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魔法談義②

「そうだった、ホセのことを忘れていた。」


 ネイリーはアレックスの言葉に思わず呟いた。


「おいおい、お前、そりゃないぜ!懺悔を聞いてそれで終わりってか?冷たいねえ・・・。」


「そうじゃない。あの時点では連れて帰れない理由があった。」


「理由とは?」


「彼は船に乗ることができない。海を見ると体が動かなくなると言っていた。」


 その言葉にアレックスが黙り込んだ。宙を見上げて何かを考えている。しばらくして口を開いた。


「そうか、それは難儀なことだ。心の病につける薬はない。じっくりと時をかけて治すしかないな。」


「これは驚いた。君に医療の心得があるとは思わなかったよ。」


「軍にいるとな、怪我とかいろいろあるんだ。稽古で怪我をした者が実戦に出ることができなくなる。そんな心の病もあるのさ。」


「なるほどね・・・・。」


 アレックスは想像以上に下々の兵士に食い込んでいたらしい。ネイリーは自分の見解の甘さを認めた。でもそれだけではない。今度はこちらから驚かせてやりたいと思った。


「待てよ、あれがあった。」


「あれって何だ?言ってみろよ。」


「Libere Transitus、試してみる価値はある。」


「おい、俺にでも分かるように説明してくれ。魔法名で言われても分からん。」


「Libere Transitus、魔法の羽根と違って好きな場所に飛ぶことのできる魔法さ。ローザライン、メタルマ、グランローズ、ローゼンシュタイン、ノイエブルクに行くことができる。それだけじゃない、まだ行ったことのない連合王国やエグザイルでも自在に行ける魔法だ。」


「ほう、それはすごいな・・・・・・・・・って、ちょっと待て!だったら今までは何だったんだ。わざわざ船で移動する必要はなかったじゃないか!」


 アレックスは感心してからすぐに怒ってみせた。


「その魔法を使う為に確かめないといけないことがあった。」


「確かめないといけないこと?何だよ、それ。」


「転移する場所の安全を確かめること、極論を言うと行き先が魔物に占拠されていたら、窮地に飛び込むことになる。君の国は販売を制限していなかったか?」


「あ~、言われれば確かにそうだった。ローザラインも今は魔法の羽根の販売を制限している。それはノイエブルクでも同じだったな。」


 大厄災によって他の町や国との交流が途絶えて以降、無条件で移動のできる魔法の羽根は販売の制限がされていた。この時代、魔法の羽根は各町や国がそこに帰還することのできる物に限り、生産、販売をしている。その製法は当然極一部の者だけにしか伝わっていない。


「もう一つ問題がある。今までに使ったことがないんだ。」


「もしかして、また例の賢者の魔法か?」


「そう、大魔法と同じく敢えて公開しなかった魔法なんだ。」


「敢えて公開しないって何でだ?便利な魔法だろう。」


 アレックスの率直な意見は当然だ。今の魔法の羽根では双方向のアイテムを安くはない金で買わないといけない。


「便利すぎるんだ。その気になれば兵士を何人でも送り込める。ある日大挙してやってくるかもしれない兵士の為に常に備えないといけなくなる。」


「それは魔法の羽根でも同じだ。いっそのこと、そんな物は公開しない方がよかったんじゃないか?」


「多分、賢者様もそうしたかったと思う。でも無理だった。元々ノイエブルクへの魔法の羽根は存在していた。二つの世界が繋がった以上、ある国にだけ自由に移動できるのは都合が悪い。だからその技術を研究して、同意する全ての町にその移動網を構築した。その後、それをどう使うか、各町や国に委ねた。そしてあの書にてその全てをどう使うか、僕達が問われている。」


「とりあえずホセを向かえに行く。その後のことはまた考えればいい。」


「そうだね。ならグランローズに着くまでにもう一度熟読しておくよ。間違えて別の場所には行きたくないからね。」


 それだけ言うとネイリーは自室にしている書斎へと向かう。アレックスは定位置となっている見張り台へと足を運んだ。

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