闘いの約束
「ふうっ!それで残りの宝玉を求めて旅をしているか。羨ましい話だな。」
話し手はネイリーに代わり、これまでの事をあらかた語り終えた。大王の前には結構な数の空グラスが山と積まれている。酒臭い呼気とともにその感想が漏れた。
「羨ましい・・・ですか?」
「俺もお前達と共に旅に出たいと思わんでもない。」
「なりませぬ。今、大王様に出て行かれるわけにはいきません。」
近くにいた大王の老臣が慌てた様子で横から口を挟んだ。
「分かっておる、ただの戯言だ。有力な王族が皆自領に戻った今、ここ千年王都を離れるわけにはいかん。」
「差し出口を叩きました。ご理解頂けておりますなら、これ以上申し上げることはありません。」
安心したのかその老臣は深々と一礼すると後ろに下がった。
「すまんな、話を元に戻そう。先も言った様に俺がついていくことはできぬ。その代わりにいいことを教えてやろう。お前達が探している宝玉の一つ、大地の宝玉は俺が持っている。さらに風の宝玉はミスリルバーグから川を遡った地にあると聞いている。」
「大地の宝玉は貸して頂けると考えてよろしいですか?」
「難しいな、所有しているのは国であって俺個人ではない。不確実な情報では皆の同意を得ることはできないだろう。」
「ではどうすればよろしいのですか?」
少し声を荒げたネイリーに大王がふっと笑った。
「ならば力を示せ。お前達の話が本当だとすると、大地の宝玉を奪おうとしている者達がいることになる。ならばより力がある者が所有するべきと俺は考える。」
「決闘でもして証明せよと?」
「王が決闘するわけには行くまい。だから我が国では魔獣を相手に戦う。互いに同程度の魔獣を相手に戦えば優劣をつけることができよう。」
「つまり試しの儀を受けよと?」
「そうだ、俺が大王になってチャレンジをしてくる者がおらんで退屈しておった。お前達が相手になってくれると嬉しい。」
満面の笑みを浮かべて大王が語る。おそらくアレックスに聞けば二つ返事で了承するだろう。マリアはどうだろうか?4人目となるジギーは・・・・・ネイリーはしばらく考えてから口を開いた。
「イレブンローズの勝負では駄目ですか?」
「くっくっくっ、俺も侮られたものだ。遊びでなら勝てるとでも思ったのか?」
「いえ、現時点では勝ち目はないでしょう。ですので、いずれ勝てる自信ができてから改めて勝負を挑みたいと思います。」
「そうか、ではその時を楽しみにしているぞ。がっはっはっはっはっはっ・・・・・・・」
嬉しそうにそう言うと豪快な笑いを残して大王は立ち去って行った。そして周りの冷たい視線にさらされながらネイリーは静かに座り続けていた。
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翌日、日が高くなってから船は出港した。出港がこの時間になったのは、アレックスが深酒による二日酔いで船に戻ってくるのが遅れたからである。
「おっ、いたいた。ガイラから何か貰ったらしいが何だった?」
船の書斎に入ってきたアレックスはそこにネイリーを見つけた。そのネイリーは難しい顔をしながら大きな木箱から机の上に中身を並べていた。
「何だイレブンローズじゃないか。ガイラの奴め、船は揺れるんだぜ。どうしろって言うんだ?」
「それなら大丈夫。駒の底が磁石になっているし、専用のボードは鉄でできている。多少の揺れなら問題ないよ。」
「そうか、ならいいや。でもネイリー、お前にこんな趣味があったとは知らなかったぞ。」
「趣味じゃないよ。それどころか今までにやったことすらない。」
「じゃあ何で?」
「ちょっとした話の流れでね、いずれ大王様と勝負する約束もしてきた。今からルールを覚える。」
ネイリーはそう言いながらも駒とルールブックを交互に眺めるのを止めない。
「しかし話には聞いていたが本当に駒の種類が多い。覚えるのが大変だ。」
「いきなり全部覚えようとするからだよ。まずは自分の国の部隊を作るんだ。ローゼンシュタインに必要な駒はこいつと、こいつ、・・・・・・・・・それでこいつで終わりだ。」
アレックスはネイリーが並べた駒の中からいくつかの駒をつまみ上げて盤上に並べた。ルールブックは全く見ていない。
「よく覚えているね。君に教えてもらう方が早そうだ。」
「よく爺の相手をしていたからな。だから一通りのことは覚えている。ただし爺とは勝負にならない程度の腕しかない。あまり期待するな。」
「とりあえずそれで十分だよ。」
「そうか、じゃあ教えてやる。まずはこれ、こいつは歩兵で前後左右に一歩だけ移動できる。ただし攻撃できるのは前方に移動した時だけだ。動かせる駒では一番コストが安いことがメリットだな。」
「ここにある特殊能力って?」
ネイリーはルールブックを開いて歩兵に関する記述を指差した。
「歩兵の特殊能力は一斉行軍、こいつは左右に隣接する同種の駒を同時に前進させることができる。その気になれば一手で三個の駒を動かせる。」
「なるほど、じゃあこっちの駒は騎兵かな?」
ネイリーは馬に兵士が乗った駒を手に取った。
「そう、前後左右に3マスまで移動できる。特殊能力はないが十分に強い。」
「こっちにも似たような駒があるけど?」
「それはローゼンシュタイン聖堂騎士、3マスまでの移動は騎兵と同じだが隣接するマスを取れる。コストは重いがそれに見合った強い駒だ。ちなみにメタルマの魔導騎士も同じ駒を使う。国によって兵種の名前が違うのもイレブンローズの特徴だな。」
「なるほど、だから駒の数より兵種が多いのか。」
「そういうこと。じゃあ俺はローザラインを使う。最初だから一番小さい盤面でやろうか。」
アレックスは木箱から7×7の盤面を取り出すと自分の駒を並べだした。ネイリーも同じく先程アレックスが取り出したローゼンシュタインの駒を並べる。その途中で首を傾げた。
「王の駒がないけど?」
「こいつをかぶせた駒が王だ。王になった駒は元の駒の能力に全方向1歩の移動と攻撃能力を得る。好きな駒にかぶせるといい。俺はこいつ、ローザライン高機動騎兵の駒を王にする。」
アレックスは王冠を模したリングを二つ手に取ると一つをネイリーに渡した。そして自分のは一番立派な駒にかぶせた。
「ローザライン高機動騎兵・・・ああ、これだな。なになに、前後左右5マスの移動と攻撃能力を持つ・・・か。アレックスらしい選択だね。」
「だろう?やっぱり王は強くないといけない。それにこの駒を選択できる国はそう多くない。他の国だとロッキード黒色槍騎兵、フェアチャイルド疾風餓狼騎兵の二つだけだ。」
「ふ~ん、じゃあ僕はこの騎兵を王にしよう。」
「よしじゃあ先攻はそっちで、初心者だから駆け金もいらない。」
「あっ!」
「どうした?」
いきなり大きな声を上げたネイリーにアレックスが問いかける。ネイリーは首を軽く降ると最初のいt手を動かした。




