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4・王ユニットは模倣士

 レースは遂行する。団員も守る。

 どちらもこなさなくちゃあならないってのが、団長のツライところだな。

 覚悟はいいか? 俺はできてる。



 ――そして俺は、槍に貫かれていた(・・・・・・)



 邪視は既に解かれている。

 停滞が破られた瞬間、一か八か、この身一丁で全方位に向けフォースプッシュしたことで、団員たちを吹っ飛ばし竜槍群の飛来コースから逃がせたようだ。

 俺だけはこの通り、現在進行形で粉微塵に散っていってるワケだが……。


 俺は選んだのだ。仲間の無事を。

 だが俺は、仲間を助けることと引き換えに死ぬことを美徳だなんて思っちゃいない。

 残された側はたまったモンじゃないだろうからな。


 だから、死ぬ覚悟なんてしてねぇ。生き抜く覚悟オンリーよ。

 ただ生き抜くだけでも駄目だ。

 レースに復帰するために奇跡の復活を遂げなくちゃあな。


「ぐわあああああ!!!」


 殺到する幾十もの凶槍。グチャグチャと飛散する豆腐の身。

 いつ終わるのだ、と宙に舞う豆腐のひと欠片(俺)が叫ぶ。

 だが、終わりさえすれば……!


 俺、パクるのは大の得意だからさ。竜が穴塞いで復活したの見てピーンと来たワケよ、頑張れば俺もあれできるんじゃないかって。

 モチロン魔術なんて使えないが、帳尻が合っていればいいんだ。


 千々に撒かれた豆腐の欠片ピース、その全てを正しく配列すればいい。


「終わった――今だ!」


 現象行使フォース。タルトタタンによる空間認識能力を以って、どこにどの欠片があるかは把握している。それをフォースで手繰り寄せ、配列する。


「うおおおおおおお!!!!」


 飛び散った幾多の欠片が、着々と俺という豆腐を組み立てていく!


「おおおおおお――ぐっ」


 当たり前にできることではない。

 豆腐ニューロンが焼き切れそうなほどの負荷。


 ――だが、俺の意識が落ちきることはない。

 無意識トランポリンが何度でも俺を押し上げてくれる!


「――あと――少し! ルオオオオッ!!!!」


 成形、接着、固定。

 そして、竜が自らの爪で槍をラミネート加工したように。

 俺も俺自身の豆腐の端材で表面を美しく仕上げる。プルリン!


「……俺の死は――俺が決める!!」


 ドン! 完全復活である。

 視界の端では「フザけおってェエエエ!」とラスカリオンがブチ切れているが、奴に構っているヒマはない。


 俺は吠えた。


「マロゾゲイーーーン!!!」


 マロゾゲインとは、マロゾロンドへの合体要請シグナルである。

 四方八方に散らばった団員たちが、歓喜の震えとともに飛び込んでくる。


 そして――霊長類をかたどった豆腐の神が――顕現する!


「マロゾォッ(効果音(ブォン!))ロンド!!!(効果音(ジャキーン!))」


 合体シークエンス完了! これで元通りだ。

 さて、ここからが正念場。気合入れて行くぜ。


ハザアレの晶眼を破壊する!」


 運が良いことに合体を終えるまでの間、邪視は放ってこなかった。強力な邪視ゆえにクールタイムがあるのかもしれない。

 だがこの一秒後には停止させられてもおかしくない。まずは視界の外へ逃げる!


変形フォームチェンジ! トントロポロランス!」


 変形にかかった時間、わずか0.5秒。

 最初からその形態で合体しとけよ というツッコミすら追いつかない速さで、バビュンと天空に飛翔した。


 俺たちは上へ上へと疾駆していく。

 なぜ上に向かうかって? 味方がいるからさ。太陽っつー味方がよ。

 お化けをも焼き尽くす太陽の力を借りる!


 上昇を続け、あわや宇宙にまで達しようというところで、Uターン。

 亜光速で下降していく……その背に太陽を背負って。


 普通に考えて、奴の視界に俺たちの姿が入ったら邪視が発動するだろう。

 見られたらアウト。だが、見られなければセーフだ。

 奴のフトコロに入り込むには、見られずに近づけばいい。


 そう、あれだ。バトルモノでよく見る、太陽の光に紛れて攻撃する戦法。


「化け物だって、太陽は直視しないだろ……‼」


 下降……下降……見えた!

 海に横たわるハザアレ。横長に伸びる巨体の、左右に鎮座する一対の巨眼。

 邪視は右目から放たれていたから、当然狙うべきはそちら側だ。


 だが、俺たちは一味違う……どちらも狙う。両方の晶眼を同時に壊す!


 知ってるぜ。どうせ左目でも邪視を放てるんだろ?

 右目壊して安心したら、「な、もう片方からも邪視だとッ? ピーンチ!」とかなるんだろう? 俺は先が読める豆腐だ。ブザマを晒すつもりはない!


「これより二班に分かれる! トントロチームはユンデを先頭に左へ、ポロンチームはメテを先頭に右へ行き、目標を破壊後、背面中央で合流する。散開!」


 シュバッ、トントロポロランスが二叉に分かれる。

 穂先の面積は半分になったが、切断効果が減じることは無かった。

 トントロポロランスは健在で、しかも二本になったのだ。エコである。


 ポロンチームの司令塔は俺だ。これまで通り、班のみんなを導く。

 トントロチームの方だが、司令塔はティドロソフに任せることにした。

 めんどくさがり屋だが、そうであればこそ仲間を働かせるのには長けている。

 適材適所という奴だ。任せたぞ……。



 これより目標『右晶眼』を破壊する。

 落下コース修正……あとは直進あるのみ。

 敵に動きはない。邪視発動の兆しは皆無。こちらの位置は割れていない!


 オーケー、ブチかますぜ。


「貫、けェええええ!!!!!!」


 ――――ヒュンッ!

 はしる一条の光芒こうぼうfeat.ポロンチームは、目標を一直線に貫いた。


 貫通孔を覗けば、きっと穴の向こう側の景色が見えることだろう。

 だが、後ろは振り返らない。

 晶眼を貫いた勢いで海面に激突しそうなところを、すんででグググっと持ち直すと、ハザアレの背のド真ん中――合流地点の方へと旋回する。


 前方を見据えれば、同じく向かいから飛んでくるトントロチーム。

 フフ、どうやら向こうも上手くやったようだな。


 そして両チームは合流地点で「マロゾゲイーーン!」

 クルリ、ひるがえした姿は霊長類フォームのマロゾロンドだ!

 最後は腕をサッと振って決めゼリフ。


マロゾ(これで)――エンド(終幕)!!!」


 左右の晶眼が水風船のようにバッシャーン! 弾けた。

 ――ミッション完了コンプリート


 さあ、レース続行といこう!

 丁度今いるところが折り返し地点。あとは戻るだけだ。


 ハザアレの本体は未だ健在だが、両眼を潰した今、レースが邪魔されることはないだろう。

 ならばこれ以上、血を流す必要はない。


変形フォームチェンジ! トントロポロランス!」


 ランスと言いつつスピアの形になった俺たちは、ブシャア、ハザアレの背面をブチ破り、中の肉をズタボロに引き裂いて向こう側に躍り出た。

 いわゆる、ショートカットである。


「折り返し地点、クリア!」


 血を流す必要は無いと言った0.5秒後に血が流れてた。

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