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幸福の道標  作者: Retisia
第二章 人形の館
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4話 見つけた場所




「結構歩いたが………霧が濃くて何も見えないな」

「はい。流石にこれでは調査のしようもありませんね」



 森の奥へと足を進めた二人はお互いの姿が見えなくなる程の霧に困り果てていた。最初は霧の出所を探ろうと霧深い方向を目安に進んでいたが、その方向も目安がわからなくなれば意味を成さない。レティシア達は完全に進む方向を見失っていた。



「もう無闇矢鱈と探すのは無理だな。方針を変えよう」

「そうですね。なら、現在判っている情報の整理から始めましょう」



 こんな時にこそ冷静さを欠かさないのは二人の強さの証だろう。



「では私から。……現在の居場所はセナ・ライプと王都の中間部にある森、その一角です。この霧は自然発生したものではないわかり、その調査のために森の奥へと足を踏み入れましたが、魔術はこの領域では使えず、指針を失い………迷子となりました。私は以上です」



レティシアの説明は現在までの経緯と現状をまとめられたものだったのだが、最後の迷子宣告は少々恥ずかしいものだったらしく、顔を赤くしながら目を逸らしていた。それを苦笑して見ないふりをしたルネは続けて話始める。



「なら、次は俺だな。これは予測に過ぎないが、この森は空間が捻じ曲がっている可能性があること。そしてその原因がこの霧である可能性のみだ」

「空間が歪曲している、ですか?」



 首を傾げながら聞き返す。



「ああ、理由は簡単だ。森が深すぎる」

「……なるほど、ルネさんはこの辺りの地理を知っていたのですね」

「そうだ。もうこの森を出られる位に歩いているが…この通りだ。なら可能性は二つ。俺たちが同じところをグルグルと歩いているか…」

「――何者かが惑わしているか……ですね」

「そうだ。だが今回は俺達を狙ってのものではなく、幻覚に近い力とするなら……だ」

「――空間そのものが怪しい、と?」




 その通りだとルネは頷いた。

 だが、これがわかった所で現状は変わっていない。そのため二人は話を進めていく。



「先に空間の解析を進めてみます」

「なら、俺はここらの木々を薙ぎ倒して目印でも作っておこう」



 そうと決まれば行動は速い。

 ルネは手元に出した大剣を振るい、木々を両断していく。


 その間にレティシアは空間のゆがみを重点的に探し始める。すると怪しい箇所が次々と現れ始めた。



(違和感を乗り越えた次は、宝探しですか。……苦手です)



 4年掛けても『魔法庫』を見つけることが出来なかった事実から、レティシアが本当に苦手な事だと思い込んでいる。しかし客観的に観てそれは不得手ではない。他のレベルが高すぎるために苦手意識を感じやすいだけだ。だから、発見はすぐだった。



「見つけました。これは……建物。でしょうか。よくわかりません」

「ふむ……そこまでわかるなら上出来だ。まぁ、見つかったなら行こうか。念の為に目印は付け続けよう」



 地点がわかれば話は早かった。ふたりは無駄な時間を取り戻すように駆け足で進んだ。実際に無駄があったのだから間違いではないのだが…。


 着いた場所には一つ、大きな屋敷かポツリとあった。寂れた壁にたくさんの蔦が這い、屋敷を支えるように覆っている。しかしそれでも崩れていないのは誰かが住んでいるからか、それはレティシア達にはわからない。



「ここが中心地か」

「おそらくそうですね。ダミーの可能性もありますが…」

「中に入ったら屋敷が崩壊とかか? ありえそうだな」

「慎重に行きましょう」

「……………そうだな」



 入口前で駄弁るが、別に仲良く話しているわけではない。

 内容は危ない事を理由に帰ろうと遠まわしに言う青年に全力で気づかないふりの少女が屋敷へと強行しているだけだったりする。当然、聞かないことがわかって言ったルネだ。素直に諦めるのは必然だった。



「では、開けます」



 レティシアが古びたような、しかし真新しさを感じさせる扉に手を掛け開いた。



「―――ようこそ、お客様。私たちが主人トルソーの『人形の館』へ」



 開けた先、金色の髪を持った一人の少女が可憐なカーテシーを見せながら歓迎の言葉を送る。



「私は唯一この館のメイドをしている、ナーザリルトです。以後、お見知りおきを」



 古びた場所に居た場違いとも言える少女、目を興味を宿すレティシアを見てはまたひとつ、ルネはため息を付いたのだった。













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