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魔導船

[MagnaとはParmaの対になる大を表す言葉である。Parmaの魔法は本来の威力を抑えて使われる魔法であり、Magnaの魔法は逆に本来以上の威力で使われる魔法、すなわちMagnaの魔法とは大魔法のことを示している。]


 次のページを開いたネイリーの目にその文章が飛び込んできた。


「大魔法・・・。」


「ええ、これはすごいわ。続きを・・・。」


[どの系統の魔法でもMagnaの魔法として使用すると致命的な威力を持つ。状況にもよるが一人で一個大隊を殲滅することも可能になるし、城壁を破壊することも可能になる。くどいようだがその威力はすざまじい。使えることを知った者が恐れるだけでなく、その力を利用しようとする。さらに利用ができないと分かったらその存在を消そうともしてくる。事実私も暗殺されそうになったことは数知れない。ここであえてもう一度問う。それでも尚この力を欲するか?]


 ネイリーとマリアは互いに顔を見合わせた。自分の意見だけで結論を出すのは恐ろしい。


「それでも僕は力が欲しい。僕は無力だった。押し寄せる魔物に対して何もできず、その結果全てを失った。これさえあれば・・・この力さえあれば・・・。」


「分かったわ。この先を読んで力を手に入れましょう。もしあなたがその力に溺れるようなことがあったら私が全力で阻止してあげる。私がそうなった場合もそう。いいわね?」


 ネイリーはマリアの問いかけに首を縦に振ると、次を見るべくページをめくった。


[実はもう一つ危惧することがある。消費されたマナはどうなるのだろうか?無になるのか?他の何かに変わるのか?消費されたマナは瘴気に変わる、私はこう推論した。ある程度の量の瘴気は神の力で再びマナに浄化される。だが過剰に魔法を使用することでその浄化能力を超えてしまうかもしれない。これはあくまで私の推論でしかないが頭の片隅にでも入れておいてくれ。]


「これは斬新な推論ね。半年前、急激に増大した瘴気もそのせいなのかしら?」


「分からない。そんな膨大な魔法が使われた話は聞いていない。」


「そうね。もしこれが事実であったとしても魔法を使う者は減らない。それぐらい世界には魔法を使うことに憧れる者は少なくないわ。」


 魔法を使える者はそう多くはない。全人口の5%、いや王族や貴族を除くと1%に満たない者にしか魔法は使えない。才能があってもそれを引き出してやる者もなく、一生魔法と無縁に生きる者の方が多い。故に魔法を使える者は引く手数多だ。攻撃魔法が使える者はもちろんのこと、治癒の魔法しか使えない者でも雇う貴族や金持ちはいくらでもいた。


「でもそのせいで瘴気が飽和状態になったとは思えない。どちらにしても今はそのことを考えている余裕はない。まだ誰がローゼンシュタインの城を落としたのかも分かっていないんだ。」


「ええ、では続きを読みましょう。」


[何度も脅すようなことを記したがここまでにしよう。どんな武器でも使う者次第である。これを読む者が賢明であることを望む。]


 そこでこのページの記述は途切れていた。ネイリーはその言葉を心に刻むと次のページを開いた。

いくつもの知らない魔法が記されている。大魔法だけでなく、その存在も知られていない古の魔法もあるようだ。夢中になって読んでいるネイリーとマリアに大きな声がかけられた。


[おい、お~い!聞いているのか!?]


 それはアレックスだった。ネイリーとマリアが魔法の書に執着してしまった為、操船方法を記した書物を探していた。やっとそれらしき書物が出てきたのだが、その内容が魔法に属するものであった為、二人の協力が必要となった。何度も声をかけても返事がないので耳元で大声で怒鳴る。


「なっ、なんだよ。耳元でうるさいな。今いい所なんだ、邪魔をしないでくれ。」


「そんなものよりこっちが先だ。このTurbineの魔法ってなんだ?」


「Turbineは旋風の魔法のことだよ。つむじ風を起こして敵を切り裂く魔法だけど、それが何?」


「操船の書に何度もその記述がある。えっとここだ。Parma Turbineなら5分、Turbineなら30分、Magna Turbineなら一時間航行できるとあるが意味が分からん。帆に風が当たれば船は進むのは分かる。だけどこの船に帆はない。つむじ風をどうすれば船が動くんだ?」


「ちょっといい?その書を貸してくれるかな?」


 アレックスの言葉に興味を持ったのかネイリーが操船の書を求めて手を差し出す。アレックスは素直に操船の書をネイリーに渡した。アレックスの開いていたページから数ページをぺらぺらとめくる。その内容に徐々に引き込まれていった。


「旋風の魔法を使って空気を圧縮するのか?それでその圧縮した空気を開放することで推進力とするとある。」


「どういう意味だ?」


「軽い物を仰げば風で動く。それを船が動くぐらいの力にする為に旋風の魔法を使うんだ。この船を動かすには人手をほとんど必要としない。風の方向も関係ない。すごいな、この船は魔法力を使うことで自在に動くことができるようだ。」


「OK、それだけ分かれば十分だ。その旋風の魔法とやらは使えるのだろう?」


「僕は使えない。マリアは?」


「Parma Turbineなら使えるわ。でも一時間船を動かすのに12回も魔法を使っていては他に何もできなくなる。それはちょっと現実的ではないわね。」


 Parma Turbineの魔法の消費魔力は4、それが12回で48、二時間も連続で使えば現時点でマリアの使える魔力の8割を使ってしまう計算であった。


「いずれTubineやMagna Turbineの魔法を覚えるとして、この魔法の書にもあったように魔法の乱用は避けたい。他の推進方法を併用した方が良さそうだがどうしよう・・・。」


「ちょっとよろしいですかな?」


 グランローズ商会の長が話に割り込んできた。


「どうかしましたか?」


「先ほど甲板を見てきたところマストを立てる場所があるみたいです。帆が必要なら当方で改造しましょう。それでどうでしょうか?」


「う~ん、ありがたい申し出ですが、もし帆が付いたとしてもそれを扱うことはできません。」


「では船員もお貸ししましょう。船室の数からするとこの船の定員は10名、あなた方三人以外にあと7名が乗ることもできます。それでどうでしょうか?」


「じゃあ決まりだ。俺達三国の約定にあんたの商会の支援、それでこの世界の危機を乗り越える。」


 アレックスの握り拳が前に突き出される。そこにネイリーの拳が、マリアの手が、老人の手が当てられた。そしてその上にもう一つの手。


「僕も行くよ。」


「「「「えっ!?」」」」


 ジギーの以外な申し出に時が止まった。


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