第十二話 図書館での成果
維織が図書館に入ってから数時間が経過した。日はすっかり暮れて窓からは夕日が差し込んでいた。
「ふう……ここまでにするか」
かれこれ5時間以上も本を読んでたのか。いてて、ずっと座りっぱなしだったから体が痛い……慣れないことはするもんじゃないな全く。
「でも、これで問題なしだ」
基本的な一般知識は頭に叩き込んだし、この世界の現状、そして成り立ちも大体は把握した。実に有意義な時間だったよ。
……だけど気になるのはこれだ。
「魔法ね……」
いくつもの本に書かれていたこの言葉。まあユリムさんが魔法っぽいの使ってたし、あまり驚きはしないけど。問題はそこじゃない。
使えるかどうかだ。
魔法に関する説明はこうだ。
魔法、それは生命全てが持っているとされている力。人の歴史は魔法の歴史と言われるほど人々と密着している。一般的に魔法は火、水、風、土の四大魔素と光と闇の二大幻魔素のことを指す。家事に始まり、戦争までその用途は幅広く現在でも研究が行われている。
と、こう書かれているのだ。さすがは異世界、魔法ばかりで科学のかの字も出ないとは……まあこれだけなら驚くだけだった。そう、これだけなら。
「生命全てが持つ力か……」
どうもこの文が引っかかる。この生命全てというのはこの世界に生まれたということが前提条件であるはず。ということはこの世界で生まれていない僕は?果たして使えるのか?
……まぁ、今は確認のしようがない。気にはなるけど焦っても仕方がない。
「借りるのは……これでいいか」
維織は本を一冊手に取り先程訪ねたカウンターまで持って行った。
「すいません、この本借りてもいいですか?」
「大丈夫ですよ。借りるのはその一冊でよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「……はい、手続きが完了しました。それでは貸出期間は7日間ですので、それまでに返却お願いします」
「わかりました。どうもありがとう」
図書館から出ると、もう人々の喧騒は聞こえない静かな街並みがそこにあった。窓から見えていた夕日が街全体を包み込み、どこか哀愁の漂う風景を生み出している。
「いい景色だ……」
子供を呼ぶ親の声が聞こえ、その声に反応して子供達が家へと戻る。異世界でも変わらないそのありふれた光景に維織は薄く微笑み、宿の方へと足を向けた。
ーーー
「お帰りなさい、イオリさん」
宿に戻るとラーミが掃除をしながら、こちらへ挨拶をしてくれた。
「ただいまラーミさん。こんな遅くに掃除ですか?」
「ええ、掃除は頻繁にすることにしてるの。お客様達により快適に過ごしてもらいたくてね」
まさにプロ意識ってやつだね。いいなーこういうの、仕事に全力を尽くすって感じ……憧れるね。
「あ、そうそうイオリさん」
「ん?どうしました?」
「そろそろ食事の用意をしようと思ってるのだけど……もう召し上がる?」
「あ、お願いします」
「わかったわ。それじゃあ出来たら呼びますから、部屋でお待ちください」
「わかりました」
そう言いラーミは掃除道具を手に取り、カウンターへと消えていき、維織は部屋へと戻っていった。
さて、今日の情報を軽くまとめようか。
まずは、お金について。
この世界のお金は全て硬貨を使用しており、その種類は、銅貨、銀貨、金貨、星金貨の四種類だ。一般的な取引には銅貨や銀貨が使われ、金貨や星金貨は一般人にはあまり縁のない貨幣となっている。それぞれの価値でいうと、1番下が銅貨で、最も高価なのが星金貨だ。
そして次にこの世界の歴史。この国の成り立ち等は調べてはないが、魔物の勢力が拡大し始めたのがこの2、3年の話。原因は恐らく魔王誕生だと言われている。各国では、魔王が誕生したということは勇者も誕生しているとして、現在全力で調査にあたっているそうだ。人間と魔物は対立しているが、一時期、今から300年ほど前には共存していた時代もあったという。
そして最後は魔法に関して。図書館でも言ったように、すべての生命体が有する力のことで、その用途は日常的な行いから、戦争といった非日常の事にも利用されるなどら、多岐にわたっている。尚、現段階では異世界人である自分が使えるかは不明。そして確証はないが自分の持つこの速度に関する力は魔法ではないという結論だ。
……と、こんなところかな?大体はわかったけど、まだまだ調べることがいっぱいだな……特に魔法については、これからもっと調べなくちゃ。
目を瞑り頭で様々な情報を整理していると、コンコンといった扉をノックする音が聞こえた。
「はい?誰ですか?」
「イオリさん。食事の用意が出来ましたよ」
「あぁ、わかりました。今行きます」
さて、夕食は何が出るかな?
期待に胸を膨らませながら、維織は部屋を後にした。
次話は12月1日の木曜日に一話、もしくは二話投稿します。




