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幸福の道標  作者: Retisia
第二章 人形の館
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8話 知を得る為には行動を

三週目ぇ!!

二章が終わるまでは毎週投稿頑張ります!






 レティシア達はそのあとも次の部屋、次の部屋と見ていった。


 たくさんの布が置いてある場所


 食料の倉庫


 トルソーの書斎とは別の大きな図書室


 綺麗に手入れされた武器が置いてある場所。


 色々とあったがヒントになるような物は何も見つかることはなかった。


 そんな中でルネの提案で、一旦休憩をしようと一行は元のリビングに戻り、お茶を飲んでいた。



「……ふぅ、しかし改めて思い返すと大きい館ですね。私の家の何倍あるんでしょうか」

「どうだろうな。レティシアさんの家は一度入ったきりだから何とも……」

「レティシア様は外ではどの程度の家庭層だったのですか? それなり以上だとは考えていますが……」

「あぁ、それは――」



 などと世間話に花を咲かせていたレティシア達。


 勿論、目的を忘れた訳ではない。

 レティシア達は目的の為に動き、すべての部屋を調べていた。しかし何もなかったのだ。


 それも当然だろう。

 元々が開かない扉以外は長い年月、ナーザリルトが手入れをしてきたのだ。たかが数時間で見つかる程、ナーザリルトが過ごした年月は軽くない。そう――



(だからこそ、何か隠しいる可能性があるのですが)



 レティシアは今もナーザリルトを疑っていたが為に、トルソーの容疑を確かめる他、ナーザリルトの過去に対しても探りを入れ続けていた。


 最初に疑問だったのは、何故いなくなった初期に探しに行かなかったのかだ。

 明らかにナーザリルトはレティシアと同じ思考と行動が直結しているタイプだ。そういった手合いは思いついたら必ずやる。にも関わらずここに留まっているのには何らかの理由があるのでは? と、レティシアは駆け引きが面倒になってきていたので率直に聞いた。


 意外だったのは簡単に答えが返ってきたことだ。

 そしてあからさまに違和感のある答えだった。


 ナーザリルトは出なかったのではなく、出られなかったのだ。


 ナーザリルトも出ようとはしていたのだ。その時に館の外にはナーザリルトだけを対象とする結界が張られており、出るに出られず、しかしどうすることも出来ずに仕方なく何百年とこの場所で暮らしていたらしい。


 トルソーはどうしてナーザリルトを閉じ込める様なことをしたのか。

 一応聞いてみたが、やはりと言うべきかナーザリルトもその答えは持ち合わせていなかった。


 どうにもトルソーの思惑が掴み切れないと、レティシアは紅茶の波紋を見つめながら思案する。



(ここでの問題点は三つ。一つはトルソーの書斎の扉をどうやって開けるか。これに関しては何の手がかりもなく八方塞がりなので保留です。二つ目がトルソーはどうしてナーザリルトさんを館に閉じ込めたのか(・・・・・・・)。なによりあの通路に並べられた絵画、あれは何なのか)



 この三つが現状の打開点である気がしてならないのだ。

 しかし。一つ目以外には何の根拠もない。ただのレティシアの妄想話である。だからこのことはまだ二人には話してはいなかった。



(さて、もしもの時は館ごと壊すべきですか)



 それでもじっとはしていられない。

 最終手段を視野に入れながらレティシアはもう一度、別のアプローチを入れて館を回ってみることに決めた。館を壊すことでナーザリルトとは争いになるのはわかっているが、それは加味したとしても生贄術が知らないところで広まるよりはマシと判断していた。



「申し訳ない、お手洗いをお借りしたいのですが……」

「ルネ様、ご案内します」



 席を立ちながら言うルネに、ナーザリルトは即座に案内の申し出を出す。最初に言った通り勝手な行動に移ってほしくないからだ。

 しかし、ルネは苦笑を入れながら首を横に振った。


「いえ、通路の順番さえ教えてもらえれば十分ですよ」

「しかし……」



 もちろん、ルネもナーザリルトの言いたいことはわかっている。だが警戒するべき者が違うと、レティシアの方に視線を向けながら言う。



「ナーザリルトさんはレティシアを見ていた方がいいかと。……多分、人がいなくなったら勝手に行動しようとするかもしれないので」

「……お気遣い感謝しますよ。ルネさん」



 顔を背けながら、嫌味のようにレティシアは言った。事実は心に染みたようだ。


 ルネは再度、ナーザリルトに聞く。



「そんな訳で、どうしますか?」

「……そうですね。では申し訳ありませんが、私は残ります」



 ナーザリルトは残ることを決めた。

 行先が決まっているルネに付き添うよりも、予測の付かない行動を取るレティシアを見ていた方がいいと思ったからだ。その考えを察したルネは一つ頷いて、場所を聞くとリビングを後にした。



「……」

「……」



 二人、無言である。

 お互いに多分な警戒が入っているのでまともな会話がなかった。いや、できなかった。

 レティシアは紅茶に口を付けながら、ナーザリルトは机の端に置いている茶器を使い次の紅茶の準備をしながら話の口実を探していく。


 しかし、いくら探しても見つからない。

 否、単なる世間話ていどならいくらでもできるのだ。ただこの場でするのは違うとなんとなく思ったからしないだけで。


 そもそもレティシアがしたいのは世間話でも、華やぐ語りでもない。真実と事実の確認だ。


 その時、レティシアはある一文を思い出す。



「知を得るためには行動を」

「……?」



 それはとある先人の格言。

 レティシアが最も納得した言葉。それを口にした。



「私が好きな、哲学者の名言です。……私はどんな危険があろうとこの言葉を胸に前に進んできました」



 ずっとそうだった。

 『魔法庫』の時も、黒幕探しも、雷鳥を使った儀式も、そして処刑の時も、危険など承知の上でレティシアは前に進んできたのだ。



「取りこぼした物はたくさんあります。でも、それでも手に入れた物も、たくさんありました」

「……」

「でも、結局は動かないと何も始まることはないんです。始まらないと、終わらない……ずっと苦しいまま」



 苦しみ続ける痛みと叫びは、今もよく知っている。

 強い瞳を向けながら、言った。



「ナーザリルトさん。あなたはどうですか? あなたのその悔いはそのままにしておいて、良いものなのですか?」

「……」



 人生を問われたナーザリルトは俯き、その悔い(・・・・)と言われ思い出す。



――トルソーが出て行った最後の日を。


 












【次回】

2月26日

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