王家の試練
「ふ~ん、なるほどねえ・・・まさかあの石にそんな力があったとは・・・でも困ったわね、私としては貸して上げてもいいけど・・・。」
マリアの話を聞き終えた女王マグダレーナはそう言いながら、ちらりと大臣の方を見た。
「女王陛下、それはなりません。国宝、水の宝玉は女王只一人だけが所有する物です。」
「まあ、貴方はそう言うしかないわよね。そう言うわけだからマリア、とりあえず今は諦めなさい。他のいくつかの宝玉が集まってから再考してあげてもよろしくてよ。」
「いいえ、そうはいきません。ノイエブルクでも同じようなことを言われてきました。ここメタルマもそうなら、次のローザラインでも同じことが繰り返されるだけです。ならば、まずメタルマが先陣を切るべきでしょう。形式にこだわって世界が滅んでは意味がありません。」
マリアは女王ではなく横に立つ大臣を睨みながらそう言った。外戚である父は今までも形式にこだわった意見しか言わなかった。この後に及んでの事なかれ主義が腹立だしい。
「形式だけの問題ではない。唯一の品を扱うには権利と共に義務が生じるのだ。マレーネ、お前にその覚悟があるのか?」
「あるつもりです。」
「ならば力を示しなさい。王位継承の試練を受け、時期女王に相応しい力があることを証明するべきです。」
「あら?それは無理よ。試練に相応しい仕掛けを施す者がいないわ。」
大臣の言葉に女王の意味深な言葉が返ってきた。その場にいた女王以外の誰にもその意味を理解できずにいる。
「それはどういった意味でしょうか?」
「ふう、仕方ないわね。実は試練の祠自体には何もないのよ。だから試練を行う際には先立って然るべき仕掛けを施すわけ。それは魔物であったり罠であったりして、そこを如何にして乗り越えるか、時の王が次なる者を見極める儀式なのよ。」
「なるほど、ではそうなると試練の祠はこの城から三日の地、その為に割く兵も時間もありませぬな。」
「そう、だから今は諦めろと言っているのです。マレーネ、旅に出る前の高言、よもや忘れていないでしょうね?」
「勿論です。此度の厄災を打ち払うことで力を示す、その思いは今でも変わりません。だから必ず水の宝玉は頂いていきます。」
今度は女王の方を睨みながらはっきりとそう言い切った。
「どうやっても引き下がる気はなさそうね。」
「勿論です。そうでなければローザラインのアレクシス叔父様に“メタルマから先に国宝を出す気はありません。そちらから先にどうぞ”との書状を頂いても結構ですが。」
「それも無理な相談ね。あの方の気性からすると逆効果だわ。そうよね?」
「いえ、私の口からは何も申せません。アレクサンデル王子、その方はどう思う?」
「あ~、ん~、こう何と言うか、うまくおだてて力を貸してやろうと思わせないと無理だ。そんな書状を送ったら逆に拗ねて出す物も出さなくなる。」
大臣は女王の質問に困惑してその矛先をアレックスへとした。突然話題を振られたアレックスはなにげに返事をしてしまう。場の雰囲気に合わない口調に大臣がアレックスを一睨みして咎めた。
「そうよね・・・じゃあマレーネ、手っ取り早く私と1vs1の魔法戦でもする?それでも力を見極めることができるはずよ。」
「お母様との勝負ですか・・・・・。」
マリアは黙り込んで考える。旅に出る前の技量から考えるととても適う相手ではない。だが新しく知ることができた魔法ならどうだろう?幾つか頭の中でシミュレイトする。その沈黙を躊躇いと受け取ったのか、女王マグダレーナが声をかけた。
「嫌ならいいのよ。まだ貴女は若い、今無理に力を示す必要もないわ。」
「いえ、やります。やらさせて頂きます。」
母親の忠告を挑発と受け取ったマリアは反射的にそう答えた。
「そう、例え貴女が死ぬことになっても手加減はできないわよ。」
「勿論です。手を抜いたお母様に勝ったとしても少しも嬉しくありません。」
「生意気ね・・・いいでしょう。大臣、3時間以内に闘技場の準備をしなさい。」
「陛下、再考を。幾らなんでもマレーネには早すぎます。本当に死なせることになりますぞ。」
「構いません。例えマレーネが死のうと次なる後継者はいます。それがメタルマ王家のシステムではなくて?」
「・・・そこまでの覚悟があるならこれ以上申し上げません。すぐに闘技場を用意させます。」
それだけ言い残して大臣は立ち去る。思いつめた表情で立ち去る大臣の視線が、一瞬だけマリアの方に向けられた。




