表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FACELESS フェイスレス 〜身元特定不可能の殺人犯、顔不確定のヒューマノイド、年齢偽装の令嬢、スパイのバディ~  作者: 路明(ロア)
25 議会庁舎ビル70階

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/88

Parliament building 70th floor4 議会庁舎ビル70階4


 ジーンが挙げた手をすばやく横にかたむける。

 袖口(そでぐち)に仕込んだ小型のハンドガンで、ドロシーに成りすましたヒューマノイドを撃った。



 大きく銃声が響いたが、だれも駆けつける様子はない。

 これはラッキーと受けとっていいのか。



 ヒューマノイドが後転倒立で弾丸を避ける。

 そのままなんどか後転倒立をつづけて窓ぎわに行くと、立て(ひざ)で銃をかまえ直した。


 ヒューマノイドの長い黒髪が、はげしい動きに合わせてバサッとなびく。


 アンブローズは、ハシゴを降りながらヒューマノイドを撃った。

 弾がはずれてガラス窓にあたったが、防弾ガラスなのは教育課程で習って知っている。

 むしろ教わったことはほんとうだったんだなと脳内で確認してしまった。


 ジーンがすばやく太い柱の陰にかくれる。ほぼ同時にアンブローズはもよりの壁の影にかくれた。



「あいかわらずここでも(おとり)? 俺ら」



 窓ぎわのヒューマノイドに向けて銃をかまえながら、ジーンが苦笑いする。

「囮か陽動までやれってことか……ドロシーの野郎」

 アンブローズは低い声でつぶやいた。


「推測だからね。まだ推測だから、兄妹ゲンカやめて。兄さん」

「兄さん言うな」


 アンブローズはそう返した。

「ちなみにドロシーのいまの行動はどこで何だ、それ分かったか」

「そういやそこは分析途中で止まってたっけ……」

 ジーンが答える。


「さっさと分析しろ」

「データは脳内にたっぷり詰めこみました。もう少し時間が欲しいであります、大尉(キャプテン)


 ジーンが苦笑する。

「わざとそこだけ隠してないだろうな、おまえ」

「なんで」

 ジーンが尋ねたが、アンブローズは無言で応じた。

 ドロシーの弾よけになるつもりじゃないかとアリスがほざいていたが、それを止めるためだとしたら大きなお世話すぎる。


 アンブローズは、議事堂の扉を横目で見た。


 ジーンが撃ったハンドガンは、手首にバングルのように取りつけられるほど小型化しているとはいえ、仕組みとしては前時代の銃とほとんど変わらない。

 たとえ議事堂内が防音になっていたとしても、銃声の波動くらいは中に伝わりそうなものだ。

 感覚過敏の性質の人間ならわりと気づく。


 それ以前にドアマンやビルの職員ですら確認に来ないとは。



「ジーン」



 「中」とつづけようとしたが、ジーンはすでに横目で扉のほうをうかがっている。

「アン、おかしい」

 ジーンがヒューマノイドに向けて銃をかまえながら、こめかみに手をあてた。

 ブレインマシンを起動させているのか。


「審議のライブ配信にアクセスしてみたんだけど、いま配信されてる映像、まえに見た気がする」

「は……?」


 アンブローズは、窓ぎわでじっと銃をかまえるヒューマノイドの動きをうかがった。

「たぶん過去の録画だ」

 ジーンが告げる。

 アンブローズは眉根をよせた。

 では、いま現在の議事堂の中での審議はどうなっているのか。

 「審議中」との扉のディスプレイ表示は出たままだが。



「あっ、あっ! ここで保守党のキャサリン議員がミニのタイトでデスクに飛び乗るんだよ! ――そうそう! そして労働党アマンダ議員の巨乳の胸ぐらをつかむ! そこにミニのフレアースカートで民主党メリッサ議員が飛びだし応戦! 三つどもえのキャットファイト状態になったところに、クロスベンチの若手議員ヴァージニアが仲介に入る! 逆に女性三人に殴られて激高、ロングスカートをたくしあげて華麗なる中立的(ニュートラル)三方向ハイキーック!!!」



 アンブローズは、早口で解説しはじめた相方をあっけにとられて見た。


「三ヵ月くらいまえの審議のやつだ。見ごたえのある回だったからよく覚えてる」


 ジーンが熱のこもった口調で言う。

「……やたらスカートの種類にこだわった解説は何の意図だ、ウォーターハウス中尉」

 アンブローズは眉をひそめた。

「分かりやすいし元気湧くじゃん」

 ジーンが答える。


 窓ぎわから銃で狙われている状況とは思えん。


 どうもこいつといっしょに戦闘に巻きこまれると緊張感が削がれるなとアンブローズは思った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ