これが権力! 暴力を振るう必要すら無いとは!
ジュイス、奴らをどかせ! マローシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる、どけ‼
俺は心の中でしこたま調子に乗った。タマだけに。
心の中でだけなので何の問題もないはず――――だった。
スゥウ
突如、球体から透明のエネルギーが豆腐の形を成して複数現れた。
「えっ、おっ、お前ら!?」
[・∀・][・∀・][・∀・][・∀・]
[・∀・][・∀・][・∀・][◉◎◉]
団員たちのアストラル体が勢揃いだ。
青く透明な姿は、ルークスカイウォーカーを導いた霊体に酷似していた。
ミスターポポみたいな新顔が混じっているのはこの際無視しよう。
[・∀・]「ぷるぷる(ダンチョウ ダンチョウ)」
「なんだよみんなして……」
[・∀・]「ぷるぷる(ゾウチョウ ヨクナイ!)」
「はっ!?」
なんてことだ。俺は増長していたのか⁉
言われるまで全く気が付かなかったが、言われてみれば先ほどまでの俺はどうかしていた。
今なら分かる。権力に憑りつかれていたんだ‼
「お前ら……うう……お、おれ……すまね……俺……反省ぃい!」
[・∀・]「ぷるぷる(ダンチョウ イイネ!)」
俺の反省は30のいいねを貰った。フォロワー数30でこれなら快挙だ。
スゥウ
そして団員たちは、未だ癒えきらぬ球体に戻っていった。
……俺は素晴らしい仲間に恵まれている。
みんな、俺の記憶からウェブ漫画『胎界主』やウェブ小説『アンドロギュノスの左手』などを引き出して鑑賞していた途中だったろうに、俺のためにわざわざ中断して駆け付けてくれたんだ。
その想いに応えるために、早速行動に移さなきゃな!
「ライオネス、皆……すまない。列、後ろから並びなおさないか?」
「マロ――ドルネスタンルフ、どうしたというのだ?」
「割って入るのはよくないと思ってよ」
「なぜだ?」
フ、そこで分からないところが姫さんらしいぜ。
権力ってのも一長一短だな。使うのは気持ちいいけど、度をこせば人間性を捧げちまうみたいだ。俺はもう溺れないように努めよう。そして溺れてる奴がいたら手を差し延べるようにしよう。
「『自分がやられて嫌なことを相手にするな』だよ、ライオネス……」
「そのような考え方が……ふむ。十全に理解できぬが、承知した。退こう」
「ありがとうマスター。さ、俺と一緒に後ろへ前進だ!」
――Fooooo!! パチパチパチ!!
モブたちが謎の拍手喝采をあげる中、俺たちは最後尾まで下がった。
この日、仲間たちのおかげで俺の精神年齢は1上がった気がした。
ハッピーバースデー、ボク!!
・豆腐戦士団(No.が確定している個体一覧)
Ⅰ[・∀・]主人公 備考:顔普通
Ⅱ[´∀`]グリュッセンハイド 備考:陰湿
Ⅲ[ ⊙Д⊙]ビックラコキオ 備考:頑張れって感じのデクオ
Ⅳ[ ՞Å՞ ]タマ 備考:癒し
Ⅴ[⁽i⁾∀⁽i⁾]なんと誤射精・雲のジュウザ 備考:興奮すると汁が飛び出る
Ⅵ[◔◞౪◟◔]ティドロソフ 備考:大罪スキル【怠惰】保有
Ⅶ[ᛋ・∀・]メテ 備考:【ルーン】魔力保有
Ⅷ[・∀・ᚘ]ユンデ 備考:【オガム】魔力保有
Ⅸ[◉◎◉]ミスターポポ 備考:ドラゴンボールにドハマり中




