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4・哀れ美少女奴隷

 一口に竜といっても、いろんな竜がいる。

 姿かたちや特性、行動方針など、個体によって千差万別だ。


 そんな個性あふれるしゅを竜種たらしめる共通の特徴といえば何か。

 それはやはり、その体がウロコで――竜鱗スケイルズで覆われていることだろう。

 非常に頑強な竜鱗スケイルズは矢を弾くなんて当たり前で、重量武器による全力の一打を振るっても全く凹みやしないらしい。


「序列十位以上の者には竜鱗鎧スケイルズアーマーが下賜されるのだ」


 シュさんは武器庫より引っ張り出してきた鎧を抱え、そう言った。

 せっかく俺が『戦うのは俺に任せてテメーらは護衛に専念しな』とカッチョ良く決めたのに、シュさんときたら最強防具をひっさげて参戦するつもりらしい。


「いやあんた、肋骨折れてるやんけ」

「既に治した」


 治したってなんだよ。三日そこらで治ってたまるか。

 あとそんな鎧あったんならさ、


「なんで普段から身に着けないんだ? 俺と戦った時も怪我しないで済んだかもしれないのに」

「普段使いするには、これはあまりに重すぎる。命が懸かった戦いでないと持ち出す気にはなれないな」

「さいで。てか命懸けるくらいなら付き合ってくれなくていいって。いやホント」

それ(・・)を持っているのなら勝算があるからだ」


 シュさんは俺が手に持っている猫剣(・・)を見た。



 猫剣とは、猫の爪で作られた剣のことだ。

 ここでいう猫は、俺の元いた世界の猫とは違う。この世界の猫は実在する生物では無く、架空の生物として知られている。

 言い伝えによると竜は、実在しないはずの猫を大の苦手としているらしい。おカタい竜鱗があれど、猫の攻撃は何でか通ってしまうからだ。


 てなワケで、猫剣とはズバリ竜殺しの剣ってことになる。それを俺は持ってる。

 架空の、あるはずのない猫の爪がなぜ実在しているのか意味不明だが、矛盾してようと実際にここにあるんだから何とも言えない。


「まさか貴様が持っていようとはな。どこで手に入れた?」

「貰ったんだよ。いや、正確には交換して手に入れたんだ」

「何と交換したんだ?」

「シャーラだよ」

「シャーラ? 何だそれは」

「美少女奴隷ちゃんの名前さ」


 俺たちがまだBランクになりたての頃、居着いた亜竜を追っ払うっつー依頼をこなしに山麓の村に向かう道中のことだ。


 はじめはトントロポロロンズだった。

 腹すかせた旅人に布教用に持ってたトントロポロロンズをくれてやったんだ。

 そしたら感謝の印にこれをって、よく分からない液体が入った壺を貰った。


 それは俺には不要なものだった。感謝の印を道端に捨てるのもどうかと思ったんで、次に会った商人にくれてやったんだが、お節介なことにソイツがまた別の要らないモンを代わりにと押し付けてきやがった。

 俺は捨てたい一心だったのに、行く道々で謎の物々交換が何度も起きていき、いつの間にか美少女奴隷シャーラちゃんに変わっていたのだ。


 犯罪奴隷(犯罪を犯して奴隷落ちした者)とのことだったが、それにしては人が良く、見目も麗しかった。なんか高貴な出みたいな感じもした。ワケ有みたいな?


 しかしだ。トントロポロロンズが嫌いだというのは頂けない。

 繰り返すが、非常に頂けない。食べる時「ウッ」ってなりやがって。

 誰か別の保護者を見つけ次第そいつに押し付けてやろうと思った。


 そして、亜竜撃退を達成した後。

 帰り道の街道で、なんだっけかな、猫騎士グリマルキンだったっけか、そう名乗る不思議な雰囲気の青年と出会った。

 頬にはマーカーで書かれたような三本線が走っており、金属質の毛に覆われた変わった甲冑を纏っていたが、それがなんだか板についている。


 ソイツは会ったばかりの俺にこう言った。


『君の一番大切なものを、僕にくれないかい?』


 こりゃあちょうどいいと、特に大切でもない奴隷ちゃんをおしつけてやると、


『わあ! 本当にくれるのかい! 君にも相応の物を代わりにあげるよ』


 そんな経緯で猫剣ハッピーシャーラを手に入れたのである。


 以上のことを多少かいつまんでシュさんに語ってやった。

 なお、呆れられた。何でだ。


「ちなみに剣の名前は俺がつけた。短い間とはいえ、シャーラとは共に旅をした仲間だからな。幸福な人生を送れるよう願って、ハッピーシャーラにしたんだ。俺ってば優しいところあるからな」

「優しい者は、見知らぬ他人に仲間を引き渡したりはしないと思うが……」

「(無視)ところで今気づいたんだが、俺は猫剣ハッピーシャーラを使う必要が無いかもしれん。ちょっと試してみたいことがあるんだが、いいか?」

「? 何を――」

「この技が竜鱗スケイルズに通用するかどうかの実験さ」


 シュさんの返事を待たず、彼が装着している竜鱗鎧をツンと突いた。


「どうやら成功のようだ」

「おああっ、鎧に傷がッ!」


 ルーン&オガム搭載の切断角ソードエッジなら竜鱗を貫けるようだ。

 これなら剣は不要だな。剣術なんて知らんから助かったぜ。


「マロゾロンド! 貴様、貴重な鎧をよくも‼」


 しこたま怒られた。許せ、サスケ。ハッピーシャーラくれてやるから。


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