表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/58

新世界教徒

ドゴォォォォォォォンッ!!!


 謁見の間の大扉が轟音を立てて吹き飛んだ。煙と共に血の臭いが謁見の間に流れ込んでくる。予期せぬ出来事に謁見の間にいた者達の動きが止まった。


「何事だ!?ここを何処だと心得る!」


 状況が理解できていないのか、近衛騎士隊長のヴァイスミュラーが喚く。晴れてきた煙の中から数人が進み出てきた。


「敵襲ですよ。あなたの召喚に応じた振りをして城の中まで入れて頂きました。少々手こずりましたが我等に与えられた力をもってすれば、造作もないことです。」


「貴様、新世界教団のだな?宝剣を盗んだのだのもお前達だな?」


 宝物庫を守っていた兵士達を尋問の結果、先日の宝剣盗難の容疑者として新世界教団の名が上がった。宝剣さえ戻れば何事もなかったことにできる。そう考えたヴァイスミュラーは腹心の一人に密命を与え、その教団の者を捕縛する様密命を与えていた。それが今、裏目に出た。


「どちらもその通り、とだけ言っておきましょう。さて国王陛下、ご機嫌麗しゅうございます。私は新世界教の教徒。ローザライン支部を神官長をしている者です。本日は陛下にお願いがあって参りました。」


「余がその願いを聞くとでも思っておるのか?」


「思いませんな。ですが、私のこの力を見れば考えも変わることでしょう。」


「いかん、魔法を使おうとしているぞ。近衛騎士よ、陛下をお守りしろっ!」


 ヴェイスミュラーの命令で近衛騎士達が動く。一部の者が国王の前に立ちはだかり、他の者が魔法の詠唱をさせまいと剣を抜いてかかる。対抗する様に周りの者も剣を抜いて立ちはだかった。


「להבה לטהר」


 神官の口からよく分からない言葉が発せられた。突き出された手から巨大な火球が飛び出て、一人の近衛騎士を撃つ。直撃を受けた者が吹き飛んで身動き一つしなくなった。あまりの出来事に近衛騎士達が止まる。次の魔法に備えて盾を構え防御の姿勢を取った。


「無駄ですよ。今の魔法、こちらの言葉だと浄化の炎と言います。さらに私には今以上の魔法がありますが、その程度の盾で防ぐことなど不可能。陛下の誇る近衛騎士も私の魔法の前には案山子も同然、これ以上被害を増やしたくないなら、陛下の所持する炎の宝玉をお渡し下さい。」


「炎の宝玉か、何故あれを欲する?」


「何、簡単なことですよ。もうこの世界の寿命は尽きようとしている。この世界の崩壊に天下の宝物が付き合うことはない。だから、我々が次なる世界へ継承してあげます。ご理解頂けたでしょうか?」


「なるほど、興味深い話ではあるが俄かに信じることはできぬ。故に、あれを渡すことはできん。」


「では交渉決裂、私の申し出を受ける気はないということですな?」


「そう言っている。宝剣を奪われ、さらに宝玉を差し出すなど、我が王家の名が廃る。例え死すともそれだけはできん。」


「結構、では力尽くで奪わさせてもらう。」


「同じ手は通用せん。皆の者、時間を与えるな。」


 いち早く反応したヴァイスミュラーが、魔法を詠唱する時間を与えない為に配下の近衛騎士に命令を下した。突撃する近衛騎士に向かって神官長が隠していたワンドを振るう。炎の帯が床の絨毯を燃やしながら進む。炎に動揺した近衛騎士達の脚が止まった。


「止まるなっ!その程度の炎なら乗り越えられるはずだ。」


「はっ!」


 近衛騎士達が突撃を再開する。神官長の両脇にいた二人がその前に立ち塞がった。


「「Flamma(火炎)!」」 


 二人の手が前に突き出され、新たに炎の帯が送り込まれた。大きくなった炎が行く手を遮る。完全に近衛騎士達の脚が止まった。神官長の両腕が大きな圧力に耐える様に力を込め開かれる。前に立っていた教徒達が散開した。


「להבה לטהר כל」


 発声と共に両腕が前に突き出された。火炎の魔法をはるかに上回る炎が謁見の間を荒れ狂う。近衛騎士もヴァイスミュラーも王座にいた国王も皆、炎に巻き込まれた。時間にして十数秒、炎が治まった後に立っている者はいない。神官長は満足げに頷くと王座まで進み出た。


「ううっ・・・何たる・・威力だ。」


「ほう、まだ息があるのか。近衛騎士が盾となったのが幸いしたか。だがそれも無駄なこと、すでに抗う力もあるまい。」


 王座から崩れ落ちる王に嘲りの言葉を告げ、その首元を漁る。赤い宝石のついたペンダントを取り上げられた。


「よし、目的の物は手に入れた。もうここに用はない。引き上げるぞ。」


「はっ、仰せのままに。」


 神官長が踵を返して歩き出すと、後ろにいた教徒が左右に分かれて道を空けた。その中央を進んで謁見の間から出る。そこに声がかけられた。


「おい、よくもやってくれたな。生きてここから帰れると思うなよ。」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ