ある男性のブログより引用:こんにちは
こんにちは。TAKEと申します。資格取得の話しかしていないことに気づいたので、僕自身の話もしようかなと(笑)
まあでも、僕の経歴なんて誰も興味ないと思うんで。僕の中でも印象的な話を書きます。面白くなくても面白いって言ってください。
小学五年生のころ、母がいなくなりました。買い物に行っているのかなと思って、でも結局帰ってきませんでした。夜になって、ようやく帰ってきたのは知らない人でした。
最初はね、悲しくて泣いてたんです。声を出さない大人みたいな泣き方で、布団を涙で濡らしていました。
でも、ちょっと違くないですか?知らない人が帰ってきたんだから、本当は怖いって思うべきでしょ。でもそのとき僕は、母がいなくなって悲しいとしか思わなかった。
知らない人は女性だったんですけどね、今思うととっても綺麗でした。白いワンピースを着ていて、背景に向日葵畑があったらどんなに美しかっただろうと思います。
知らない人だったはずなのに、妙な安心感があったんですよ。不思議です。
その人はご飯を作ってくれました。今でもはっきり覚えています。白ご飯、味噌汁、鮭の塩焼き、おろし大根。お腹が減っていた僕は、怪しみもせず口に入れました。朝ごはんみたいな夕食でしたが、なんかね、僕また泣いちゃいました。悲しいからじゃなくて、本当に、すごくすごく、優しい味だったんです。僕は泣きながら食べてました。その人は優しく笑っていました。
そのあとは一緒にテレビを見て、そのまま一緒に布団に入りました。小学生なのに、子守唄を歌ってくれました。あのですね、優しい気持ちは伝わってくるんですよ、でもどこか物騒なんです。異国の歌なんでしょうか、調べてみてもわかりませんでした。とがった言葉。あと途中で途切れる。だからこそ記憶に鮮明に残ります。
すごいんですよ。僕がその歌を口ずさむと、嫌な人がいなくなるんです。みんな夜逃げですって。その代わり変な夢を見ますが。痛いのと気持ちいいのが7:3くらいのこわーい夢です。
頭を撫でられながら眠りにつきました。ほら、生身の人間はあったかくて、幽霊は冷たいって聞くじゃないですか?でもね、僕は何も感じなかったんです。そこに何もないって言われたら、嘘だろって笑うより、やっぱりな、って頷くような。ただやさしい空気が漂っていました。
あ、付け加え忘れてたんですけど、父は単身赴任で一緒に暮らしていませんでした……。五年前に癌で死にました。
朝起きてもその人はいました。初めて学校に行きたくないって思いました。ずっとこの幸福に包まれていたいな。まあ学校は行きましたけど(笑)
たくさん愛してもらいました。僕の人生で一番楽しい時間だったといっても過言ではありません。
その人とは、一週間だけ一緒にいました。最後の日、愛してるよって言って、家を出て行ってしまった。鍵がね、ガチャッと音を立てて、帰ってきたと思ったら本物の母でした。変なんですけど、そこの記憶が曖昧です。ひどく取り乱していたようにも思えば、時間がはやく進んでいたことに驚いているようにも。
僕は毎日、布団の中で泣いていました。寂しいなあ。本当の幸福を知ってしまったら、今の日常が欠けていると思っちゃうんです。
誤解を生みそうなので言っておきますが、本物の母にはちゃんと感謝しています。やんちゃでわがままだった僕をきちんと成人まで育ててくれたんですから。僕も母のことは好きですし、ちゃんと愛してもらってたと思っています。
あのね、その人からの愛は、僕たちのいう愛じゃないんですよ。もっとふかーく、どろどろした愛に近い。僕たちが生まれた意味、そして無限に広がる宇宙の一部として朽ちていく意味、そのすべてを包み込んでくれるような愛なんです。まあわかりませんよねー。いいんですよそれで。
僕のその人に対する感情は、恋とかじゃないです。母に近いかもしれませんが、ちょっと違います。子猫が親猫の乳を飲んでいる写真とか、犬が濡れてほそーくなってたり、そういうのを愛おしいと思う気持ちです。その人が親猫で、僕たちが子猫。そんなイメージです。
ところで皆さん朝日ってみたことありますか?写真じゃなくて現物で。僕は一人で見たことがあります、部屋の中から。2回目はその人と。
その人に、海まで連れて行ってもらいました。そこでね、耳を澄ますんです。波が不規則に浜を打つ音とか、じわじわ空気が澄んでいく音とか、しゅわしゅわと木の葉が揺れたり。二人で目をつむって、光を受けながら生命の源へと還るんですよ。そして、希望の光。それを掴んだら、目を開けていい。太陽が、どこまでも続く海の底からあらわれたら、僕たちはまた生まれ変わる。新しい未来へと進むんです。
その人は、僕を嬉しそうに見ていました。二人で同じ方向を見るんじゃなくて、きれいだねって二人で笑いあうのが大切なんです。心が満たされるんです。この世のすべては海に飲み込まれ、僕たちは太陽の光に焼かれ、やがて一緒に海の底へと沈む。とっても素敵ですよね。とっても怖いですよね。大丈夫ですよ多分。
僕たちは、朝日に未来を見ました。美しくて、馬鹿みたいな世界と、何もかもが壊れる、血にまみれた世界。ずっと誰かの叫びが聞こえてきます。苦しそうな叫び。愛してあげたい。愛して欲しい。
あの一週間はまぎれもなく僕の宝物です。あの人に、また会いたい。でもそれが叶わないのが人生です。僕たちは一度生まれた。いつか宇宙の、地球の一部に還っていく。そのときまで、もうちょっとだけ頑張ってみようと思います。




