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The road to victory  作者: めいゆう
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第十話 準備は食から

「今、食事の用意をしますから少し待っていて下さい」

階段を降りると、香ばしい料理の匂いと共にそんな声が聞こえてきた。維織は軽く返事をして椅子へと腰かけた。


この世界に来て初めての食事……何が出るのか楽しみだ。

期待と不安を織り交ぜたような感情を胸に料理が出てくるのを待つ。およそ二日間もの間何も食べていない維織にとっては、この食堂に漂う匂いは何ともたまらなかった。


「お待たせしました」

ラーミがテーブルへと料理を並べ始めた。

テーブルに置かれたのは焼き目のついたパンとシチュー、それと小さな瓶に入ったジャム。

このスープはホワイトシチューかな?この世界に牛乳があるのかどうかは分からないけど見た目や匂いが良く似ている。もしそうならカレーとかもあるのかな……。


「熱いので気をつけてくださいね。では、どうぞごゆっくり」

そう言い、ラーミは再び奥の部屋へと消えていった。


「それじゃあ、早速……いただきます」

手を合わせた後スプーンを手に取り、まずは一口とシチューを口に運ぶ。


「ふぅ……」

素朴だけど、様々な具材のダシが絡み合い複雑な旨味を出してる。日本で食べるシチューよりは薄味だが素材の味を生かしたこのシチューは二日以上も何も口にしていない維織にとって、これ以上ないご馳走だった。

「うん、このパンも美味い。……よかった、料理に関しては特に問題無さそうだ」

異世界ということもあるし舌に合うか不安だったけど……これなら大丈夫だね。


パンを齧りながら今日の予定について考える。

予定通り図書館に行く、これが最優先。あとはこの街の見物、時間があるなら能力の訓練ってとこかな。


「忙しくなりそうだ……ん?もう食べちゃったのか」


気がつくと料理を載せた皿は全て空になり、パンもシチューも綺麗に平らげていた。……もう少し味わって食べればよかったな。次の食事の時はもっとゆっくり食べようと決意し、維織は席を立った。


「ラーミさん。食事が終わりました」

その言葉にラーミが奥から顔を出した。

「あら〜早いわね。もう食べ終わったの?」

「はい。とても美味しくて、一気に食べてしまいましたよ」

「うふふ、うれしいわ。そこまで褒めてくれるなんて」

「本当においしかったですよ。あと、今日の夜の食事もお願いしてもいいですか?」

「もちろんよ。何か希望はあるかしら?」

「なんでもいいですよ。この国の食べ物はあまり食べたことがないので」

「わかったわ。楽しみにしておいてね」

その言葉に頷き、維織は部屋を出て風見の宿を後にした。




「漁れたての海の幸、安くしとくよー!」

「ベルタイガーの串焼きだ!お一つどうだい!」

「冒険には必須のポーション!今なら銀貨一枚だ!」

街では様々な店が大きな声で宣伝をし、その商品を買い求める人々で溢れかえっていた。


「さすがは大陸一の王都ってとこか?」

今まで自分が住んでいた日本ほどではないが、それでもこの光景を見ると、この街が経済的にどれほどの利益を生み出しているのかを想像するのは難しくない。


「どうだいそこの兄ちゃん、ベルタイガーの串焼き。一つ食ってかねえか?」

「え、僕?うーん興味はあるけど……金に余裕があるわけでもないし……悪いけど遠慮しとくよ」

それによくよく考えると、この世界の商品の相場について詳しく知らないし……昨日払った銅貨30枚がどのくらいの価値なのかも知らないんだよなぁ。


「悪いね、また買いにくるよ」

「ま、金がねえのなら仕方ねえ。また頼むぜ」

「わかった。……ああ、一つ聞きたいのだけど」

「おう、どうした?」

「図書館ってどこにあるのか教えてくれる?」

「図書館?そいつならこの通りを真っ直ぐ進んでると見えてくるぜ。なにしろこの街で王城の次にでけえ建物だからな、すぐにわかるぞ」

「ありがとう、助かったよ。今度は買いにくるから」

「またのお越しを!」


男に手を振り、教えられた道を進む。街並みを見ながら維織はため息をついた。


覚えることが多すぎてな……金の事とかの日常で必要な知識の他に、この世界の情勢や技術、この国の国際的な立場……はぁ、思いつくだけで山のようにあるな。



そしてあの少女は確かに言っていた。この世界で生きていくための武器を与えると。すなわちそれは戦闘という行為が、ここでは日常的であるということ……確かにこの力は途轍もなく強力だけど、もうあの時みたく肩に穴が空くなんてことはごめんだしなぁ。


「第二の人生ね……」

もしかすると1回目よりハードモードなのかもしれない……だけどもう失うなんてごめんだ。


頭にかつて過ごした家族の顔がよぎったが、すぐさま頭を振り考えるのをやめた。


……あの時とは違う。もう後悔しないために僕はここにいる。この世界で好きに生きる、そしてその為には

力がいる。戦う為の力が。


「まずはここ……知識からだ」


眼前にそびえる建物を見上げ維織は一歩、前へと進み始めた。


次話は明日の11月22日、正午12時に投稿します。

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