臨検使
「ローザラインにようこそ。」
グランローズから東へ三日、特に何事もなくローザラインに着いた。城下町に併設された港に船を停泊させると、港側からタラップが掛けられそこに数人の武装した兵士が並ぶ。歓迎を意味する言葉とは裏腹に何かを警戒しているような雰囲気があった。
「船主はどなたでしょう?上陸前に船籍証明と乗員名簿を提出していただく必要があります。」
中央に立っている者が乗り込んできて横柄な態度で聞いてきた。どうやらアレックスの存在には気付いていないらしい。皆の視線がアレックス、ジギーの順番に集まった。
「船主はぼくです。必要な書類はここにあります。」
「何だ、子供が船主?まあよい・・・ふむ、船籍はグランローズ、船主はジークリッド=グランローズ、年齢は13、間違いない・・・か。」
不信そうな表情を浮かべながらも書類を受け取る。その内容を確かめる為にジギーを見た。
「では全ての乗員をここに並べよ。名簿と付き合わせて確かめる。」
「おいっ!」
「何だ、お前は?余計な口を聞かずに黙って並んでおれ。」
黙って聞いていることができなくなったのか、アレックスは一歩前に出て大声を上げる。だがうるさそうに手を払うだけ、アレックスの顔が真っ赤に染まった。
「ああっ!もう一度言ってみろ。」
アレックスは港湾職員の首根っこを掴むと顔をつきつけて怒鳴った。
「えっ、あっと・・・もしかして殿下?」
「そうだ。それより、いつから港湾職員にここまでの権限ができた?兵士を連れてまで臨検に乗り込む必要があるのか?」
「いえ、その、これは城からの要請でして・・・。」
「城からの要請だと?何かあったのか?」
「私に聞かれても困ります。出入りする者と荷物全てを調べよと命令を受けているのです。」
「分かった。なら気が済むまで調べろ。文句は命令を出した奴にする。」
アレックスは乱暴にその職員を開放すると、腕を組み仁王立ちで城の方を睨んだ。
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乗員の照会を終えたアレックス達は、荷物の臨検を終えるまで船の上に留められていた。ジギーとドラーフゲンガーの二人は臨検使を案内することになった。アレックス達は特にやることもないので停泊している船を眺めているだけ、他の船もこの船と同じく臨検を受けているのが見えた。
「ちょっと待てよ。なんでこんなに船がある?こいつらは何処から来た?」
「連合王国やエグザイルからじゃないかしら?うちの国やグランローズでも何隻か見たし、もしかすると南の方から海が治まっているのかもしれないわ。」
「なるほど。じゃあ、あれはエグザイルの船か?」
「さあ、どうかしら?ネイリー、あなたはどう思う?」
「僕にも分からない。」
「あれはエグザイルの船ですよ。」
三人の会話に後ろから誰かの声が割り込んできた。振り向くとそこにはホセの姿があった。
「何で分かる?」
「国によって癖があるんです。連合王国は華美な貴族趣味、エグザイルの連中は派手な成金趣味、その辺が船首像や装飾に出る。特に旗にその特徴が出ています。」
「確かにあの船は金ピカで派手だな。ちなみに他の国の船の特徴は?」
「ノイエブルクのは連合王国に似てるけど少し違う。ローザライン、メタルマ、ローゼンシュタインの船には無駄な装飾が少ない。外見だけでこの三国の船を見分けることは至難です。あとはマインフート、あそこの船は外板に金属を使っていて一目瞭然。まあ、そんなところです。」
「なるほど・・・。」
アレックスはさっきの船をもう一度見る。船全体に金での装飾、ホセが成金趣味と言った意味がよく分かった。他の船も似たような船ばかりだった。
「ほとんどエグザイルの船だな。だがそれに何の意味があるのか・・・まあいい。臨検が終わってから城へ行こう。それで分かることもあるさ。」
アレックスはまた城の方に視線を向けた。




