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朝食が終わったぐらいにジギーが船にやってきた。どこか楽しそうに見えるのは気のせいではないはず、ネイリーはそう思った。


「おはよう、今日は何からやる?」


「今日はまずこれを。」


 ネイリーは先程見つけた水色のローブを差し出した。


「何これ?」


「書斎で見つけた。水のローブと言って炎に対する抵抗が高い。それに見た目以上に防御力は高い。君のご先祖様が身に付けていた物だと記されていた。」


「へえ~、この船を作ったのは男の人だと思ったけど、これ女物よね?」


 ジギーは受け取ったローブを広げてみた。デザインはどちらかと言うと女物、ワンピースにしては少々丈の短いそれはレギンスに合わせるといいと思えた。


「それはその伴侶の人が着ていたローブだよ。その人も相当の魔法の才能があったみたいで、それを身につけて戦いに赴いたともある。君に魔法の才があるのはそのせいかもしれない。」


「でも父様は魔法を使えないよ。」


「まあ絶対ではないからね。それに魔法の才があっても学ばなければ普通は身につかない。だけど君の魔法の才はその二人の血を色濃く受け継いだ結果とも思われる。」


「ふ~ん、それはちょっと嬉しいかな?・・・ねえ、これ着てきていい?」


「いいわよ。着替えるなら私の部屋を使って。書斎の手前、右側の部屋よ。」


「うん、分かった。」


 ジギーは水のローブを抱えると船室へと降りて行った。


「なあ、他のはどうする?剣と鎧はお前、ローブはジギー、まだ杖とよく分からん武器が残っている。」


「ああ、それについても考えたんだが魔法の杖はマリアでいいと思う。と言うかマリアしか使えない。」


「どうして?」


 突然名前が出てきたマリアが聞いた。現時点でマリアは装備には困っていないのだ。


「正式な名前は光刃の杖、魔力を刃に変換して敵を切る武器だよ。」


「ならネイリーでもジギーにも使えるのではなくて?」


「僕はこの剣を使うからいい。それに消費する魔力は3、ジギーにはそのコントロールができない。護身用にマリアが持っておくといい。」


「分かったわ。それでアレックスが言うよく分からない武器ってのは?」


「それは魔導砲、魔法を矢の変わりにして、さらに魔法で撃ち出す特殊な武器だ。」


「ちょっと効率悪くない?そこまでする必要あるかしら?」


 魔法を詠唱するのには時間が掛かる。それを二度繰り返してやっと発射できることに何の意味があるのだろう。それはもっともな疑問と言えた。


「分からない。だからしばらくは僕が預かる。いろいろ実験してみて最適な使い道を考えよう。」


「私はそれで構わないけど、アレックスはどう?」


「正直どうでもいい。」


 魔法を使えないアレックスは投げやりにそう言った。場の空気が悪くなる、その瞬間に明るい声が聞こえた。


「じゃ~ん!どうこれ?似合ってる?」


 着替え終わったジギーが甲板に戻ってきていた。水色のチュニック、大人なら丈の短いそれは、まだ背が伸びきっていないジギーには普通の丈に見えた。


「悪くない。だけど下がそのローブのデザインに合ってない。」


 アレックスの遠慮のない言葉にネイリーとマリアの顔色が変わった。


「やっぱり?ぼくもそう思ってた。家に帰って他のを見繕って来るよ。」


「いやいやいやいや、今はそのままでいい。魔法の練習をするのに格好は関係ないよ。」


 完全におかしくなった話をネイリーが止めた。


「あっ、そうか。じゃあ今日は何からやる?」


「今日は基本放出魔力を調べる。少しずつ消費魔力を大きくしていってどこまで使えるか試してみよう。」


「うん、分かった。じゃあ火球の魔法から・・・『ぼくは魔力を4消費する・・・」

 「ちょっと待ってっ!ここじゃ危ないから場所を変えましょう。」


 これから使う魔法は小魔法とは威力が違う。周りに与える影響も違いすぎる。危険を察知したマリアがジギーの詠唱を止めた。


「そうだね。じゃあ昨日の埠頭でやろうよ。」


 ジギーはそう言うと船から降りた。その勢いのまま港の中を走る。仕方ないのでネイリーはその後を走って追う。残されたアレックスはマリアに話しかけた。


「昨日聞いたけどまだ半信半疑、足手纏いはごめんだぞ。」


「それは私も同感ね。あの娘を死なせて残された祖父を悲しませるような真似はしたくないわ。じゃあ私は行くから船大工が来るまでここお願いね。」


 アレックスを留守番に残してマリアも船を降りる。一人残されたアレックスは少し考えてから剣を抜いた。


「足手纏いか・・・俺がそう言われないようにしないとな。」


上段に構えてから振り下ろす。すぐに元に戻してからまた振り下ろす。いつもどおりの鍛錬を繰り返すことで余計なことを考えるのを止めた。



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