第十一話 王立図書館
図書館はその外観通りとても広く、無数の本が管理されていた。
これは見つけるのがやっかいだな……誰かに聞かないと。
「あのーすいません」
「はい、どうなさいました?」
受付と書かれたカウンターの奥に座る女性に声をかける。多分、この人が日本でいうところの司書だろう。
「初めてこの図書館に来たのですけど、本を探してて……場所を教えてもらえますか?」
「大丈夫ですよ。どういった本をお探しでしょうか?」
「えっと、一般常識に関する本と、世界の歴史について書かれている……その歴史書?っていうのかな、そういう本を探してます」
「一般常識に歴史書ですね。わかりました、どうぞこちらへ」
そう言い女性はカウンターから出て維織を案内するように、いくつも立ち並ぶ本棚の方へと歩き始めた。
にしても圧巻だね、この空間は。
案内される中、維織はこの図書館の規模に舌を巻くばかりだった。日本という大都市で暮らしていた維織だが、これほどまでの規模の図書館に入るのは初めての経験であった。
「すごい量ですね」
「驚かれましたか?このメルクルド王立図書館は現存する書物の80%を保有していると言われていますからね、初めて訪れた方は皆驚かれるのですよ」
「80%!?そんなにあるんだ……」
「ええ、すべてが閲覧可能というわけではありませんが、ほとんどは一般に利用が可能ですよ」
にしても80%って……入るか普通?
「……と、着きましたよ。ここに一般常識に関する本があります」
彼女が指さす方向には”一般常識・生活”と書かれた本棚がいくつも並んでいた。
「あと、歴史書ですが……」
そう言い彼女は後ろへ振り返りながら、また指を指して、
「こちらにありますので」
「親切にどうも。助かりました」
「いえいえ、これも仕事ですので」
そう少し微笑みながら軽く頭を下げて彼女は去って行った。
にしてもこの広い図書館を一人で担当してるのか?
さすがにそれは無いと思うけど……
まあいい。さて……始めますかね。
本を読み始めて一時間、次々と本を読破していく維織に一つの影が近づいた。
「あれ?イオリさん?」
「…ふうん……お金はこういう風に……それで……」
「イオリさーん」
「こんな形してるんだ……」
「おーい……」
「次はこれか……」
「イオリさん!!」
「ここは図書館だよユリムさん。そんな大声出したら駄目だって」
「あ、ごめん……って違うでしょ!」
「ほらまた」
「うっ……」
「ごめんごめん。ついからかいたくなってね」
「もう、からかわないでくださいよ」
そう言いジト目でこちらを見るのはついこの前まで生死を共にしたユリムだ。
「今日は普段着なんだね」
昨日とは違い、ユリムの服装は動きやすそうなワンピースを着ており、武器を携帯している様子もなかった。
「ええ、今日から休みでして」
「なるほど」
密偵だっけな確か……雰囲気しか分からないけど、あんまり休みが取れなさそうだなぁ……
「?どうしました?イオリさん」
「いや、なんでもないよ」
「そうですか?それにしてもどうしてここへ?」
「ああ、この国のことを知りたくてね。ほら、言っただろう?僕は別の大陸から来たって」
「それでですか。でも、随分と色々な本を読んでますね」
「国が違うと常識とかも色々と変わってくるからね。郷に入っては郷に従えってやつさ」
「郷に……?なんですかそれは?」
「僕の故郷の言い回しだよ。その土地に入るのならば、その土地のルールに従えっていう意味だよ」
「そんな言葉があるんですね……郷に入ってはですか。いい言葉ですね」
「だろう?先人の教えさ」
日本語が通じるから知ってると思ったけど、諺とかはこっちは存在しないのかな。
「で、ユリムさんはどうしてここへ?」
「借りた本を返しに。ここは本の種類が多いですからね。よく利用してるんですよ」
「確か現存する書物の80%が管理されてるらしいね」
「そう言われてますね。ここくらいでしょう、これほどまでに書物を保有しているのは」
「確かに。僕の国でもこれほどの図書館は見たこともないよ」
「イオリさんの国ですか。気になりますけど、それは明日に聞きますね。そろそろ行かないと」
「ああ、明日はどのくらいに会おうか?」
「お昼頃に風見の宿へ行きますから。それから少し付き合って頂けますか?」
「ん、了解。また明日にねユリムさん」
「はい。それでは……ああ、イオリさん。」
「ん?」
「明日までにそのボロボロの服、早く着替えてくださいね」
「え?ああ、わかった」
服か……そういや忘れてたな。やる事が多くて頭痛くなってきたよ全く。明日の昼頃か、それまでに色々と準備しときますかね。
去っていくユリムの後ろ姿を見ながら、一つ溜息を吐き維織は再び本の世界へと入っていった。
次話は明後日、11月24日木曜日の正午12時に投稿します。




