第九話 これから
窓から射す陽光を浴び、維織は目覚めた。
「朝か……」
目を擦りながら、ゆっくりと体を起こして大きく屈伸をする。
「うーん……やっぱりベットは落ち着くなぁ」
流石に二日間も岩肌で寝てると、体がどうにかなっちゃうよ……ああ、ベットって素晴らしい!!
そう言い枕を抱き締めるが、何かの違和感が維織を襲った。
「あ、服か」
疲労のあまり気がつかないまま寝てしまったが、維織の今の格好はヴァジュルジュビアとの闘いによって、ボロボロになったTシャツ、そしてこれもまたボロボロになったジーパンであった。
「この格好、例え真っ新の新品でもこっちの世界だとやっぱり目立つよなぁ……」
日本だと一般的な格好だけど、ここは異世界。変な事に巻き込まれないためにも服は買いに行く必要があるね……
「今日はいろいろと準備しないと」
そう言い維織はベットから出て、一階へと階段を降りていった。
ーーー
「あら、おはようイオリさん」
「おはようございます、ラーミさん」
一階へ下りると、この宿の主人であるラーミと遭遇した。額には汗を浮かべており、朝から働いているのがすぐに分かった。
「昨日はよく眠れたかしら?」
「ええ、とても気持ちの良いベットでしたよ」
「それはよかったわ。あ、顔を洗う時は外にある井戸から水を汲んでもらえるかしら?」
「……井戸…?」
その言葉に維織は若干の疑問を抱いたものの、すぐに納得し、首を縦に振った。
流石、異世界……まぁ水道なんて存在してるわけないよね。
「それじゃあ、お昼の用意をしておくわ。完成したらお部屋の方へ伝えにいくから」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ、それではごゆっくり」
そう言い、彼女は部屋へと入っていった。恐らくあそこが厨房なのだろう。
「一度戻るか……」
そう言い、維織は部屋へと戻っていった。
ーーー
さて、部屋へと戻ってきたわけだけど……昼飯まですることがないし、これからの予定でも立てとくかな。
「えーと、何か書くものは……お、これを使おうかな」
机の上に置かれていた羽ペンと紙を取る。今まで使ったことのないペンを不慣れな動きで走らせる。
「服に……お金に……よし、こんなものか」
①適当な店で服を買う
②図書館のような場所へ行き、この世界について調べる
③ユリムから借りた金を返すための方法を考える
④能力についての研究
最優先事項は①かな。②と③に関してもできるなら今日中にやっておかないと。
能力は……現状は急ぐ必要はないね、でもこの国の様子によっては考えないと……。
「はぁ……異世界で暮らすのも簡単じゃないなぁ」
ゲームや漫画みたいにはいかないもんだね。ついこの前まで、ただの一般人やってたっていうのに、今じゃ化物と戦うなんてことまでしてる。
「不思議なものだね人生ってのは」
あの少女の言ってた通り、僕達は本当に因果ってものに支配されてるのかもしれない。……僕が自殺するまで追い込まれたのも、この世界に来たのも、速度操作なんて能力を手に入れたのも、全て因果の仕業……恨んでいいのか、それとも感謝すればいいのか……
「ままならないなぁ……本当に」
軽く嘆息すると、部屋の外から声が聞こえた。
「イオリさん?部屋にいるかしら?」
「ああ、今開けますから」
「いえ、開けるほどではないわ。ご飯の用意が出来たのを伝えに来たの」
ああ、そろそろお昼か。
「わかりました。今降ります」
「下の食堂に来てくださいね」
そういやここに来てから何も食べてなかったっけ。
そう意識した途端、お腹が無性に空いてきた。
「……降りるか」
次回は10月4日の火曜日に更新します




