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荒野の騎士

「ちょっと君っ!どこに行くつもりだ?」


「港までです。急いでいるので失礼。」


 ネイリーはまだ何か言いたそうにしている衛兵にそう言うと港の方へと小走りで移動し始めた。止めようとした衛兵の手がむなしく宙に浮いた。


「子供一人で大丈夫かな?」


「大丈夫さ、あれでも結構な手練だ。何でも魔王の城へ行って戻ってきたらしい。どこかの王族とも聞いている。」


「王族か、それはまずいな。このことは上に報告しておいた方がいい。鎧の魔物がまた出没しているらしいぞ。」


「分かった。じゃあちょっと行ってくる。しばらくここは任せた。」


 衛兵の一人は近衛騎士に報告するべく城へ向かって走り出した。


 --------------------


 ノイエブルクから港まで十数km、急げば1時間ちょっとで着くことができる。そう考えたネイリーは港へと急ぎ走っていた。10分程走って行く先に誰かが一人で立っているのに気付いた。


(甲冑姿?なんでこんな所に・・・。)


 ネイリーは荒野に佇む人影、その怪しさに走る速度を抑える。人影が少しずつ鮮明に見えてきた。見覚えのあるローゼンシュタインの鎧、それも隊長格の鎧、地面に刺した剣の柄に両手を当てて静かに立っている。よく見ると心臓のある位置に大きな穴が空いている。ネイリーはあと20m程の距離で警戒して足を止めた。


「お前は何者だっ?」


「・・・・・・・・・・・・・。」


 当然の様に返事はない。ただ返事の代わりに剣を地面から抜き、胸の前で立てられる。ローゼンシュタインの騎士が行う礼であった。


「こいつ、誘っているのか?」


 ネイリーは怪しいとは思いつつも刀を抜いて答礼を返す。その瞬間、ネイリーを半包囲する様に三体の鎧が地面から湧き上がってきた。


「やっぱり罠か。」


 跳び下がって距離を取り直し、相対している敵の姿を見定める。中央の騎士以外の鎧はローゼンシュタインの物ではない。胸の意匠からノイエブルク近衛騎士の鎧だと分かった。騎士隊長の鎧が立てた剣を少横にし前に突き出す。それで他の鎧達が動いて隊長の前に立ちふさがった。


(前に並び、少し前進。敵がいる場合は攻撃せよ、か。間に合うか?)


 無言の指令の意図を読み取ったネイリーは更に大きく飛び下がった。距離を取って魔法を使う為である。それで前進してきた鎧の騎士達の足が止まった。


《僕は魔力を4消費する、魔力はマナを混じりて万能たる力となれ

  おお、万能たる力よ、内なる光となりて、我と共に駆けよ!Corpus Confortans(身体強化)!》


 魔法の効果が身体中に広がり力がみなぎる。まだ他の魔法も使いたいがおそらくその時間は与えてくれないだろう。ネイリーは両手で刀を構えて敵に備える。鎧の隊長は剣を再び立てると前に振り下ろした。


 三体の鎧の騎士がネイリーに向かって襲ってきた。三体による同時攻撃、ネイリーは向かって一番右の騎士のさらに外側まで一足飛びに移動すると、すれ違いざまに斬り上げる。すばやく騎士の盾が動いてその一撃を受け止めた。ミスリルでできた刃が盾の表面を削り、火花を散らした。


「まだだっ!」


 ネイリーは勢いのままに騎士達の横を駆け抜け、隊長の鎧に向かって走り刀を振り下ろす。ネイリーの渾身の一撃は盾によって綺麗に受け流された。ネイリーの体勢が崩れ隙が顕になる。今度はネイリーの眼前に剣が振り下ろされた。


「しまったっ!」


 ネイリーは無駄とは知りつつ地面に倒れこむ形でなんとかその一撃を避けようとする。剣がネイリーに迫る。何故かその剣先がネイリーの頭の直前で停止した。


「???」


 ネイリーは不思議に思いながらも転がって窮地から脱した。さらに転がって距離を取り立ち上がる。正対した時には先程と同じく、隊長を後ろにして三体の騎士がこちらに剣を向けていた。


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