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魔法談義①

「行くよ~。『ぼくは魔力を2消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、おお、万能たるマナよ、小さな火球となりて、我が敵を撃て!Parma Ignis(小火球)!』」


 ジギーの手が勢いよく突き出された。その手からは何も出ない。見ていたネイリーが首を横に振った。


「たどたどしいけど詠唱は間違ってない。なんで発動しないんだろう?マリア、分かる?」


「分からないわ、アレックスみたいに全く魔法を使えない人もいるから、次はマナの流れを見ましょう。もう一回やってくれる?」


「いいよ、よく見ててね。『ぼくは魔力を2消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、おお、万能たるマナよ、小さな火球となりて、我が敵を撃て!Parma Ignis(小火球)!』」



 再びジギーが詠唱を行なった。結果は同じく不発、だがそれを見ていたネイリーとマリアが互いの顔を見て頷いた。


「何、二人で分かったような顔してるのよ、何か分かったのなら教えて。」


「ゴメンね。原因は分からないけどマナの動きが不安定、そうとしか言えない。」


「うっ・・・じゃあ魔法の素質が無いってこと?」


 ジギーが泣きそうな顔でマリアに話した。


「いや、そんなことないと思う。現に昨日の魔法は発動したし、他の魔法も三回に一回は発動したとも言っていたしね。」


 ジギーの泣き顔を見てなんとかネイリーが慰めようとした。


「そういえばそうね、どういうことかしら?じゃあ今度は昨日の魔法を使ってみて。目標は海の向こに見える岩でいいわ。」


「ぐずっ・・・いいよ、じゃあ『ぼくは魔力を30消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、おお、万能たるマナよ、神の怒りとなりて天より落ちよ!Tonitrui(落雷)!』」


 先ほどの魔法とは違い流暢な詠唱が行われた。ネイリーとマリアの目の前で雷が落ちる。それを見ていた二人がこそこそと会話を始めた。


「やっぱりすごい。それにものすごい量のマナが動いて見えたような気がする。」


「ええ、私にもそう見えたわ。信じられないけど10以上、いえもしかしたら20以上の魔力が消費されたと思う。」


「20以上?基本の魔法も使えないのにそんな魔力が放出できるわけないだろう。何かの間違いじゃないのか?」


「いえ、間違いじゃないわ。ネイリー、あの魔法の書で今の魔法について調べてくれないかしら。それではっきりしたことが分かるはずよ。」


「分かった。書斎に行って調べてくる。」


 あの魔法の書を外に持ち出してはならない。誰に言われたわけではないが二人はそう判断した。改造作業をしている職人の間を抜けてネイリーは書斎へと入った。


 -----------------------------


「結論から言うと落雷の魔法の消費魔力は30。おそらく今の僕にはコントロールできない。」


「そう。でも小火球の魔法は一度も発動していない。これは一体どうしたことかしら?」


 戻ってきたネイリーはマリアにそう語った。ネイリーが戻ってくるまでジギーの試行は繰り返されたが小火球の魔法は発動していなかったのだ。ジギーは半泣きのまま詠唱を続けていた。


「相性の悪い魔法もあることだし、とりあえず他の魔法も試してみるか。ジギー、発動しなくてもいいから他の魔法を試してくれ。」


「いいよ。じゃあ行くよ。」


『ぼくは魔力を3消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、血となりて体を癒せ!Parma Sanitatem(小治癒)!』


『ぼくは魔力を4消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき火炎となりて燃え広がれ!Parma Flamma(小火炎)!』


『ぼくは魔力を3消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、氷の矢となりて敵を撃て!Sagitta Glacies(氷の矢)!』


『ぼくは魔力を4消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、風の刃となりて敵を斬れ!Parma Turbine(小旋風)!』


 ここまで一度も魔法は発動していない。二人も感知していたがやはりマナの動きは不思議と不安定なままであった。


「まだやればいいの?」


「もう少し続けて。」


 ジギーは無言で頷くと魔法の詠唱を続けた。


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


 突然、海の上で爆発が起きた。間違いなく魔法の効果である。ジギーが嬉しそうに振り向いた。


「できた、できたよ。」


「うん、そうみたいだね。ちなみにその爆発の魔法は僕には使えない。マリアは?」


「私は使えるわよ。私が苦手なのは治癒の魔法。上級、いえ、あの書によると中級の魔法まで使えるのは火球と火炎、爆発の魔法もやっと使えるようになってきたわ。」


「それについても記述があった。魔法の素質には二種類あって破壊を得意とする魔術師、回復を得意とする神官の二種類だ。それによると僕は神官、マリアは魔術士だ。」


 ローゼンシュタインの王家は代々聖堂騎士である。ネイリーもそう修行してきた。


「じゃあぼくは魔術士でいいのかな?」


「まだ分からない。でも小爆発の魔法が発動したことは間違いない。この魔法で練習するとしよう。」


「うん、そうしてみる。」


 ジギーは海に向かうと再び詠唱し始めた。


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


 何度も繰り返される魔法。だが毎回発動するわけではない。10回連続の試行、発動したのは5回だけだった。それでもこの試行のおかげで分かったこともあった。ネイリーはそれを説明することにした。


「さっきマナの動きが不安定と言ったけどそれは少し違う。正確には放出される魔力が安定していないんだ。ジギー、放出する魔力をどう調節している?」


「魔力の調節?何それ?」


「「えっ!?」」


 ジギーとマリアは互いに顔を見合わせ、驚きの言葉を出した。


「魔力の調節は魔法の基本よ。そんなことも知らないなんて、ジギー、あなた誰に魔法を習ったのよ?」


「誰にも習ってないよ。さっきの本を読んで覚えた。」


 異常な会話にネイリーは自分なりの推論を巡らせていた。


(もしかしてこれが天然魔道士・・・自然に魔法が使える者、歴代の魔法使いの家系で極まれに出現する。それは優性遺伝や隔世遺伝によると記されていた。それも彼女の先祖、あの書の著者の息子もそうだった。天性故に自分の放出するMP量が理解できていない。そしてその概念を知らない。)


「マリア、なんとなく分かったぞ。ジギー、難しいことは考えなくていい。さっきの魔法を繰り返してくれ。」


「いいよ。」


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


『ぼくは魔力を5消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ、

  おお、万能たる力よ、小さき破壊の力となりて爆ぜよ!Parma Fragor(小爆発)!』


 またしても数回の試行、今度は正確に魔力とマナの動きを探る。それでネイリーは己の推論を確かめた。


「マリア、分かったかい?僕が思うにこの子の放出していた魔力は8から10。無駄に放出されていた魔力が力の変換を阻害していたんだ。」


「無意識にそんな魔力が放出できるのかしら?天才と言われた私でも基本放出魔力は5、あなたはどう?」


「僕は3、魔法を使いこなせる最低限の数値だと言われたことがある。」


「ねえ、いつまで続ければいいの?」


 まだ魔法を繰り返していたジギーが振り返って質問した。


「ごめん、もういいよ。それより分かったことがある。君が放出できる魔力は膨大すぎる。まずはそれを加減することを覚えないといけない。」


「加減?それってどうやるの?」


「これは人それぞれだから説明が難しいな。自分の放出している魔力を半分にする。ぼくはまずそこから始めた。まあ結果的には間違っていたけど。」


「間違っていたって?」


「うん、僕の基本放出魔力は3。ちょうど半分にはできない。ちなみに君の場合は8~10だと思う。今日はもう無理だと思うけど、どの程度の魔法まで使えるか調べる必要がある。」


 これまでに使った魔力は優に100は超えている。ネイリーが現時点で使用できる魔力は120~30。修行を繰り返すことで限界値を上げることはできるが、人によって上限は違う。目の前の少女の持っている魔法の才は桁違いだと分かった。


「まだ行けると思うけど・・・。」


「始めは無理をしない方がいい。ある一定以上の魔力を使いすぎると体調が悪くなるし、あまり無駄に魔力を使わない方がいい理由が別にある。今日はこの辺で止めにしよう。」


「うん、分かった。そう言われると気分が悪くなってきたような気がする。じゃあ続きは明日で。」


「ああ、じゃあ無理にしないように。今日は家に帰ってゆっくり眠ること。分かったね?」


「は~い、じゃあ今日はありがとう。」


 ジギーは二人に軽く頭を下げると自分の家へと走って行った。


「さて僕達は新しい魔法を覚えるとしよう。まずは書斎に戻って必要になる魔法を決めよう。」


「そうね。すぐにMagnaの魔法を覚えることはできないわ。他にも有用な魔法があったはず、まずそこから決めましょう。」


 ネイリーとマリアは船に戻ると書斎に篭った。二人で相談して覚える魔法を吟味する。その中には現代には伝承させていないいくつかの魔法があった。

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