同じ立場
「ちょっと待て!なんでお前みたいな子供を連れて行かないとあかんのだ!」
なんとも言えない雰囲気、まず言葉を発したのはアレックスだった。
「父様と母様の船を探しに行く。」
ジギーが鎮痛そうな声でそう言った。その祖父が肩に手を置いて語り始める。
「この子の父親と母親、わしに取っては息子とその妻に当たるが、半年前ノイエブルクに向かう船団を率いておった。その際に大厄災に巻き込まれて帰っては来なんだ。魔法の翼で戻ってきた客達によると途中の岩礁に座礁したらしい。その後迎えに出た船も戻って来ない。おそらくすでに命はないものとわしは諦めておったが、ジギー、お前はまだ諦めておらんかったのか・・・。」
「父様も母様もまだ生きている。ぼくが迎えに行かなくて誰が行くんだよっ!?」
重苦しい空気が書斎に流れる。ジギーの言葉を聞いたネイリーも鎮痛な表情を見せた。
「分かったわ。でもついてくるなら自分の身は自分で守らないといけないの。ジギーさんは何ができるのかしら?これから行く所は危険なのよ。」
「さん付けなんて止めて。そうでないとぼくはマレーネ王女様って呼ぶ。」
「ではジギー、あなたには何ができるのかしら?」
「いっ、一応魔法が使えるかな。」
ジギーがどもって答えた。三人にはその理由が簡単に分かった。
「あれで?僕も魔法はそう得意じゃないけど、あれじゃあ使えるとは言えないね。」
「うっ、調子が悪い時もあるのよ。調子がよければ三回に一回は出るんだよ。」
「そんなんで使えると言えるかっ!」
真っ赤な顔でアレックスが突っ込んだ。
「何よ、じゃああんたは使えるの!?」
「俺はいいんだよ、剣さえあれば魔物を倒せるからな。この間みたいなまぐれが起きると思うなよ!」
「この間?・・まぐれ?・・・何それ?」
怒鳴りつけたアレックスの言葉にジギーが不思議そうな顔をした。それを見ている四人も不思議そうな顔をしている。
「ちょっと待って、もしかしてあの魔法を覚えていないの?」
「あの魔法?いったい何のこと。」
「覚えてないのか?魔物を一撃で倒した魔法のことだよ。僕もマリアも知らない魔法だった。」
「あっ!」
ネイリーの言葉に声を上げたのはジギーではなくその祖父だった。その声に視線が集まる。
「何か心当たりがあるのかしら、教えていただけますか?」
「当家に伝わる古い魔法があります。なんでもご先祖様二人の馴れ初めの魔法とやらですが、あまりの難しさに使える者もおらず、文字通り遺失魔法となっています。」
「ネイリー、意味分かるか?俺にはさっぱりだ。」
「大体は。おそらくこの書を読み解けば出てくると思う。」
「へえ~。」
全く魔法の使えないアレックスに取っては遺失だろうが通常の魔法であろうが使えないことには変わらない。興味がなさそうな返事をした。
「ねえ、どんな魔法だった?」
「はあ?それすら分からないのか?」
「うん、どんな魔法だか全く知らない。」
「天からの雷。自分で何をしたのかも分からない状態でよく敵に当たったものだ。」
「やったあっ!できた、できた。」
「できたっ!じゃねえよっ!たまたま出ただけだ。そんなんじゃ幾ら命があっても足りんぞ。」
アレックスの突っ込みは当然である。祖父もネイリーもマリアもそう思った。
「じゃあ練習する。マリアは魔法が得意なんでしょ、だったら教えてもらうもん。」
「あのなあ、これから練習では遅すぎるんだよ。未熟な者は連れていけない、ネイリー、マリア、そうだろう?」
アレックスからそう振られたマリアは黙って頷いた。
「僕が教える。この子は僕と同じだ。放っておくわけにはいかない。」
「ネイリー、お前何言っているんだ。俺達は船の改修が終わったら行かねばならんのだぞ。」
「ああ、それは分かっている。だけど僕はずっと教えるとは言ってない。僕がその魔法を覚えるまでジギーに僕が魔法を教える。もしそれでジギーに魔法が使えるようになったのなら、一緒に行けばいい。そうだろう?」
「だけどさ、それはちょっと・・・。」
「アレックス、改修が終わるまで待ちましょう。それでいいでしょう?」
ネイリーの表情に覚悟を感じたマリアが助け舟を出した。
「分かったよ。だけど船の改修が終わるまでだ。それで駄目なら連れてはいかない。」
アレックスはそう言葉を投げつけると、書斎から出て行った。
「よかったね、ジギー。改修が終わるのにどれぐらいの時間がかかるか分からないけど、その間にネイリーにしっかり魔法を習いなさい。」
「うん、ありがとうマリア。じゃあお爺様、それでいいよね?」
「うっ、うむ、わしとしては賛成できんが、お前はそれでは納得できないのであろう。コルネリアス王子様、マレーネ姫様、ジギーをよろしくお願いします。」
老人の頭が深々と下げられた。
「こちらこそ船をお願いします。改修にはどの程度の時間が掛かるでしょうか?」
「船大工と相談しなくては正確なことは分かりませんが、早くて三日で終えることができると思います。」
「無理に急ぐことはありません。大厄災より海はかなり荒れていると聞きます。僕は十全な改修を望みます。」
「では完璧な改修ができるよう船大工と相談します。では私はこれで・・・。」
ネイリーは不器用な言い訳で改修の期間を伸ばした。その優しさが分かったのか老人は再び頭を下げると書斎から出て行った。




