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海上の戦い

「なんでお前が指揮するんだよっ!」


 見張り台から飛び降りたアレックスはネイリーに食ってかかった。


「僕達が覚えた魔法を君は知っているのかい?」


「いや、詳しくは知らない。」


「じゃあ駄目だ。使う魔法によっては皆を危険に巻き込むことになる。特にジギーの魔法はね。」


「・・・分かったよ、今回はお前の言うことを聞いてやる。その代わり次は俺に任せろよ。」


「いいよ、次までに覚えたらね。」


 グランローズで出会ってからここまで、アレックスはほとんどネイリー達の勉強会には参加していない。一応誘ってはみたが魔法の才のないアレックスには退屈だったと見えて、次からは出て来なくなった。その反省を促す意味を込めて嫌味を言ってみたのだった。


「それでどうするつもりだ?」


「まず大きな魔法で一撃、その後はさっさと逃亡する。ここで彼等を殲滅しても意味ないからね。」


「まあ定石通りだが、それでは俺の出番はない。俺は何をすればいい?」


「撃ち漏らした敵を相手に船員達を指揮してほしい。彼等は戦闘に関しては素人同然だ。誰も傷つかないようにしてくれ。」


 ネイリーは帆を畳んでいる船員達を指差した。


「よし任せろ。素人でも数丁のボウガンがあればまあ・・・なんとかなるだろう。」


 アレックスは少し言いよどんだが、帆を少しでも早く畳む為に船員の下に走って行った。


「じゃあ僕達はあの飛竜の群れに先制攻撃をしよう。ジギー、狙った所に魔法を発動させることはできるようになったかい?」


「う~ん、手から放射する火炎の魔法ならなんとか・・・だから大火炎の魔法で焼き払うってのはどうかな?」


「ジギー、ここは海の上だぞ。一瞬は水の上を走らせることはできても、すぐに消えてしまう。それに空を飛ぶ魔物には効果が薄いと思うよ。」


「駄目かぁ~。」


 自分の案が否定されたジギーは落ち込んだように大きなため息をついた。


「自分の欠点が分かっているだけ立派だよ。だけど今回はその苦手な魔法を使ってもらう。狙いは多少甘くてもいいから、魔物の進路の上空で爆発を起こして海面に叩き落とす。できるかな?」


「できなくてもやらないと駄目なんだよね?」


「うん、逃げる場所がないから難しい戦いになる。僕に爆発の魔法が使えるのなら自分でやるけど、残念ながら今はまだ使えない。頼むことしかできないことが口惜しいよ。」


「・・・ぼくの魔法で皆が救えるならやってみる。」


 ジギーは覚悟を決めるとゆっくりと魔法の詠唱を始めた。すでに魔物の姿は肉眼で見える距離にある。それに続いてネイリーも魔法を唱え始めた。


《ぼくは魔力を10消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ。》

《僕は魔力を8消費する、魔力はマナと混じりて万能たる力となれ。》


《おお、万能たる力よ、破壊の力となりて爆ぜよ!Fragor(爆発)!》


 ジギーの魔法が完成した。船から30m程離れた上空、本来この魔法を使うには高い位置に光が凝縮する。次の瞬間、耳をつんざくような爆発音が響いた。


 ドッゴォォォォンッ!


 少し進路からずれてはいたが爆風が魔物達を襲う。爆風をまともに受けた飛竜はそのまま水面に叩き落とされ、そうでない飛竜は墜落しないよう必死で体勢を立て直そうとしていた。


《おお、万能たる力よ、渦巻く風となりて敵を切り裂け!Turbine(旋風)!》


 ネイリーのダメ押しの魔法、体勢を崩していた魔物達は風に煽られて水面にその身を落とした。


「よかった、ちゃんと発動した。」


 ネイリーは小さく呟いた。まだこの魔法を使いこなせる自信はなかったが、ジギーにああ行った手前やらねばいけないと思ったのだ。


「何か言った?」


「何でもない。そんなことより君は避難した方がいい。撃ち漏らした魔物がいる。」


 二人の魔法から逃れた飛竜2匹が体勢を立て直している。ネイリーはそれに気付いていた。


「でも・・・。」


「大丈夫、アレックス達が控えている。邪魔にならないよう操舵室に入っていよう。」


 ネイリーはジギーの肩を抱かえると、ボウガンを構えて並んでいるアレックス達の間を抜け操舵室に入っていった。


「よ~し、やっと俺達の出番だ。いいか、無理に当てようと思わなくていい。まずは右の奴からだ、俺が合図したら前の二人だけ撃つ。後ろの者は次に備えろ。」


「「了解。」」


 アレックスの両脇に片膝をついてボウガンを構えた二人、その後ろに三人の船員が立って並んでいる。そうしている間に怒り狂った飛竜が船に向かって来ていた。残る距離は20m。


「よし今だ、撃てっ!」


 アレックスの掛け声に二つのボウガンのトリガーが引かれる。飛んできたクォレルを飛竜が身体を捻って躱す。その頭に遅れて飛んできたクォレルが突き刺さった。歓声が上がる。


「まだだっ!もう一匹いる。次に備えろ。」


 アレックスの指示に後ろの三人からクォレルが装填されたボウガンが渡された。後ろの三人にはボウガンの心得がない。そのことが分かっていたので次弾に備える為に並ばせていた。


「撃てっ!」


 次の矢が魔物を襲う。一本は外れたがもう一本はその翼を貫いて穴を開けた。バランスを崩した飛竜が甲板に向かって堕ちてくる。アレックスのボウガンから無慈悲な一撃が放たれた。


「ギャピィィィィッ!」


 肩口から胴体を貫かれた魔物が断末魔の悲鳴を上げ、甲板の手前で海へと姿を消した。


「やった・・・のか?」


「ああ、間違いなくやった。さてさっさとずらかるぞ。海に落ちていた奴等が立ち直っている。」


 アレックスがそう言い終わるかどうかの最中、足元から独特の振動が伝わってきた。魔導船が少し浮き上がり海面を走り始めた。

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