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封印されていたもの

 ジギーに案内されたのはあるべき船の無いドックの一番端、そこにそれほど大きくない船があった。白銀の外板に覆われたその船はマストもなく、漕ぐためのオールもない不完全にしか見えない物だ。だがその船は完成していると、なぜか誰もがはっきりと認識できた。


「なんかすごい船だな。だけどどうやって動かすんだ?」


 アレックスが口にしたのは、誰もが思った疑問である。


「中にいくつか本があったから、どれかに書いてあると思うよ。」


「「「「本!?」」」」


「うん、一番奥の船室に立派な本棚があってたくさんの本が並んでいるよ。いっぱいあったからまだ一冊しか読んでいないけど、それで魔法の使い方を覚えたんだ。」


(使えてないんですけど・・・。)


 ネイリーとマリアはその言葉を飲み込んだ。さっき見た限りは十分な魔力操作もできていない。唯一成功したと思える魔法は天から雷を落としたあれで、そんな魔法を二人は伝説でしか知らなかった。


「魔法?ジギーや、お前そんな危険なことをしておったのか?」


「大丈夫、お爺様。三回に一回はちゃんと発動したし、今まで危険なことはなかったから。」


「駄目じゃ、駄目じゃ、そんな危険なものを独学で身につけていいものではない。お前に魔法の才があることは分かったから、近い内に然るべき師匠を用意する。それまでは使ってはならぬぞ。」


「・・・は~い。」


 祖父の言葉に対してジギーは不満そうに返事をした。


「なあ、話はその辺で終わりにして中に案内してくれないか?俺達はできれば船は欲しい。だが使えるかどうか分からん代物では困るんだ。」


「これは失礼しました、アレクサンデル王子様。これ、ジギーや早く案内しなさい。」


「は~い。じゃあこっちだよ。」


 ジギーにより案内が再開する。適当にかけられたタラップを渡って甲板に上がり、船室への階段を降りた。


 ----------------------------


「これは・・・。」


 ジギーに案内されて入った船室には、壁の一面を占領した本棚いっぱいに本が並んでいた。本嫌いのアレックスは思わず絶句した。


「これはすごい。ここまでとは想像だにしなかった。歴史に地理、兵法書に政治学、多分その子の言っていた魔法の書はこれか・・・。」


 ずっと消沈していたネイリーが本棚を前にして興奮していた。本棚に並ぶ本のタイトルを指でなぞる。その中に魔法の書を見つけた。手に取って本を開く。少し目を通してページをめくる手が止まった。


「マリア、これを見てくれ。」


「何よ、魔法の書なんて珍しくないわよ。」


 この時代、魔法はかつての口述による伝承ではなく書物によって伝承が主流となっていた。その書物は安い物ではない為誰にでも手に入るわけではないが、王家のマリアにとっては物珍しい物ではない。


「いいからこのページを見ろ。」


 ネイリーがその本を掴んでマリアの前に突き付けた。仕方なくマリアは開かれたそのページを読む。


「これは・・・。」


 マリアもさっきのネイリーと同じような反応を示した。二人が目にしたのは驚愕の文言、その内容は・・・。


[かつての魔法技術は洗練されたものではなかった。その種類も伝承法も未熟でしかなかった魔法を、古の魔法技術に近づけるべく開放したのは私である。ただし肥大化する人の欲を危惧して破壊力の高い魔法を秘匿した。すなわち、私が秘匿した魔法とはMagnaの魔法である。その魔法をこの先に書き記す。技量だけでなく倫理的にも使いこなせる自信がある者だけがこの先を読むに相応しい。一考するべし。]


「Magnaの魔法ですって、そんな魔法なんて聞いたこともないわ。ネイリー、あなたは?]


「僕も知らない。大別すると魔法には回復系と攻撃系、そして強化系がある。破壊力と記述があるということは攻撃系だろうがそこから更にIgnis(火球)、Flamma(火炎)、Fragor(爆発)、Glacies(氷)、Turbine(旋風)、Incursu(電撃)と大別される。Magnaの魔法なんて聞いたこともない。」


 全部が使えるわけではないがネイリーが座学で習ったことを説明した。マリアはともかく他の三人はポカンと口を開けたままその説明を聞いているだけである。


「それであなたはどうするの?この書物に書かれていることは狂人の誇大妄想かもしれない。でも本当だったらあなたの大望を果たすことが出来るかもしれないわ。」


「僕は・・・僕は・・・・この先を読んでその魔法を手に入れる。そして本懐を遂げた暁には再びその魔法を封印する。」


「分かったわ。私もあなたの考えを尊重する。例え大地を割り天を裂く力を手に入れたとしても悪用しない。そのことを精霊神様に誓いましょう。」


 マリアもネイリーに賛同した。二人は並んで魔法の書の続きに目を通し始めた。


「おい、お前ら二人だけで盛り上がるなよ。まずはこの船のことだろうが・・・。」


 アレックスの苦情は二人には聞こえていない。仕方ないのでアレックスは残った二人と共に船の操作法を調べるべく本棚を調べることにした。

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