4・好感度アップ
「ヒレフセーーーッ‼」
「「「………………」」」
「平伏せ」
「「「!!」」」
ザザザッ!
悲しいことに俺の命令はスルーされたが、俺の意を汲んだ姫さんが護衛騎士どもをヒレフセさせてくれた。これは実質俺がヒレフセさせたに等しい。
なお、ヒレフセさせる意味は特に無い。
俺は騎士どもを見下ろすと口上を述べた。
「畏れ多くもライオネス大行殿下の命により護衛の任を仰せつかった、マロゾロンドだ‼ 光栄にもお前たち九十九騎士団第一隊の全権を大行殿下より預かることとなった。部外者がいきなりこのような役職に立って不服もあるだろうが、下剋上大いに結構! 清濁併呑ッ! イゴ、よろしく!!!」
「「「………………」」」
冷たい反応だ。いや、そもそも事態についていけてないって感じだぜ。
姫さん、どうにかしてくれよぅ――そんな意を込めて顔をチラッすると、姫さんは俺の意を察してコクリと頷いた。
「聞いての通りだ。私はマロゾロンドを信頼している。この方の言うことに逆らわぬように。いいな!」
「「「は、はっ!」」」
『どうしてこうなった……⁇』
騎士一同が今抱いている思いはズバリこれに集約されるだろう。
俺だってそう思っているくらいだ。まさかこうなるだなんて予想できなかった……それにしてはこの豆腐、ノリノリである。
俺は思い返す。
そう、あれは1800秒前のことだ……――――
***
目を覚ました姫さんは、まるでフシャーと威嚇する猫のようだった。
「シュチュルム! 早くそいつをウドゥドゥから放り出せ! 近づけさせるな!」
見よ、この拒絶っぷりを!
罠にかけた俺に報復されると思い込んでいるのだ!
無論、俺にはそんな気などない。むしろ愛が溢れんばかりですわ。
今からそれを伝えようと思う。
「ドーモ。ライオネス=サン。マロゾロンドです。俺は君の味方になると決めた。だから、君にされたことは気にしていないし、仲良くしていきたいと思っている」
「シュチュルム!」
アイサツを無視する姫さんは、シュさんに俺を排除しろと叫ぶ。
おお、なんたるマッポーめいた世だろう。きっと愛を知らずに育ったのだ……俺がすんなり許しちゃうことが理解できず、ウソだと思っているのか。
ならば、実際にまことの愛を与えてやらなくては。
「シュさん、ちょっとあっち向いててくれ。俺は姫さんにこの体を見せようと思うんだ」
「……いいのか?」
「いいんだよ」
「…………」
マロゾロンドの真実の姿を知らないシュさんは何を思っているのか、神妙な顔で俺を見つめると、それから後ろを向いた。……ありがとうよ。
「シュチュルム!?」
姫さんは叫んだ。ドレイク隊長代理はまだオネンネで、この場で頼れるのはシュさんしかいない。そのシュさんが主の命令を聞かずに俺の言う事を聞いたのだ。
間違いなく心の中は穏やかじゃない中の穏やかじゃない。
だが安心してくれ。君の絶対なる味方はここにいる。
「聞いてくれ。君の信頼を得るため、俺は今からこの黒衣を脱ぐ。きっと君なら、俺たちという存在を理解できるだろうから」
「な、何を……」
「俺の体を見ろォオオーーー!!!!」
黒衣バサァ!
マロゾロンドの全身を露出させた。
「キャアアアーーーッ!!!」
意外にも姫さんは女の子チックに叫んだ。
一方、叫ばれた俺は……あれ……ちょっと、キモチイイ!?
そんな……嘘だッ!!!!!
俺は心の中で強烈に吠えた。
己の隠された露出癖がショッキングで、否定しなくてはやっていられなかった。
いや、俺のことはどうでもいい。姫さんは?
「き、キッサマ‼」
多少なりとも落ち着きを取り戻した姫さんは、GANTZに出てくるオニ星人のボスみたいな反応をした。その表情は戸惑いか、怒りか、それとも……。
とりあえず俺はこう告げる。
「俺は君の夢を叶えるために今ここにいるんだと思う。きっとこれは運命だ。君はどう思う?」
人型にかたどられた豆腐の群れ、すなわち俺たちを見つめる姫さんは、その瞳からツゥーと一筋の涙をこぼした。
「……運命だ」
そして姫さんは威嚇のメヒョウのポーズをやめ、俺たちの元へ歩み寄る。
真ん前に立った姫さんは、恐る恐るこちらへと指先を伸ばす。
俺はそれに応えようと、こちらもまた右手を伸ばした。
姫さんの人差し指と豆腐の柔肌がプルッと合わさる。
「「…………」」
ユウジョウ! 口を交わさずとも、互いに確かな繋がりを感じられた。
「マロゾロンド……我が覇道についてきてくれるか」
「ライオネス……ああ‼」
俺たちは往年の夫婦めいて通じ合っていた。
まだ見ぬ楽園創造の覇道。俺たちが手を取り合えば、歩んでいける気がする。
さあ、ここから始めよう。一から……いいや、ゼロから!
「何が起こっている……⁉」
律儀にこちらを見ないシュさんへの好感度が1あがった。




