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王の居場所

「なるほど、今まで何処か見覚えのある顔だと思っていましたがそう言うことでしたか。魔王を倒しノイエラントを救った勇者アレフと王女ローザマリー、二人の肖像画によく似ておられます。」


 興奮した老人が大きな声を上げた。


「あ~あ、とうとうバレちゃった。まさかマリアの口から漏れるとはね。」


「何よ、私が悪いとでも言うの?」


「いや、別に・・・。」


「まあまあ、決して口外することは致しませんので、ここは年寄りの顔に免じて争いを収めて下され。」


 険悪な雰囲気になろうとした瞬間、老人が仲裁する為に割って入る。それでアレックスとマリアの二人は口を噤んだ。


「ではこの話題は止めて話を戻しましょう。こちらのミスリルの剣、いえ正確には刀と言うのですがまさかオリジナルが現存していたとは驚きました。当工房にも鋼で作られたレプリカがありますが、やはり本物は出来が違いますね。今同じ物が作れるかどうか・・・。」


「同じ物は作れない?昔より今の方が技術は優れているのと思うのですが・・・。」


「当工房ではミスリルを扱っていないのですよ。大戦が終わって武器は必要なくなったと判断したのでしょう。残念ながらその技術は伝えられていません。」


「なるほど、それでもうひとりの創始者は袂を分かちメタルマへと渡ったのか。」


「そうかもしれません。当工房は一応城に剣を納めていますが、販売している物の主力は錆びない鉄で作られた日用品です。ローザラインやメタルマにも輸出しているはずですがご存じないですか?」


「いや僕に聞かれても・・・。」


 答えに困ったネイリーはちらりとアレックスとマリアの方を見た。


「さあどうだかな?俺は知らねえ。」


「まあ日用品ですから、王子王女様が知らないのも仕方がないでしょう。しかしこの刀は素晴らしい。どうでしょう、10万ゴールド出します。当工房に譲って頂けませんか?」


「お断り致します。平和な時代ならともかく今は乱世、優れた武器を金に変えることはできません。」


「ふむ、確かに仰られる通りです。由無いことを申しました。忘れてくだされ。」


 そう言うと分解されていた刀を組み立て始める。手馴れた手付きで刀を元の姿に戻すと、ネイリーに手渡した。


「気が変わることがありましたら他所に売らずに当方にお売り下さい。当工房はいつまでもお待ちしております。」


「これが必要ない時代になってから再考致しましょう。」


「それで結構でございます。」


 それから料理が運ばれてテーブルの上に並び、久しぶりの豪華な食事に舌鼓を打つことになった。アレックスはもっぱら酒を、マリアは料理と酒を、ネイリーとジギーの二人は料理を楽しむことにした。


 それからしばらくして机の上の料理が少なくなってきた頃、突然外から大きな声が聞こえた。


「客人とな?どれ、余も挨拶をせねばならぬかな。」


 晩餐の席に工房の主ではない老人が入ってきた。豊かに蓄えられた髭はきちんと手入れされておりどこか気品があるように見えるが、酒で真っ赤になった顔がその気品を台無しにしていた。その酔っ払いに向かって同じく酔っ払ったアレックスが相対する。


「何だよ、爺さん。別に挨拶なんかいらないぞ。」


「ん?やけに活きのいいのがいるな。よかろう、余はノイエブル・・」

「わーーーーーっ!お客様の邪魔をしては駄目ですよ。さあ、お部屋に戻りましょう。」


 慌てて使用人の一人が大声でかき消す。アレックス達の視線の先で肩を担がれる形になった老人が部屋から連れ出された。


「今、余って言ったわよね?」


「そう?聞いてなかったから分かんないや。」


「いや、確かに今、余と言ったよ。ちらっとだけど見えた顔は、昼に会った国務大臣と近衛騎士隊長に似ていたような気がする。もしかすると失踪した王様じゃないかな?」


「人違いだって、王様ともあろう者がこんな所にいるわけないだろう。ありゃあ単なる酔っ払いさ。」


 酔っ払っているアレックスが無責任なことを言う。その次の瞬間には自分の言ったことも忘れて、新たなグラスに口にしていた。


「まあ本当に王様だとしても、あれでは何一つ期待できないか・・・。」


「いっそのこと退位できればいいのにね。」


「このご時勢じゃ無理だよ。ただでさえ下がっている士気が更に下がることになる。どちらにしても僕達に責任はない。ここは見なかったことにしよう。」


 ネイリーの言葉にマリアが無言で頷いた。ジギーには何のことやら分からなかったようで一人きょとんとしていた。


 その後、アレックスが飲みすぎで泥酔したせいで今日中に船に戻ることは諦めた。

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