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ジギーとネイリー

「才能って残酷だな。」


 調子に乗って魔法を唱え続けるジギーを見ていたネイリーは、同じく隣で見ているマリアにそれとなく感想を言った。


「そうね、私も10年に一人の才と言われたけどあの娘は別格。すごすぎて嫉妬の感情も出てこないわ。」


「僕はそこまで割り切れていない。剣ではアレックスに敵わず、魔法ではマリアに敵わない。彼女の才能はそれを遥かに超える。僕は必要ない、そう思ってしまった。」


「それはちょっと違うわね。弱い駒と強い駒、戦況に応じて臨機応変に使うのが勝負の鍵、少なくとも盤上のゲームではそう習ったわ。」


「僕はその弱い駒かな?」


「そうじゃない。あなたはそのどちらでもない駒。使い方によっては強くも弱くなる。強い駒に並んで駆けることも援護することもできるのよ。あなたはもっと自信を持つべきだわ。」


「・・・ありがとう。」


 慰められていることが分かったネイリーだったがそうとしか言えなかった。ここ10日の間だけでも様々なことが起きた。その全てがネイリーの心を沈ませていた。


「ねえ~、ちゃんと見てる!?」


 突然こちらに振り向いたジギーが不満そうに声をかけた。


「ゴメン、ちょっと見てなかった。どこまで行ったかな?」


「中級魔法は一通り3回ずつやったよ。」


「手応えはどう?」


「Fragor(爆発)だけは失敗していない。」


「なるほど・・・だとするとジギーの基本放出魔力は10で合っていたみたいだね。」


 各魔法の消費魔力は小、中、大と順に倍になっていく、火球の魔法は2、氷の魔法は3、火炎と旋風の魔法は4、爆発の魔法が5だ。その爆発の中級魔法なら消費魔力は10、まだ試行を繰り返して調べる必要はあるがまず間違いないと見ていいだろう。


「それで次はどうすればいいの?」


「次は無駄なく魔力を使う練習をする。実際に使われる魔法に合わせて放出する魔力を絞ったり、拡大したりする・・・・あれっ?そういえば確か落雷の魔法の消費魔力は30、なんでそれができたんだ?いやそれより何故その魔法だけ流暢に詠唱ができる?」


「う~ん、どこかで聞いたことあるような、そんな覚えがあるって言うか、自然と口から出てきたみたい。魔力もなんか足りない気がして余計に放出してみただけ。」


「とんでもないことさらっと言うなよ。その感覚を理解できるまで相当の熟練を要するんだぞ。」


「そうなんだ。」


 それが何でもないことのようにジギーは言った。さっきまでなら落ち込むところだったが、慣れてしまったのかネイリーは落ち込まずに済んだ。


「まあいい。そうなるとまず拡大からやってみた方がいいかな。一応はできていたみたいだし・・・よしMagna Fragor(大爆発)を試してみよう。消費魔力は20だからいつもの倍放出することを意識してみるといい。できる?」


「多分・・・じゃあやってみる。」


『ぼくは魔力を20消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ

  おお、万能たる力よ、全てを破壊する力となりて爆ぜよ!Magna Fragor(大爆発)!』


 ジギーの詠唱が終わった瞬間、さっきまでジギーが的にしていたブイの少し上に光の凝縮が起きた。


「やばいっ!」


 ネイリーは咄嗟にその危険性に気付いて駆け出した。爆発が起こるであろう場所からジギーまで10m、さっきの爆発の魔法ですらギリギリの距離だ。


 ドグオォォォォォォォォォォォンッ!!!


 凝縮した光が弾けて爆発が起きた。爆風が無防備のジギーを襲う。吹き飛ばされたジギーを空中で受け止めたネイリーは共に海へと落ちた。爆発の余波が収まるまで水面は荒れたまま、収まるのを待ってマリアは埠頭から海を見下ろした。二人の姿はない。


「ネイリー、ネイリー、どこにいるのっ!」


「・・・ここだ・・・ここにいる。」


 囁くような声がマリアの耳に届いた。声の方向を便りにネイリーを探す。視線の先にジギーを抱きかかえて立ち泳ぎをしているネイリーの姿があった、ジギーは気を失っているのか身動き一つしない。


「ちょっと待って、今ライフリングを投げるから。」


 マリアは近くにあったオレンジ色の浮き輪をネイリーに向かって投げる。少し外れたがそこまで泳いだネイリーがそれを掴むと、マリアは繋がっているロープを引っ張って二人を陸へと近づけた。


「まずジギーを。」


 浮き輪に捕まったままネイリーはジギーを押し上げる。マリアは必死でその体を引き上げた。自由になったネイリーも陸に上がり横たえられたジギーに近寄る。


「さっきから息をしていないの。どうしよう、まず怪我を治すべき?」


「まず気道の確保を・・・。」


 そう言いながらネイリーはジギーの顎を引いて口を開けさせた。中に異物は見当たらないがまだ息は吹き返さない。ネイリーはジギーの口に自分の口を付けると息を吹き込む。それを2回繰り返した。


「けほっ!」


 突然ジギーが目を開いた。もう一度息を吹き込もうとして顔を近づけたネイリーと目が会う。一瞬時が止まった。


「えっ、なに!?なにっ・・・」


 混乱したジギーが両の手でネイリーを突き飛ばし、勢いよく立ち上がる。そのまま何処かへ走って消えた。突き飛ばされたネイリーは再び海の中、失意のあまりしばらく上がってくることはなかった。



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