守りの言葉
―――この世界は冷たく、残酷だ。
死が身近にあり、常に生きることと隣り合わせだった。医療も衛生の概念も俺が生きていた世界とは比べ物にならないくらい低い。ほんの少しの切っ掛けで容易く命は散っていく。
だからこそ、皆一様に救いを求める。
自身が生きているこの冷たく残酷な世界でも、死後天国という暖かくなにも不自由ない場所に行けるのだと。
宗教は常に社会背景と連動している。それに求められることは、その場所、時代、社会によって様々で変化するものなのである。
昔、この地で信仰されていた土着の宗教は、どういう背景があったのだろうか。
***
「まぁ、アンディ様。どうなさったのですか?」
肩を怒らせて部屋に入ると、アマルは驚いて目を丸くした。俺は無言で彼女の隣に腰かける。困ったように眉を下げて、俺の様子をアマルは窺った。
俺はアマルに手を伸ばして、華奢な肩を抱く。ぐっと身体を寄せて、その小ささを実感する。アマルは俺より頭1個分以上低く、並んで立つとまさに子どもと大人といった風になる。
そのくせ安産型のお尻に、細い腰、大きく盛り上がった胸部。14歳にしてはかなり良いスタイルで、正直むらむらとしていけない気持ちになる。俺はそれを隠さずに、アマルの太股を撫で擦る。
「んっ、あ、アンディ様……?」
「おう、お前の太股は柔らかいな。というか全身柔らかい。癒されるわー」
「ふふっ、それはようございました。アマルはアンディ様の女ですので、好きにお使い下さいませ」
穏やかに微笑むアマルに、俺は急に照れ臭くなった。頭を掻いて明後日の方向に顔を向ける。少女は俺の様子をきょとんとした目で見てくる。
(俺の彼女、くそ可愛いんだけど……)
アマルは、俺のみに無邪気に無遠慮に好意を伝えてくる。簡単に言うと、常に好き好き大好きオーラが全開なのである。それがとても嬉しく、可愛らしい。
アマルは14歳だ。
中2、下手したら中1かもしれない。
その年齢は現代日本の価値観でいうと、間違いなくまだ子どもの範疇に入る。つまり、手を出すこと自体犯罪だった。
それが土台としてあり、また自身の郷愁の念が、アマルに対してどっち付かずな曖昧な態度を取ってしまった原因となった。
俺に執着し、独占欲を持って依存しているアマルの様子を何度も見てきた。そして更に彼女の修道院の立場を知るごとに、アマルを決してひとりにできないと痛感した。アマルには、俺が必要なんだっと思った。それに何より今の俺にも彼女が必要だった。
アマルを受け入れてから、自身の中で何かが吹っ切れた。彼女の身体を触ることも、キスすることにさえ罪悪感を感じず忌諱することは無くなった。そんな俺にはもはや怖いものなどない。
「アマルはほんと可愛いな。俺みたいな男にはもったいない」
「……まぁ、アンディ様ったら」
アマルはお上品に口元に手を当てて、笑った。俺の腕に頭を預け、うっとりとした表情を浮かべる。
「アンディ様、私とても幸せです。このまま時が止まればいいのに」
「時が止まれば、こんなこともできないぞ」
アマルの顎に手を添えて、顔を上に向かせる。
そうするだけで、彼女は頬を上気させて瞳を閉じた。堪らなくなって噛みつくように口付けを落とした。
「ん……アンディ様、素敵です」
夢中でキスし続けて、やっと唇を離す。くたりと、腰砕けた様子でアマルはしなだれかかってくる。細い腰に腕を回して、抱き締める。
少しのそのままの体勢で、アマルの息が整うのを待つ。少女は嬉しそうに何度も自身の唇を指でなぞっていた。悩ましげに、はぁと彼女はため息を着いてから、顔を上げた。
「そう言えばアンディ様、先ほどはどうしたのですか?」
アマルは鮮紅の瞳を心配そうに瞬かせた。
「いや……何でもないよ」
俺はサルスの傲慢にこちらを見下す顔を思い出して、思わず口を尖らせる。でも、アマルに余計な心配をかけたくなかったので、それ以上は口をつぐんだ。
「……そう、またなのですか。ふふっ……あの男、相変わらず余計なことしかしないのね。不快だわ」
俺が言わなくてと、アマルは何があったのか察したようだった。
前にもこんなことがあったっけ。まるで心を読んだかのように、サルスの事を当ててみせた。鋭いというか、なんというか。俺はそんなに分かりやすいだろうか。ヘコむ。
アマルは俺の頬を撫でて、微笑んだ。
「大丈夫です。アンディ様は何も心配することなどございません。アマルがお守り致します。……どんなモノからも絶対に」
その言葉に気圧され、俺は思わず頷いた。




