表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/43

4・まだインフレする

 レースもいよいよ後半戦に突入だ。

 そんな中、俺たちの行く手には暗雲が立ち込めていた。

 比喩ではない。リアルに黒い雲が、目一杯広がっている。

 先ほどまで晴れやかな空だったはずが、ハザアレと戯れていたほんの一瞬のあいだにこうなっていたのだ。


 こんなことが自然に起こるとは思えない。

 何だか雲行きが怪しくなってきたぜ……これは比喩ね。


 さて、どうしようか。

 このまま真っ直ぐ突き進めば、竜の群れに衝突することになる。

 そこにラスカリオンはいない――奴はハザアレの背を駆けているところだ――が、残っている竜だけでも十分な戦力といえよう。


 衝突はできることなら避けたい。だが、避けようと上に向かえば黒雲に突っ込むことになる……正直あの雲には嫌な予感しかしないぜ。

 かといって海というのもな。海中でまともに動けるとは思えないが。


 意志ある者には常に選択がつきまとう。

 選べ。進行ルートは上、下、直進のどれが正解だ?



「ユーゼス=アルスタ」


 突如すぐそばで声がして「うおっ」となる。ビビってない。生理的反応だ。

 この声、ラスカリオンか。しかしすぐそばに奴の気配は無い。

 ならばこの声は……ああ、竜を呼び寄せた時に使ってたテレフォン魔術だな。


「わざわざ話しかけてきて何を言う気だ。いや何をする気だ?」


 俺の声が向こうに届くか分からなかったので、独り言になっても恥ずかしくないように自問気味に小声で問いかけた。

 その声が届いたのかそうでないのか、すぐそばで奴の声が伝播でんぱした。


「何処へ逃げようとこの黒雲が貴様を焼き焦がす。あるいは、効かぬかもしれぬ。いずれにせよ、勝利は我が物になると知れ。ゆくぞ――」


 その時、バチィと黒雲に紫電が奔るのが見えた。

 前方で待ち構えていた竜たちの、全力で逃げている姿も見えた。

 頭脳明晰な俺、何が起こるか分かりました。

 進行ルートに正解は無かったようだな。逃げ場もまた、無い。


 落雷が、来る!!!


「防いでくれよ、歪曲ワルツッ‼」

「――"雷渦撃(サンダーボルテックス)"」


 轟音が鳴り響くかと思いきや、不思議と音は聞こえなかった。

 ただ雷光が、視界を真っ白に染め上げる。


 ――――――…………。


 俺たちは……どうなった?

 感覚からいって無傷で済んでるっぽいが、防御(むな)しくモロに直撃したはずだ。

 感覚が異常になっているだけで、コゲッコゲに焼き焦げてる可能性もありうる。


 視界さえ晴れれば確認できるんだが、まだすべてが真っ白。

 雷魔法……いや、雷魔術か。攻撃時間長すぎだろ。


 と、思っていたら急速に視界が晴れた。

 空を覆っていた黒雲は消え失せている。

 で、肝心の俺たちの体は……?


「…………⁇」


 仲間たちの体を見ると、無傷の個体もいれば微かな焼け跡のある個体もいた。

 全員 万遍まんべんなく雷を浴びたはずだが、個体によってダメージにバラツキがある?


「いやそんなことより、何だあれは……」


 気付けば、俺たちのずっと前を飛行する大きな光の塊があった。

 亜光速で飛行する俺たちの前をだ。

 その光と俺たちとの距離はどんどん離れていく。離されていく。

 お、俺たちよりも、速いっ⁉


 そしてそれ(・・)は、クルッと首をひるがえして笑った。


「この速度にはついてこられまい? グフハハハーー!!!」


 発光する巨体がわずかにのぞかせた顔は、ここからでもよく見えた。

 吼えずにはいられない。


「何故お前が前にいる、ラスカリオン!!!!」


 その問いに奴が答えることは無かった。


 ただひたすらに前を駆けていく瞬光を、俺は後ろから眺めることしかできない。


 ――なぁんてことは、腑抜けた阿呆のやることよ。

 繰り返し言うが俺たちは一味違うぜ。一味違う豆腐なんだぜ?

 奴が速ければ、俺たちもまたその術理をパクって速くなればいい!


 極限まで集中して、主観時間を引き延ばしていく。

 如実に差が広がる前に、急いでパクるのだ。


 まずは分析しよう。

 奴の速くなった技はあれだ、赤松御大の漫画で見たことある技だな。よってその術理は心得ている。雷をその身に宿して雷の速さを得るっつー技である。

 俺たちへ攻撃したのはついでで、自分の強化のために雷を発生させたんだな。


 ならばこちらも雷を……ちぃッ!

 雲が消えたせいで電位差の生じる雷発生ゾーンが無ぇ!


 雲の作成からやんなきゃならないのか?

 奴は流体操作で海水を槍に変えていた。同じ要領で海水を蒸発させて雲を作ったんだろうが、それは流石に再現不可能だ。


 俺たちにはフォースしか……そうか、フォース!


 映画を思い出せ。シスの暗黒卿は、両手から電気ビリビリ出してたよな。

 たしか名前は、フォースライトニングだったか。

 だがあれは、フォースの暗黒面に落ちなきゃあ無理だったはずだ。俺たちは正義を重んじるジェダイ豆腐だから、それは流石にな。無理がある。


 無理はあるが、物は試しだ。

 空気中のプラズマ粒子に呼びかける!!!


「フォースライトニング!」


 バチィ!!


「出るやんけ」


 出るんかい! いや、おかしいだろ流石に。俺たちだけ異なる世界法則が働いている気がする。ま、都合がいいに越したことは無いですけどね。


 よし。出たんなら後は、この身にフォースライトニングを宿すだけだ。

 宿すっていうか、浴びせ続けるだけでいい。

 俺たちは豆腐だ。体には水分が染み切っている。導電率100パーセントである。

 フォースライトニングを自らに浴びせることで、雷が全身にくまなく行き渡る。

 雷そのものになれるということだ。


 早速行くぜ! 技名は雷光ライトニングにちなんで―― 


「――"雷化豆腐トウフニング"」


 ネーミングセンス‼ まあいいや。あとで直せば。


 そんなこんなで雷化豆腐トウフニングになった俺たち。

 超サイヤ人2みたいに体にバチバチと電気が流れてて超カッコイイ!

 また食べ物から遠ざかった気がするが、最終的に食べ物になれば無問題モウマンタイ


 その速さは如何いかばかりか、さあ見せておくれ!


 バチィ‼

 強い放電の後、目に映る全てが線と化した。


「うおおおおおおおおお!!!??」


 は、速えええええ!!!

 俺の「うおおお」て声がめっちゃ後ろから聞こえてきて面白すぎる。


 これが光の速さなんやな。

 これがβテスターでチーター……うおっ、今キバオウ化現象が起こりかけたぞ⁉

 こ、この技は暗黒面に足を踏み入れてしまう諸刃の剣なのか……。

 ゴールまでは維持するつもりだが、それまで気をしっかり保たないとな。



 そして少しも経たない内に、バチバチ光る竜の背後を捉えた。

 後半戦第二ラウンド、地獄のデッドヒートが始まる予感……‼


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ