第七話 脱出
お待たせしました。第七話更新します。
「――と、これが王都の現状です」
「……なるほどね」
ユリムの話を聞き、維織が思ったことはただひとつ。
……この世界、面倒すぎ!!
「本当に……とんでもない世界に来ちゃったな……」
「え?」
「いや、折角故郷から出て楽しい旅をしようと思ってここへ来たのに、ついてないなと思ってね」
「その……ごめんなさい……」
「ユリムさんが原因ってわけじゃないんだから、謝らなくていいよ」
とは言っても、面倒事には出来るだけ首を突っ込みたくないし、早々にこの国から出たいけど……
「話に出てた魔族との戦争っていうのはこの国だけの話なのかい?」
「いえ、魔族の動きはここ数年活発化し始めていて、この国だけの問題では無くなってきています」
ほーらやっぱり、そんなことだと思ったよ。
「そうなんだ……」
「はい……あの、私から一つ聞いてもいいですか?」
「うん?まぁいいけど、何が聞きたいの?」
何か変な事言ったっけな?頼むからあまり詮索しないでくれよ……
「イオリさんは、今までいた国で冒険者をしていたのですか?」
「いや特には……なんでそう思うの?」
「先程イオリさんは、もうあの化物たちは倒したよって言っていたので……それが少し気になりまして」
少し気になったね、だったらその鋭い眼差しをこちらに向けるなっての。
「あのモンスターはヴァジュルジュビアと言いまして、この逢魔の谷で最も危険として知られている魔物です」
「それをたった1人で、しかも5匹倒すなんて事が出来るのは冒険者、しかも相当な手練でないと不可能って感じかな?」
「はい」
ま、そりゃそうなるよね。てかあのサソリの名前ヴァジュルジュビアって言うのか……舌噛みそう。
「残念だけど僕は冒険者じゃないよ。ただの旅人さ」
「……本当ですか?でも、あんなに強いなんて……」
「あー、僕の国だとあのくらいの力は当たり前って感じでさ、僕程度だと護身用って感じなんだけどね」
「あれで護身用……」
とても信じられない……って顔してるねぇ、でもまぁ別に信じなくていいさ、どうせここから出たら彼女と会うことは無くなるのだし。
「疑う気持ちは分かるけどね。……それより、そろそろここから脱出しようよ。もう一回あのヴァジュ……なんとかに襲われると面倒だしさ」
その言葉で、襲われた時の恐怖を思い出したのだろう俯き、体を小刻みに震わせながら呟いた。
「そ、そうですね……早く逃げましょうか……」
……トラウマ抉っちゃったかな?
――
―――
――――
それから少し経ち、維織とユリムは薄暗い道を歩いていた。しかし、前に維織が歩いた道とは違い、ところどころ松明のようなものが置かれてあることから、軽い整備はされているのだろう。
「こんな道があるんだ……」
「ここは私達密偵が利用する道ですから、そう簡単には見つからないように普段は魔法で偽装しています」
さっきユリムが呟いてたのはそれか……突然壁に穴が空いて道が出来たから、魔法か何かとは思ってたけど。
「イオリさんはこれからどうするのですか?」
「え?……そうだね、あまり考えてなかったけど、少しこの国を見ていこうとは思ってるよ」
実際はやる事が山積みだけどね。もっとこの世界の事を知らないとダメだし、それにこの力を使いこなせるようにならないと、この世界じゃ平和で安全に生きて行く事なんて出来ないだろうしね。
「そうですか……あの、もしよろしければまた会ってくれますか?助けてもらったお礼がしたくて……」
……お礼半分、監視半分ってとこか。
「そんなこと気にしなくてもいいけど、僕としてもユリムさんにはまた会いたいかな」
「え?ど、どうしてですか?」
なんでそんなに動揺してるんだろう。
「僕はこの国の事を全く知らないからね。もっといろいろと教えて欲しいのだけど……ダメかな?」
「あ、あぁそういうことですか。いえ、全然大丈夫です!」
「ならお願いするよ」
これで、この世界の常識については問題ないだろう。はぁ、どうしてこんなに苦労するのか……
それから再び歩き始め、
「つきましたよ。」
「え、ここが?行き止まりじゃないの?」
「少し離れていてください」
この道に入る時と同じように、ユリムは何か呪文のようなものを呟き始めた。
これ何語なんだろう?会話自体は日本語で通じるし、英語ってわけでもなさそうだし……この世界特有の言語なのかな?
「お待たせしました。ここが……あっイオリさんは旅人でしたね」
その瞬間、まばゆい光が視界全体を包み維織は思わず目を閉じたが、それが日の光であることに気付き、ゆっくりと目を開けた。
「ようこそ旅のお方、メルクルド王国へ」
目に入った景色、それは木の生い茂った森でも、深い闇を孕む谷でもない。荘厳な雰囲気を持つ王宮がそびえ立つ、まさしく王都だった。
次回の更新は9月21日の水曜日です




